基地移設問題で揺れる普天間基地については、現在も訴訟が継続をしていることを御存じだろうか。昨年、平成20年6月26日に那覇地方裁判所沖縄支部で1審判決が出されたが、原告被告双方が控訴し、現在は福岡高等裁判所那覇支部で審理中である。先月15日には現地調査が実施され、周辺住民からの聞き取りや騒音調査が行われた。 那覇地裁沖縄支部で出された1審判決では、普天間飛行場における米軍機による一定の時間帯の離着陸及び騒音の規制の請求には理由がないと退けられたが、爆音被害については認定され損害賠償が認められた。ちなみにその賠償額であるが、慰謝料額の認定については次のとおり。
1 基本となる慰謝料額
基本となる慰謝料の額については,W75区域については1日当たり100円,W80区域については1日当たり200円。
2減額事由
(1)原告らについて減額法理としての「危険への接近の法理」を適用して慰謝料額を減額しない。
(2)原告らのうち,住宅防音工事を実施した者及びその同居者については,基本となる慰謝料の額から減額する。具体的には以下のとおり。
①防音工事を施工した室数が1室のみである場合には10%,
②同室数が2室以上ある場合には10%に加え2室目以降の1室ごとに更に5%ずつ(ただし,5室以上の場合は一律合計30%)
(3)弁護士費用慰謝料額の10%
ちなみに、過去の損害賠償額(遅延損害金を除く。)の合計額は,原告ら合計392名につき,1億4672万3202円になる。
これまでの嘉手納基地爆音訴訟でも同様であるが、爆音による損害は認定されるものの、飛行差止請求が認めれることはない。夜間の一定時間(例えば午後9時以降翌朝7時まで)であるが、認められることはない。騒音による被害が発生しているのに、被害の発生源について何の措置もとられないのは、原告はもとより、周辺住民とって合点のいかないところである。隣家のピアノの音が損害を発生させていることが明らかであっても裁判所はその発生源について何の措置もとらないのだろか。ピアノと基地では公共性の大きさが違うといえばそれまでだろうが、被害を受けている側からすれば何の違いもない。
爆音の問題については、「嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機騒音規制措置に関する合同委員会合意について(平成8年3月28日外務省)」(クリック)によって、夜間訓練の自粛や夜間のエンジン調整の自粛が謳われていた。しかし、その実行は米軍に委ねられており、現実には爆音被害は縮小するどころか拡大しているのである。
沖縄の基地問題を考える際に重要なのは、政権党である民主党のマニフェストにも掲げられている「緊密で対等な日米関係を築く」ことではないだろうか。約束はしたもののその実施は米国任せでは絵にかいた餅にしかならない。読谷村で発生したひき逃げ死亡事故でも米国の協力がなければ捜査もできない状況であり、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故も被疑者は起訴されないまま事件は闇の中である。
日米関係の重要性について否定する人はいないだろうが、その重要な関係が沖縄の犠牲のうえに立っているなら、そこは間違いなく改善されなければならないはずである。今回の政権交代が沖縄の基地問題解決に向けた一歩になるように期待したい。