28日に発表された日米共同声明の内容は、沖縄が過重な基地負担を負っており、その懸念にこたえることの重要性を認識し、と規定しながらも、その実質は、懸念に応えるどころか、新たな基地負担を求めるとともに、将来に渡って、沖縄の基地の固定化を目論む内容となっている。
嘉手納以南の基地の返還についても、名護市辺野古に普天間飛行場の代替施設が完成されなければ実現されないことになっている。工程は次のとおりだ。
①日本政府による辺野古への代替施設の完成に向けての具体的進展が図られる(このくだりは前文とグアム移転の項の2か所に出てくる)
②第3海兵機動展開部隊要員8千人及び家族9千人のグアム移転
③嘉手納以南の施設の統合及び返還
したがって、辺野古への移設が実現しなければ、③の実現、つまり、米国は普天間飛行場の返還義務を負わない。米国が普天間基地使用を希望するのであれば、米国にとって痛くも痒くもない内容である。
そもそも、普天間飛行場閉鎖の動きは、あの忌まわしい少女暴行事件に端を発し、ヘリ墜落事故で、その動きが加速してきたはずである。ヘリ墜落事故の事後処理にあたっては、米軍により警察の現場検証が妨害されるなど、日本の主権侵害の事態が発生したにもかかわらず、その後は何の報道もない。このような過程を経ての「最低でも県外」を旗印に政権交代を果たした鳩山政権。しかし、たどり着いた結果がこれである。
昨年8月の衆議院選挙、今年1月の名護市長選挙、4.25県民大会in読谷、5.16普天間基地包囲行動、鳩山首相来沖を受けての県民集会等々の現実から、辺野古移設に関して地元の理解を得ることができると日米両政府は考えているのだろうか。しかも共同声明では、「代替施設の位置、配置及び工法に関する専門家による検討を速やかに(いかなる場合でも10年8月)完了させ」るとしている。
8月31日には、鳩山首相は、完了させることができなかったと、またもや、謝罪でもするつもりなのだろうか。実際には、そのころには首相が替わっているのかもしれないが。
訓練の移転先についても、日本のみがその責任を負う内容となっている。国内への移転については「適切な施設が整備されることを条件として、鹿児島県・徳之島の活用が検討される。」とし、日本の負担において実現するとしながらも、国外への移転については「検討することを決意した。」にすぎない。
嘉手納の騒音軽減についても、「SACOの最終報告の着実な実施などの措置を通じた、嘉手納におけるさらなる騒音軽減への決意を確認した」としているが、現実には訓練移転後には外来機の飛来により騒音は軽減しておらず(おそらくそれを配慮して「更なる」とはせず、「さらなる」と表現したのであろう)、しかも、『軽減の措置を講じる』のではなく、単に「決意を確認した」にすぎない。どうするのかは今後の検討課題であり、何をするのかまったく決まっていないのである。
これでは沖縄の基地負担の軽減どころではない。
鳩山民主党政権が何を考えているのか、かいもく見当がつかない、としか言いようがない。