5月21日に言い渡された大飯原発差し止め訴訟第1審判決。福井地方裁判所は、「大飯原発3,4号機は運転してはならない」と判断した。

 裁判中で、被告関西電力は、電力の安定供給等のためには原発稼働の必要性について主張するが、この点について、福井地裁は明快に断罪した。前回は判決要旨から抜粋したが、以下判決文からの抜粋である。少々長くなるが引用する。

9 被告のその余の主張について

 他方、被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性,コストの低減につながると主張するが(第3の5),当裁判所は,極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。

 我が国における原子力発電への依存率等に照らすと、本件原発の稼働停止によって電力供給が停止し、これに伴なって人の生命、身体が危険にさらされるという因果の流れはこれを考慮する必要のない状況であるといえる。

 被告の主張においても、本件原発の稼働停止による不都合は電力供給の安定性、コストの問題にとどまっている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

 また、被告は、原子力発電所の稼働がCO(二酸化炭素)排出削減に資するもので環境面でも優れている旨主張するが(第3の6)、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすざまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。

 上記部分は、大飯原発の安全性に関する争い以外の部分で、現在裁判が進行しているすべての裁判の基本理念となり得る。

①極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と原発再稼働が電力供給の安定性,コストの低減につながるとの主張を並列に論じることは許されず、前者が優先されることは明らかであること

②我国の原子力発電への依存率等に照らせば、原発稼働停止によって人の生命、身体が危険にさらされることはないこと

③原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であること

④原発稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資するとの主張は、福島原発事故がわが国始まって依頼最大の環境汚染であり、原発の運転継続の根拠とすることは甚だしく筋違いであること

 上記は正論であり、反論は成り立たない。問題は、各裁判で対象となっている原発の安全性だけだ、ということになる。

 ちまたで、あたかも当然のように繰り広げられる議論がある。

   ①コスト・電気料高騰の議論

   ②電力不足による医療現場や熱中症による危険性等

   ③貿易赤字等により国際競争力の低下等による国富の流出や喪失

   ④原発稼働が二酸化炭素排出削減に資する

 以上の議論に騙されてはならない。

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