尖閣問題の行方は〜崔天凱駐米中国大使が語る北朝鮮、日本、そしてアメリカ・・(フォーリン・アフェアーズ・リポート6月号)より〜
フォーリン・アフェアーズ・リポートの今月6月号に掲載された“崔天凱駐米中国大使が語る北朝鮮、日本、そしてアメリカ”は極めて興味深いが内容が目白押しだ。まず、尖閣諸島領有問題についてのくだりだ。
同大使は尖閣を巡る歴史認識について次のように述べ、自国の領土である正当性を主張する。
・・その諸島はかつて中国の領土だったが(Those islands were originally Chinese territory)、19世紀末の日清戦争期に日本はこれらの島を自国の領土に編入した。アメリカが1972年に沖縄を日本に返還した際に、魚釣島もその一部として返還された。当時、中国はその措置に明確に反対している。つまり、これらの島の主権をめぐる中国の立場は一貫している。この点には議論の余地がない。 |
一方で、この問題の解決については、次のように述べ、拙速な解決を図る意思のないことを明確に示している。
・・われわれは問題の解決に時間がかかることも理解しており、この問題を拙速に解決しようとは考えていない。 |
しかし、この問題の発端については、日本に責任があるとして、次のように指摘する。
1972年・・国交を正常化した際に、両国の指導者はこの問題を棚上げにすることを決めた。これは非常に懸命な判断だったと思う。・・それ以降、日中間で波風が立つことはなかった。だがその静かな状況も、日本政府が2012年にこれらの島を国有化したことで終わりを告げた。 |
ジョナサン・テッパーマン フォーリン・アフェアーズ誌副編集長(質問者)が、前東京都知事の島購入が大きな問題となるのを避けるために、日本政府はあえて国有化したのではないか、と質問したのに対して次のように反論している。
国際法上、日本政府の(国有化の)決定が非常に深刻な帰結を伴うことは明らかだ。東京都知事が何かを試みていた場合以上に、深刻な帰結を伴うことになるだろう。 |
ジョナサン氏が、「・・歴史は歴史で、われわれはいまを生きている。未来についてもっと考えようと、どこかの段階で言う必要があるのではないか。双方にとって受け入れられるような解決策はないのか」との質問には次のように回答している。
あなたの指摘は賢明だが、いかなる国も、この類のバランスを崩すような行動をとるべきではなかった。日本政府が(国有化という)法的措置に出たことが、現在の状況を招き入れた。・・2012年に・・日本側にアプローチしたが、まだそれに応じられる環境ではなかったようだ。・・自民党が政権をとっている。だが、同じテーブルについて真剣な交渉を始めたいと努力しているようには思えない。 |
日中間の問題解決について、次のように述べている。
・・中国と日本は、経済領域その他をめぐって非常に大きな利益を共有ししている。緊密な強調関係に向けた大きな可能性をもっている。だが、政治的障害を取り除く必要がある。 |
日中間の問題解決に向けては米国の関与は欠かせないとされている。クリントン国務長官が尖閣が日米安保の範囲内であるとの見解を示して以降、日本が強硬姿勢に転じたと言われている。
しかし、米国の立場は「尖閣の施政権は日本にあることを認めつつも、主権については日中のいずれにあるとの立場を取らない」としている。
問題解決にあたっての米国の果たすべき役割について、次のように述べ、さらに、この問題への米国の介入について釘を刺している。
もっとも有益なアメリカの行動とはどちらも支持することなく、純然たる中立の立場をとってくれることだ。 |
・・アメリカは、どちらかの肩をもつようなことはしないとわれわれに言いつつも、日本側に語っていることや公的な声明には、何か違う部分があることも多い。 |
このような状況の中、6月7、8日の行われたオバマ大統領と習近平国家主席との会談では、尖閣問題についても話し合われ、次のように報道されている。
【6月9日付NHK NWESWEB(ネット記事)】・・会談では沖縄県の尖閣諸島を巡る日本と中国の対立についても取り上げられ、オバマ大統領が習主席に対し、日中両国が話し合いを通じて事態の沈静化を図るよう促したのに対して、習主席は「一部の国が挑発的な行為をやめ、対話による解決の道に戻るよう希望する」と述べて、名指しは避けながらも日本などをけん制しました。 |
米国は尖閣問題が日米安保の範囲内との見解を示しながらも、「主権についてはいずれの立場にも与しない」とし、さらに今回オバマ大統領は習主席に対して、話し合いによる事態収拾を求めた。
これにより、日本は、話し合いによる解決策を探る以外に途はなくなった、と言えるだろう。