翁長知事は、代執行訴訟及び違法確認訴訟における「確定判決に従う」発言に縛られる必要はない。

2016-10-29

 代執行訴訟及び不作為の違法確認訴訟における、翁長知事の「確定判決に従う」発言。知事はこの発言に縛られる必要はない。理由は次のとおりだ。
 まず、不作為の違法確認訴訟の福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)判決は矛盾だらけだ。
 戦後70年にわたり基地負担を強いられてきた沖縄の歴史を福岡高裁那覇支部はまったく無視する。戦中は本土決戦の防波堤としての役割を強いられ、戦後は敗戦国日本が独立を果たすために人身御供として米国へ差し出された。安倍政権は沖縄が日本から切り捨てられたサンフランシスコ講和条約発行日である4月29日を主権回復の日として祝い、沖縄の怒りを買ったのはついこの間のことだ。この歴史を無視し、判決は、戦後70年間基地があり続けた事実が、沖縄県の地理的優位性を示すとし、沖縄は基地を受けれるべきだとする。

当HM記事2013:4:28参照)4・28政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会に参加しました

 さらに、沖縄以外の他府県が基地を受け入れる可能性はないから沖縄が基地を受け入れろと言い。北朝鮮ミサイルノドンのみを取り上げて、沖縄はミサイルが届かない安全地帯という。防衛白書は、沖縄はノドンの射程外であるが、テポドン、ムスダンの射程内だと指摘している。北朝鮮からのミサイル攻撃を避けられるのは「我が国では沖縄などごく一部」などと指摘するのは、何の疑問もなく国の主張に従っただけのこと。判決の言う「沖縄に地理的優位性が認められるとの原告の説明は不合理ではない。」との指摘そのものが不合理なものだ。

 森本元防相、梶山元官房長官は、現役閣僚時に、沖縄の基地が動かないのは政治の問題、と指摘した。沖縄の地理的優位性について、証拠調べをすることなく、国の主張のみで認定するのは許されない。

 騒音防止協定は形骸化し、爆音被害軽減には役に立たない、という福岡高裁那覇支部の指摘は正しい。しかし、だから辺野古新基地が唯一というのはあまりにも短絡的だ。爆音等の基地被害を普天間から辺野古に移すにすぎず沖縄の基地負担軽減にはならない。さらに言えば、騒音防止協定を締結しても結果を出せない日本政府の無能ぶりの犠牲を沖縄に負わせるというのは許されない。沖縄の基地負担の歴史からすれば当然のことだ。

 辺野古新基地は普天間基地の半分の面積というが、その実態は、1200滑走路2本を有し、戦艦着岸可能な巨大港を有する、耐用年数200年の巨大基地だ。まったくもって、沖縄の基地負担軽減どころか、基地機能の強化、基地の固定化につながることは明白だ。ろくに審理もせずに判決を急いだ福岡高裁那覇支部の罪は大きい。

 これまでの選挙でたびたび示されてきた、辺野古反対の沖縄の民意までをも否定する判決など聞いたことがない。司法といえども、民主主義の根幹である選挙及びその結果を否定することは許されないはずなのだが。

 国地方係争処理委員会の、協議を進めよ、との判断を無意味と切り捨てた判決も許されない。制度そのもの否定であり、司法にそのような権限があるのか疑わしい。

 福岡高裁那覇支部が、結論として、この判決内容を当初から有していたとすれば、代執行訴訟の和解勧告(同種訴訟においては極めて異例)自体が、県と国の紛争解決を目的としたものではなく、たんに翁長知事から「確定判決に従う」との言質を取るだけの訴訟指揮だったのではないか、との疑念が湧く。

 裁判所の訴訟指揮が、紛争解決に向けたものではなく、当初から国勝訴を目論み、後々のために翁長知事から「確定判決に従う」との言質を取るためだったとすれば、裁判所の和解勧告を信頼し、真摯に和解に向き合った翁長知事を騙したに等しい。詐欺行為だ。 詐欺による意思表示は、取り消すことができる(民法96条)。さらに言えば、意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする(民法95条)。すなわち和解の前提が紛争解決という本来あるべき目的のためではなかったという点が問題だ。

 翁長知事は、福岡高裁那覇支部が紛争解決のために和解勧告したと考え、真摯に勧告に従った。ところが、判決は和解条項に定めた国地方係争処理委員会の判断について無意味とした。そもそも、福岡高裁那覇支部自体が紛争解決という意図をもっていなかったということが示されている。

 このような状況において、翁長知事は、「確定判決に従う」発言に縛られる必要はない、のである。

中立的で公平な審理・判断ではない悪辣な多見谷判決を絶対に受け入れるわけにはいかない。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー⑦〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-30

 以下は、判決要旨のまとめの部分である。多見谷判決は、「互譲の精神により双方にとって多少なりともましな解決策を合意することが本来は対等・協力の関係という地方自治法の精神から望ましいとは考える」とするが県と国の対立関係は深く解決の糸口すら見出せないとする。したがって、裁判所は「中立的で公平な審理・判断をすべき責務」があり、判決を出した、とする。しかし、多見谷判決のどこにも「中立的で公平な審理・判断」の後は見えない。国の主張をすべて入れ、判断の誤りも散見し、国の主張どころか、それ以上の、異常な判断を下した。

 沖縄が問題視する、戦後70年以上に及ぶ在沖縄米軍の存在の歴史を、「在沖縄全海兵隊を県外移転することができないという国の判断は戦後70年の経過や現在の世界、地域情勢から合理性があり尊重すべき」としている点は最も問題だ。沖縄は今後永久に基地の島としての運命を受け入れろ、と多見谷判決は言っている。冗談じゃない。悪辣な多見谷判決を絶対に受け入れるわけにはいかない。

 辺野古新基地阻止、高江ヘリパッド建設阻止。沖縄の民意は声を挙げ続ける!!!

 本件のようにそれ自体極めて重大な案件であり、しかも、国にとって、防衛・外交上、県にとって、歴史的経緯を含めた基地問題という双方の意見が真っ向から対立して一歩も引かない問題に対しては、互譲の精神により双方にとって多少なりともましな解決策を合意することが本来は対等・協力の関係という地方自治法の精神から望ましいとは考えるが、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、前の和解成立から約5か月が経過してもその糸口すら見出せない現状にあると認められるから、その可能性を肯定することは困難である。そうすると、前記のとおり、平成11年及び平成24年の地方自治法の改正の経緯から、本件訴訟に対して所定の手続きに沿って速やかに中立的で公平な審理・判断をすべき責務を負わされている裁判所としてはその責務を果たすほかないと思慮するものである。

翁長知事は、「確定判決に従う」との発言に縛られる必要はない。国地方係争委員会の判断は無意味だという多見谷判決は、和解努力を無に帰するものであり許されない。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー⑥〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-28

 多見谷判決は、国地方係争処理委員会の「(国の是正指示について)適法性について判断せずに協議すべきである」との決定は無意味であると決めつける。その理由を次のようにいう。

①国地方係争処理委員会は行政内部の簡易迅速な救済手続きであり、同委員会の勧告にも拘束力はない

②同委員会が、是正指示の適法性を判断しても、双方共にそれに従う意思がないのであれば、それを判断しても紛争を解決できない

③同委員会は、国や地方公共団体に対し協議により解決するよう求める決定をする権限はなく、もちろん国や地方公共団体にそれに従う義務もない。

④同委員会の決定は和解において具体的に想定しない内容であったが、元々和解において決定内容には意味がなく、実際の決定内容も少なくとも是正の指示の効力が維持されるというものに他ならない

⑤沖縄県は本件指示の取消訴訟を提起すべきであったのであり、それをしないために国が提起することとなった本件訴訟にも同和解の効力が及び、協議はこれと並行して行うべきものと解するのが相当

⑥代執行訴訟における和解は、同執行訴訟において被告が不作為の違法確認訴訟の確定判決に従うと表明したことが前提とされているところ、被告は本件においてもその確定判決に従う旨を述べており、被告にも原告にも錯誤はなく、同和解は有効に成立した

 ことごとく国の主張を入れた内容であり、国地方係争処理委員会の判断が和解上想定していなかったと認定しながら、その判断はそもそも無意味であるとの指摘は、代執行訴訟における和解を無視した暴論である。

 さらに、代執行訴訟における和解が有効であるとの見解をあらためて示し、翁長知事の確定判決に従うとの表明を持ちだしているのは、悪辣な作為を感じる。

 つまり、代執行訴訟における和解勧告(同種訴訟においては極めて異例とされる)は翁長知事から「確定判決に従う」との言質を取るためのものであったと考えられる。そうすると、代執行訴訟における福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の和解勧告は単に翁長知事の言質を取ることが目的であり、そもそも紛争解決に向けたものではなかったということになる。福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)は当初から国勝訴を目論み、後々のために翁長知事の言質を取るためだけに和解勧告した。裁判所の和解勧告を信頼し、真摯に和解に向き合った翁長知事を騙したに等しい。詐欺行為だ。

 民法は悪辣な相手方による欺罔行為を許さない。意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効であり(民法95条)、さらに、詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる(民法96条)。

 代執行訴訟及び不作為の違法確認訴訟における翁長知事の「確定判決に従う」との表明(意思表示)は、福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)による悪辣な欺罔行為によってなされたものであり、無効若しくは取り消すことができると解される。

 結論として、翁長知事は、「確定判決に従う」との発言に縛られる必要はないことになる。 

・・国地方係争処理委員会は行政内部における地方公共団体のための簡易迅速な救済手続きでありその勧告にも拘束力が認められていないことから、是正指示の適法性を判断しても、双方共にそれに従う意思がないのであれば、それを判断しても紛争を解決できない立場にある。また、国や地方公共団体に対し訴訟によらずに協議により解決するよう求める決定をする権限はなく、もちろん国や地方公共団体にそれに従う義務もない。代執行訴訟での和解では国地方係争処理委員会の決定が被告に有利であろうと不利であろうと被告において本件支持の取消訴訟を提起し、両者間の協議はこれと並行して行うものとされたところ、国地方係争処理委員会の決定は和解において具体的に想定しない内容であったとはいえ、元々和解において決定内容には意味がないもとしており、実際の決定内容も少なくとも是正の指示の効力が維持されるというものに他ならないのであるから、被告は本件指示の取消訴訟を提起すべきであったのであり、それをしないために国が提起することとなった本件訴訟にも同和解の効力が及び、協議はこれと並行して行うべきものと解するのが相当である。なお、同和解は代執行訴訟において被告が不作為の違法確認訴訟の確定判決に従うと表明したことが前提とされているところ、被告は本件においてもその確定判決に従う旨を述べており、被告にも原告にも錯誤はなく、同和解は有効に成立した。

民主主義の基本である選挙により示された民意を否定する多見谷判決。このような悪辣な判決を許すわけにはいかない。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー⑤〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-27

 これまでの選挙で、何度も示されてきた沖縄の民意を否定することは許されない。ところが、多見谷判決はこれを否定しているのだ。否定する根拠は何か。

 多見谷判決は、民主主義の基本である選挙により示された民意を否定した。正に驚きだ。

 このような悪辣な判決を許すわけにはいかない。

(辺野古新基地建設)は沖縄県の基地負担軽減に資するものであり、そうである以上本件新施設等の建設に反対する民意には沿わないとしても、普天間飛行場その他の基地負担の軽減を求める民意に反するとは言えない。・・・

続)高江ヘリパッド建設への自衛隊投入に、やっぱり法的根拠はない。野党は責任追及を!!!〜9月24日稲田防相記者会見より〜

2016-09-26

 高江ヘリパッド建設への自衛隊ヘリ投入について、稲田防相は、「民間ヘリで運べなかったので自衛隊ヘリを使った。ご理解をいただきたい。」と述べるのみで、法的根拠を一切示せない。

 自衛隊ヘリの目的外使用は明らかであり、明らかな違法行為だ。

 稲田防相はこの責任をどう取るつもりだ。今国会では、誰の要請により、どのように自衛隊ヘリ投入を判断したのか。その責任を追及すべきだ。

平成28年9月24日防衛大臣臨時記者会見概要(クリックで同HMへ)

・・・

Q:北部訓練場については、冒頭以外にどういったやりとりがあったのでしょうか。

A:北部訓練場について、私も冒頭でお話できなかったものですから、特に自衛隊のヘリを使っていることについて、非常に県民の皆様が不安に思っているというお話がありました。また、法的根拠が曖昧だということがありましたので、私たちとしては、民間機で運べる物は運んだのですが、それで運べない物を自衛隊機で運んでいますので、御理解をいただきたいという話をいたしました。知事からは、そのことだけではなく、いろんな問題と関連をしているのだというようなお話もあったところです。

・・・

Q:そういった行為自体について大臣はどういうふうに考えていますか。

A:実際、ヘリコプターを使ったのもですね、陸路で行ければそれに越したことはないわけですので、そういうことができない、他に方法がなかったということを御理解してもらいたいというふうに思っています。

辺野古新基地は、普天間飛行場施設の半分以下の面積であり、かつキャンプ・シュワブ内に設置されるから、沖縄の基地負担は軽減されるとの判断は誤りだ。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー④〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-26

 辺野古新基地について、多見谷判決は、繰り返し、次のように述べる。

・・・、本件埋立事業によって設置される予定の本件新施設等(辺野古新基地のこと)は、普天間飛行場の施設の半分以下の面積であって、その設置予定地はキャンプ・シュワブ内の米軍使用水域内であることからすれば、・・・地域振興開発の阻害要因とは言えない。
・・・本件新設等が設置されるのはキャンプ・シュワブの使用水域内に本件埋立事業によって作り出される本件埋立地であって、その規模は、普天間飛行場の施設の半分以下の面積であり、かつ、普天間飛行場が返還されることに照らせば、本件新設等建設が自治権侵害とは・・・いえない。

 多見谷判は、キャンプ・シュワブ内の米軍使用水域を埋め立て、その面積は普天間飛行場の半分以下の面積になるから沖縄の基地負担軽減につながると指摘する。しかし、その判断は誤りだ。その理由は以下のとおり。

①大浦湾はジュゴン等が生息する世界的にも貴重な海域(詳細はこちら豊かな恵み辺野古・大浦湾 (PDF 1,033KB)名護市HMへ)であり、埋立によってそれを失うことになること。

②辺野古新基地は1800M滑走路を2本を有し、大型軍艦が接岸可能な港をも有する(詳細はこちら    代替施設建設事業とキャンプシュワブの現状 (PDF 612KB)名護市HMへ) 

 施設が完成すればオスプレイ、F35が配備される。さらに、新基地には普天間飛行場にはなかった弾薬搭載エリア(1.6ha)が設置される。これまで弾薬を搭載するためには嘉手納飛行場を経由しなければならなかったが、辺野古新基地は弾薬搭載が可能となり、米軍機の発進基地となる。同時に米軍艦の発進基地ともなるのである。しかも、埋立規模は海面から10m。この埋立後に新基地が建設されるのだ。耐用年数200年だ。

 これが基地機能強化と言わずして何と言うのか。多見谷判決は認識違いも甚だしい。

③辺野古新基地が完成すると、県内には3つの軍事空港が存在することになる。那覇空港(自衛隊共同使用)、嘉手納飛行場、そして辺野古だ(下図のとおり紫色の円は各基地の空域を示す 詳細は本HM記事沖縄の空は米軍のものか!!!沖縄は二度と騙されてはならない〜嘉手納・普天間・那覇3飛行場飛行場の管制空域から見る沖縄の基地問題〜参照

 これからもわかるように、辺野古新基地建設は沖縄全体が基地そのものなることを意味する。だからこそ、オール沖縄で反対の意思を示し、新基地建設反対の民意が沖縄の8割を占めているのだ。

 これ以上の基地機能強化があるのか。多見谷判決は認識違いも甚だしい。 

基地と空域.jpg

騒音防止協定形骸化の指摘はそのとおり、しかし、その責任を沖縄に転嫁するのは筋違いだ。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー③〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-24

 「普天間飛行場における航空機騒音規制措置」(詳細はこちらをクリック騒音防止協定(嘉手納・普天間平成8年).pdf    )に関する認識も問題だ。

 平成8年3月28日、日米合同委員会が鳴り物入りで発表した騒音規制措置。多見谷判決は「同規制措置は、全て「できる限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの限定が付されて」いるとの指摘はそのとおり、しかし、そこから沖縄への基地押し付けを正当化することはできなはずだ。

 司法が指摘すべきは、騒音規制措置の形骸化は国が沖縄の基地負担除去という責任を果たしていないことを示しているということ。「そもそもこれ(騒音規制措置)が遵守されていないとの確認は困難であるから、被告の主張は前提を欠いている。」と指摘するが、遵守されているか否かの検証作業は、そもそも国が実施すべきであり、沖縄県へ責任転嫁する多見谷判決は最悪だ。

 被告(沖縄県)は普天間飛行場による騒音被害や危険性は・・航空機騒音規制措置・・が遵守されていなことにより深刻化している・・から、これを遵守させることによりそれを防止できると主張する。しかし、同規制措置は、全て「できる限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの限定が付されており、そもそもこれが遵守されていないとの確認は困難であるから、被告の主張は前提を欠いている。しかも、規制措置の内容を見てもそれによって普天間飛行場による騒音被害や危険性が軽減できる程度は小さく、・・・。

ノドンは射程外。しかしテポドン・ムスダンは射程内。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー②〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-21
 沖縄と潜在的紛争地域とされる朝鮮半島や台湾海峡との距離・・・、他方、北朝鮮が保有する弾道弾道ミサイルのうちノドンの射程外となるのは我が国では沖縄などごく一部であること、南西諸島は、我が国の海上輸送交通路に沿う位置にあり、沖縄本島はその中央にあること、・・・等に照らして、沖縄に地理的優位性が認められるとの原告の説明は不合理ではない。

 田見谷判決の北朝鮮ミサイルに関する認識は誤りだ。下図は防衛白書からの引用だ。たしかに沖縄はノドンの射程外であるが、テポドン、ムスダンの射程内だ。北朝鮮からのミサイル攻撃を避けられるのは「我が国では沖縄などごく一部」などと指摘するのは、国の主張を何の疑問もなく受け入れた多見谷判決の姿勢を示したものだ。

 「沖縄に地理的優位性が認められるとの原告の説明は不合理ではない。」との指摘そのものが、理解できない不合理と言わざるを得ない。 

北朝鮮弾道ミサイルの射程(防衛白書より)zuhyo01010202.gif

本土の最大米軍基地負担の青森県でも7.8%(沖縄74.4%)。青森県土に占める米軍専用施設割合は0.24%(沖縄県9.9%)。うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー①〜9.16多見谷判決の異常さ(判決要旨から抜粋)〜

2016-09-20
・・40都道府県全ての知事が埋立承認を拒否した場合、国防・外交に本来的権限と責任を負うべき立場にある国の不合理とは言えない判断が覆されてしまい、国の本来的事務について地方公共団体の判断が国の判断に優越することになりかねない。これは地方自治法が定める国と地方の役割分担の原則にも沿わない不合理な事態である。よって、国の説明する国防・外交上の必要性について、具体的な点において不合理であると認められない限りは、被告(沖縄県 筆者注)はその判断を尊重すべきである。

 つまり、沖縄は基地負担を受け入れよ、と多見谷判決は指摘する。

 しかし、沖縄と他の46都道府県を同列に扱っていることが問題だ。沖縄の基地負担は以下のとおり異常な状況だ。この状況下での沖縄への基地負担押しつけが「国の不合理とは言えない判断」と言えるのか。多見谷判決は極めて異常な判決としかようがない。

 沖縄の基地負担除去の民意に真っ向から対決する司法の判断だ。

 沖縄を馬鹿にするんじゃねー!!!

 うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー。

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高江ヘリパッド建設への自衛隊投入に法的根拠はない〜9月13日稲田防相記者会見より〜

2016-09-14

 高江ヘリパッド建設への自衛隊投入に法的根拠はない。

 「自衛隊法の6章に列挙されているものには当たらないというふうに思います。」稲田防相発言のように、高江ヘリパッド建設への自衛隊投入は自衛隊法の根拠を持たない違法な行為だ。防衛省設置法はあくまでも防衛省に関するものであり、防衛省設置法(所掌事務) 第4条第1項19号条文のどこを見ても、米軍基地建設にあたって自衛隊を投入できるとの規定はない。

 さらには、高江ヘリパッド建設への自衛隊投入については、誰の依頼により、どのような判断に基づき決定されたのかが明らかにされなければならない。

 高江ヘリパッド建設への自衛隊投入に法的根拠はない。断じて許されない!!!

 9月13日の稲田防相記者会見発言(当該部分のみ抜粋)(クリックで同HMへ)は以下のとおりだ

Q:北部訓練場のヘリパッド建設についてお伺いします。今朝から自衛隊のヘリが、トラックや重機などを運んでいますが、この自衛隊機を使うという判断をした理由を教えて下さい。

A:まず、この北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設工事については、進入路に反対される方々が長期にわたって物件や車両を放置、また、陸路運送に関する機材の搬入は困難であるという状況が続いておりました。このため、工事への影響を低減・回避しつつ、安全かつ円滑な工事を実施するため、民間ヘリコプターによる建設機材の運搬を実施しているところではありますが、今回、この民間ヘリコプターで運ぶことができない重量のトラック等を空輸するために、一部の建設機材について陸上自衛隊のヘリコプターを使うということを決断したということでございます。

Q:関連しまして、今回、自衛隊のヘリを使うにあたって、防衛省設置法第4条19号を根拠とされていらっしゃると思うのですが、それは自衛隊のヘリを使う根拠になるというのを、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

A:防衛省設置法の、今御指摘の4条19号ですが、条約に基づいて日本国にある外国軍隊の使用する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること、この中に今回の北部訓練場の移設、これは一つには沖縄の基地の負担軽減に非常に役立つものであるというふうに考えておりますし、また、環境保全、施工の安全に最大限配慮しつつ、移設工事を着実に進めていくことが、私は、負担軽減にも繋がっていく事だというふうに感じております。その中で、この条文を使って、民間輸送ができないものに限り、自衛隊の航空機を使わせていただくということにしたものでございます。

Q:関連して、自衛隊を出すときは、緊急性、公共性、非代替性というのを検討されなければならないというのがあると思うのですが、今回はそれに該当するというふうにお考えなのでしょうか。

A:今回、民間ヘリで運べない、しかも、必要最小限度に限って、陸上自衛隊等の部隊に、必要な協力を行なわせる、その一環というふうに考えております。

Q:自衛隊法の6章に、自衛隊の行動規定というのが書かれていると思うのですが、それが根拠にならない理由というのは何でしょうか。

A:自衛隊法の何条ですか。

Q:6章の災害派遣時や、防衛出動、治安維持など、いろいろ項目があると思うのですが、この中に資材搬入などは特に明記されてなく、違反に当たるのではないかという指摘も上がっていますが。

A:自衛隊法の6章に列挙されているものには当たらないというふうに思います。

Q:当たらない理由は何でしょうか。

A:防衛出動や、治安出動、災害出動には当たらないという意味です。

Q:私の理解不足だったら申し訳ないのですが、その中で重機を運ぶとか、資材を運ぶとか、そういうことを米軍基地のために自衛隊が器材を運ぶという項目がないと思うのですが、それが今回、できる理由とは何ですか。

A:先ほど申し上げましたように、設置法4条の今回の沖縄の負担軽減にとっても有益な、そして、返還に伴うそのための措置として、民間機で運べない物を、更には陸路で運べる状況にはないので、この条文に基づいて、自衛隊機で必要最小限度の物を運ぶということでございます。

Q:ゲート前に反対している住民が作っていたテントを撤去する時にも同じ条項を使って、根拠にして排除したと思うのですが、この沖縄の負担軽減は、返還のための措置をとるためでしたら、この条項というのはどこまで読めるものなのでしょうか。

A:この条文で、設置法4条で、沖縄の基地返還に必要最小限で、例えば、御指摘になった自衛隊機で民間機が運べない物、そして今の状況ですと陸路でそれを運ぶことも非常に困難な物、この条文の中で、相当性が認められる物、これについては実施できると思います。

Q:大臣も覚えてらっしゃると思うのですけれども、かつて辺野古の問題の時に、守屋元事務次官が、掃海母艦を投入して、強い批判を浴びて、すぐ取りやめました。これについて大臣はどうお考えになりますか。

A:やはり、私はこの沖縄の問題、辺野古の問題も含めて、沖縄の皆様、国民の皆様方に理解いただけるようにしっかり説明し、さらには、この条文の中で、相当だと認められるものを個々のケースに応じて、総合的に判断しながら、そして理解を得ながらやっていくということが重要だと思います。

Q:かつて守屋元事務次官が、掃海母艦を投入して強い批判を浴びてすぐ引き上げたことについて、大臣はどうお考えなのかという質問です。

A:私は、しっかり理解が得られていないような行動、また、そういった条文に基づいて、合理的な範囲のものであるかどうかということにかかっているんじゃないかと思います。

Q:当時は、理解が得られていなかったという理解でいいですか。

A:当時のことは、今、ここで詳しく、全ての情報をとった上で申し上げられませんので、具体的には言えませんが、しかし、今、私が申し上げたように、この条文の想定するような、相当のものであったかどうか、さらにはきちんと理解を得られながらやったかどうかということなのではないかと思っています。

Q:今のお話で、理解を得ていきたいというようなお話もあったと思うのですけれども、今回の自衛隊のヘリでの輸送については、沖縄県民の理解とか、東村、地元の住民の理解を得られているというお考えでしょうか。

A:今、御指摘のあった地元の中で理解をいただいている自治体もありますし、また、こうして反対をされておられる方もいるということであります。御指摘のあった国頭村や東村が返還跡地の有効活用策として、国立公園の指定、それから世界自然遺産への登録を目指すとして、早期返還を要望されていますし、また、返還されることによって、沖縄県内の米軍基地の面積が減少し、このことによって負担軽減にも資するということだと思います。今、御指摘のあったように様々な機会を捉えて、沖縄県民の皆様方に理解を求めていくことは、重要だというふうに思っています。今回のヘリコプターを使用するということに関して、沖縄県の方には事前に説明をしてきたところでありますが、しっかりと沖縄防衛局からも県の方に、さらに説明していきたいというふうに思っています。

Q:県の方に説明していたというのは、環境アセスの検討図書の中で、ヘリを使用するということだと思うのですけれども、その中には、当初、民間のヘリで対応するということだったと思うのですけれども、自衛隊機のヘリを使うということについては、これまで説明はなかったと思うのですけれども、これについてはどうお考えでしょうか。

A:原則、民間機でやるということでございます。しかし、今回、民間機で運べない重量オーバーのものについて、必要最小限、自衛隊のヘリを使わせていただく、この点についても、しっかりと沖縄県の方にも説明していく必要があるというふうに思っています。

Q:説明する前に、使用することは理解を得られているというお考えでしょうか。

A:自衛隊のヘリについても事前にお話しているところです。

Q:事前に沖縄県の方にはしているということですね。

A:はい。そういうことです。

防衛省設置法(所掌事務) 第4条第1項19号 条約に基づいて日本国にある外国軍隊(以下「駐留軍」という。)の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること。
自衛隊法 第六章 自衛隊の行動

 (防衛出動)第七十六条  内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。・・・

(防衛出動待機命令)

第七十七条  防衛大臣は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる。  
(防御施設構築の措置) 第七十七条の二
(防衛出動下令前の行動関連措置)第七十七条の三   
(国民保護等派遣)第七十七条の四   
(命令による治安出動) 第七十八条  内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。 
(治安出動待機命令) 第七十九条   
(治安出動下令前に行う情報収集)第七十九条の二    
・・・

沖縄の基地問題解決のために、今こそ、司法の英断を!!!〜9月16日判決、不作為の違法確認訴訟〜

2016-09-07

 7月22日に県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。その判決が9月16日に言い渡される。提訴から56日。スピード判決だ。国が求めた、早期の審理終結・判決の意を汲んでの裁判所の訴訟指揮であれば、非難は免れない。

 沖縄の基地問題について、故梶山氏(当時は官房長官)は、1998年書簡で、「キャンプシュワーブ外に候補地を求めることは必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす事が予想され・・。・・名護市に基地を求め続けるよりほかは無い・・」と発言し、森本前防相は20121225日の記者会見で「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と答えた。いずれも政権与党として現職閣僚を務めていた際の発言だ。沖縄以外に日本国内で基地を受け入れるところは無い。つまり、政権を維持するためには在沖縄米軍基地の県外移転は禁句(タブー)だということだ。

 沖縄の基地問題解決のためには司法の力が必要だ。

 9月16日判決では、福岡高裁那覇支部は、国の不作為の違法確認請求を否定する判断を求める。

 沖縄の基地問題解決のために、今こそ、司法の英断を!!!

【これまでの本HM記事】

(08/15)米政府の確信発言(来年3月までに辺野古着工)と福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶりの意味するもの〜沖縄の基地問題解決のためには、司法による救済が不可欠だ〜

(08/12)福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶり。これは驚きだ!!!

(08/08)菅官房長官は法治国家の意味を知らないらしい。なんと、基地と沖縄振興予算はリンクする、移設工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然ではないか、と明言。〜8月4日午前記者会見〜

(08/05)2016年8月5日午後1時 不作為の違法確認訴訟第1回口頭弁論事前集会に参加しました

(08/04)「日本の国益が『沖縄差別』という現実」の衝撃とその証左〜7月22日、沖縄県に対し、国は敵意をむき出しにした。沖縄の民意を一顧だにしない国を許してはならない〜

(07/28)県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。国の主張は明らかな誤りだ。

(07/28)県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。県の「 原告「上申書」に対する意見」に見る国の主張の不当性

(07/25)沖縄の米軍基地の現状(2015年3月末現在)。沖縄差別の実態。

(07/25)あらゆる手法を用いた辺野古新基地阻止の経緯(最新部分)

(07/23)(写真追加しました)正に、国益が沖縄差別の実態。2016年7月22日高江ヘリパッド工事強行。米軍を守るために、沖縄県警、警視庁、千葉県警等700人の機動隊員を投入。

(07/22)沖縄県に対して、国が求めた辺野古陸上部の工事は埋立工事と一体のものであり、再開は認めらない

(07/22)正に、国益が沖縄差別の実態。2016年7月22日高江ヘリパッド工事強行。米軍を守るために、沖縄県警、警視庁、千葉県警等700人の機動隊員を投入。

(06/22)辺野古新基地建設阻止! 県に取消訴訟を提起する和解上の義務はない〜国地方係争処理委員会は判断せず、県と国に協議を促したのだから〜

(06/22)国地方係争処理委員会、判断はせず、県と国に協議を促すと〜国地方係争処理委員会に対する審査の申出に係る決定と通知(平成28年6月20日付)より〜

(06/18)なんだこりゃ! 判断示さず、県と国に協議を促す?〜辺野古埋立に関する国地方係争処理委員会判断〜

(06/11)沖縄県議会議員選挙 翁長知事を支える与党が27議席(過半数は24)を獲得

(06/05)1998年故梶山氏書簡)「キャンプシュワーブ外に候補地を求めることは必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす事が予想され・・。・・名護市に基地を求め続けるよりほかは無い・・」

「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)」が高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設の中止を求める二つの決議案を可決

2016-08-17

 「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)(退役軍人で作る平和団体)」は、8月13日、第31回年次総会で、高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設の中止を求める緊急非難決議案を可決した。

 昨年9月15日、米バークレー市議会が辺野古反対決議 新基地断念を要求(9月17日付琉球新報より)クリックで同記事へ) し、続いて同年12月21日には米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市議会が辺野古反対決議 新基地断念要求・沖縄との連帯を表明した。

 沖縄の民意を無視する日米両政府の姿勢に対し、米国からも非難の声が上がっている。

 沖縄は、沖縄の民意実現のために、声を挙げ続ける!!!

(2016年8月16日琉球新報社説)  退役軍人らでつくる平和団体「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)」が総会で、辺野古新基地建設と米軍北部訓練場でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設の中止を求める二つの決議案を可決した。 
 米軍基地の重圧に苦しむ沖縄の状況を看過できないのだろう。全会一致の可決は、沖縄の異常な状況の加担者になることを明確に拒否する姿勢の表れである。
  選挙で示された沖縄の民意などに立脚した二つの決議を高く評価して敬意を表するとともに、深く感謝したい。
  辺野古新基地建設に関する決議文は(1)普天間第1海兵航空団の撤退(2)新基地建設計画の撤回(3)沖縄からのオスプレイの撤収−を、地方議会などで決議するよう働き掛けることを明記している。
  米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設するのではなく、部隊撤退による撤去・閉鎖を求めている。県内移設を拒否する沖縄の民意にも沿った内容と言えよう。
  120あるVFPの各支部のうち、特に米国内の支部が決議の実現に取り組み、辺野古新基地建設計画の中止を求める米国世論を喚起することを望みたい。
  米国では昨年、カリフォルニア州バークレー市議会、マサチューセッツ州ケンブリッジ市議会が辺野古新基地建設に反対する決議案を可決している。
  市議会などの反対決議がさらに広がれば、米政府がそれを無視することはできないだろう。米国内で大きなうねりをつくり、米政府を新基地建設計画断念に追い込んでほしい。
  ヘリパッド新設中止を求める緊急決議文は、東村高江での抗議者排除について「日本政府が沖縄を植民地と捉えている」と指摘した。日本政府は真摯(しんし)に受け止め、強権的なヘリパッド新設を断念すべきである。
  決議文は「われわれ元米兵は、米軍が沖縄の人々に対する露骨な差別的対応に加担していることを恥じ、憤りを感じている」とも強調している。当然の感覚であり、その感覚を一般市民にも広げてほしい。
  VFPの設立目的は「戦争の終結」である。辺野古新基地建設への反対や北部訓練場でのヘリパッド新設を拒否することは設立目的に合致する。沖縄の民意を支援する取り組みの継続を期待したい。

米政府の確信発言(来年3月までに辺野古着工)と福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶりの意味するもの〜沖縄の基地問題解決のためには、司法による救済が不可欠だ〜

2016-08-15

 7月26日付沖縄タイムス。同紙記事(末尾抜粋掲載)によれば、辺野古問題に関して、ハリス米太平洋軍司令官は「来年3月工事再開の目標は必ず守られる」と強調したという。さらに、国務省高官は「法廷闘争は遅くとも2月までに決着しておく必要がある」「逆算してスケジュールをはじき出し、日本側と確認している」と発言したという。

 一方、国が訴えた不作為の違法確認訴訟。国の提訴は、福岡高裁那覇支部及び国地方係争処理委員会の意思を無視した行為であり、さらに、裁判所に対して審理を終結し早期の判決を求める暴挙に出た。

 ところが、福岡高裁那覇支部(多美屋裁判長)は国の早期結審の意を酌み、8月19日結審、9月16日判決の訴訟指揮をした。米政府高官の発言と呼応するかのような福岡高裁那覇支部の豹変ぶりには驚かされるばかりだ。(詳細は本HM記事 福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶり。これは驚きだ!!!)

 司法の米国隷従ぶりは1957年「砂川事件」ですでに明らかになっている。米軍駐留を違憲とした東京地裁判決(伊達判決)について、田中耕太郎最高裁長官(当時)は、米国駐日主席行使に対して「裁判官全員一致での一審判決取消、時期は12月」と伝えていた

 不作為の違法確認訴訟の福岡高裁那覇支部(多美屋裁判長) の訴訟指揮もこれにつながっているのか。 

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 日本の裁判所が国権三権の一翼として位置づけられたのは戦後。それまでは天皇を輔弼するものとして、司法大臣の下部組織でしかなかった。戦後GHQのおかげで三権の一翼として位置づけられた恩義を、裁判所はいつまでも持ち続ける必要はないと思うのだが?

 沖縄の基地問題解決のためには、司法による救済が不可欠だ。

 (右図は最高裁HM司法制度改革:21世紀の司法制度を考える(資料一覧)より引用) 

(2016.7.26付沖縄タイムスより抜粋) 高江着工・辺野古提訴「二正面」の衝撃 来年3月の着工を期待  「日本政府が米軍普天間飛行場の代替施設建設計画を巡り沖縄県を提訴。ヘリパッド工事も着工」 世界情勢を12ページに簡潔にまとめた報告書の中で、国が基地問題で対立する県へ仕掛けた「二正面作戦」の始まりを記したのはわずか2行だった。・・・報告書に目を通したオバマ大統領は、沖縄の近況に言及することもなく、約30分のブリーフィングを終了した。 「裁判が終わるのは来年2月。それまでは動かない」とライス大統領補佐官から知らされていたオバマ氏にとって、辺野古移設問題はすでに次期大統領の手に委ねられた・・・。  「工事が止まるのは最長で来年3月まで。裁判が長引くことはない」 6月上旬。米連邦議員会館で、上院軍事委員会のマケイン委員長と向かい合ったハリス太平洋軍司令官は、きっぱり断言すると同時に「来年3月工事再開の目標は必ず守られる」と強調した。  「沖縄を視察した委員会のメンバーから、キャンプ・シュワブ周辺での市民の抗議が強まっていると聞いている。大丈夫か。」疑問のまなざしを向けるマケイン氏に、ハリス氏は「日本側が警備を強化し、きちんと対応する。大丈夫だ」と胸を張った。  米軍側が来年3月までに工事は再開されるとの自信を示す一方で、先行きを不安視するのが国務省側だ。 ・・・大統領候補に指名されたドナルド・トランプ氏が大統領になるシナリオが現実味を帯びてきたと不安視する。・・・・・ 「法廷闘争のタイムリミットは2月。もしトランプ氏が大統領となり、2月以降も法廷闘争が長引いた場合、巨額な予算を要する辺野古移設計画とグアム移転は、トップダウンでひっくり返される可能性も十分ありうる」と話す。 現行計画を堅持するには、法廷闘争は遅くとも2月までに決着しておく必要があるとし、逆算してスケジュールをはじき出し、日本側と確認していると打ち明けた。・・・ 「時間的余裕はまったく残されていない。タイムリミットは2月。日本政府の本気度をみるだけだ」

福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶり。これは驚きだ!!!

2016-08-12

   福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶり。これは驚きだ!!!

 代執行訴訟での福岡高裁那覇支部の和解勧告文。そこに記された同支部の問題意識は沖縄の置かれた状況について理解を示していた、と思った。同支部は次のように指摘した。

 「平成11年地方自治法改正は、国と地方公共団体が、・・・対等・協力の関係となることが期待されたもの・・。このことは法定受託事務の処理において特に求められる・・。(県と国と対立は)同改正の精神にも反する状況になっている。」そして、「本来あるべき姿・・は、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決案を合意して、米国に協力を求めるべきである。そうなれば、米国としても、大幅な改革を含めて積極的に協力しようという契機となりうる。」と。

 さらに和解条項第8項は「原告および利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定まで普天間飛行場の返還および本件埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う。」とした。円満解決に向けた協議は県・国双方の和解上の義務である。

 さらに、国地方係争処理委員会は「国と県は米軍普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力することが問題解決に向けての最善の道である」として判断を示さず、協議を続けるよう求めた。

 ところが、国は、同委員会の声には耳をかさず、不作為の違法確認訴訟を提訴した。国の提訴は、福岡高裁那覇支部及び国地方係争処理委員会の意思を無視した行為であり、さらに、裁判所に対して審理を集結し早期の判決を求めた。司法等無視の暴挙としかいいようがない。

 ところが、福岡高裁那覇支部(多美屋裁判長)は国の早期結審の意を酌み、9月にも判決を言い渡すとの訴訟指揮をした。しかも、第1回口頭弁論では「本件訴訟は代執行訴訟での和解の枠組みの中にあるか」「(和解の枠組み内)であれば是正指示に対して地方公共団体は期間経過後、争うことができないとなった場合は(是正指示が)確定してしまう」「仮に不利な判決であったとしても従っていただけるのではないか」など、国の主張に沿ったような質問を県に対して連発した。何故か?

 そもそも、代執行訴訟と不作為の違法確認訴訟は訴訟物を異にし、審理の対象が異なる。まさか、国の是正指示に対する、県の異議申し立て期間が徒過し、是正指示が確定しているとして、県敗訴の判決を目論んでいるのか。まったくいかがわしい。

 意見陳述に入る前の国の請求の趣旨の追加がこれを目途としたものであれば、福岡高裁那覇支部の訴訟運営はあまりにも公平を欠く訴訟指揮だ。

 沖縄の基地問題について、故梶山氏は、1998年書簡で、「キャンプシュワーブ外に候補地を求めることは必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす事が予想され・・。・・名護市に基地を求め続けるよりほかは無い・・」と発言した。

 さらに、森本前防相は20121225日の記者会見で、記者から「普天間の辺野古移設は地政学的に沖縄に必要だから辺野古なのか、それとも本土や国外に受入れるところがないから辺野古なのか」との質問に対して、「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と答えた。

 いずれも政権与党として現職閣僚を務めていた際の、現職閣僚の発言だ。沖縄以外に日本国内で基地を受け入れるところは無い。つまり、政権を維持するためには在沖縄米軍基地の県外移転は禁句(タブー)だということだ。

 故梶山氏、森本氏の発言からすれば、沖縄の基地負担軽減のためには政治の力は期待できない。1対46の日本の民主主義の状況では沖縄の基地負担軽減は実現不可能だ。

 司法による救済なしには、沖縄の基地負担の軽減を図ることはできない。

 福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)は、早々の結審の訴訟指揮を覆し、実質審理を行うべきである。仲井真知事の埋立承認の違法性、翁長知事の埋立承認取消し適法性について実質審理しなければならない。

菅官房長官は法治国家の意味を知らないらしい。なんと、基地と沖縄振興予算はリンクする、移設工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然ではないか、と明言。〜8月4日午前記者会見〜

2016-08-08

 8月4日午前の記者会見。   菅官房長官は、基地と沖縄振興予算はリンクするとし、移設工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然ではないか、と明言した。

 これまで、政府は、基地と沖縄振興はリンク論を否定してきた。しかし、菅官房長官は基地と振興策はリンクし、辺野古新基地が進まなければ振興予算は減額されるとした。以下は報道各社の報道内容を抜粋した。

 そもそも、沖縄振興は、沖縄振興特別措置法に基づいて進められる国の政策だ。同法には沖縄振興特別措置について、末尾のように規定されているが、どこにも、基地受け入れが条件だとは規定されていない。

 何故、菅官房長官や鶴保沖縄担当相は振興と基地がリンクすると言えるのか。

 菅氏は常々、日本は法治国家だと言っているが、ご本人自身が、その意味を知らないのではないか、と疑いたくなる。

(2016.8.4付琉球新報より抜粋)

菅義偉官房長官は4日午前の記者会見で、・・基地問題と沖縄振興との在り方について「(基地と振興の)両方の課題を全体に総合的に推進していく意味合いにおいてはリンクしているのではないかと思う」などと述べ、基地と振興の「リンク論」を認めた。従来の政府方針から大きく立場を転換させた。翁長雄志知事が辺野古移設に協力しない場合に振興予算を減らす考えはあるのかとの質問に対しては「工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然ではないか」と述べ、2016年度沖縄振興予算の減額を否定しなかった。

・・・菅氏は・・基地と振興がリンクする理由について「政府による沖縄振興の目的には返還された基地の跡地利用はもとより、基地があることによっての基地負担軽減も含まれている」などと述べ、基地跡地利用との関連性を述べた。・・・

(2016.8.5付沖縄タイムスより抜粋)

 菅義偉官房長官は4日午前の記者会見で、米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設の進展が内閣府沖縄関係予算の査定に影響を及ぼすとの考えを示した。これまで政府と県が否定してきた基地問題と沖縄振興の「リンク論」を認めた。

・・・工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然でないか。米軍との間では嘉手納以南の土地の約7割が返還されることが決まっている。(普天間飛行場や嘉手納以南の)跡地利用が遅れれば、予算が少なくなっていくのは、それはそうでないか」と述べた。・・・

(2016.8.5付東京新聞より抜粋)

・・・菅氏は、米軍基地の再編に伴う跡地利用の事業費などが振興予算に盛り込まれているとして「工事が進まなければ費用は当然減る。跡地利用の工事が遅れれば、予算が少なくなっていくというのも現実問題だ」と述べた。基地問題と振興予算は「政府として総合的に推進していくという意味合いにおいて、リンクしている」と説明した。

 発言には、沖縄にとって死活的な振興予算の削減をにおわすことで、対決姿勢を強める翁長氏をけん制する狙いがあるとみられる。・・・

  これに関連し、鶴保庸介沖縄担当相は同日の就任記者会見で「県や市の事情で消化できない予算を無理やり計上すれば、血税の無駄遣いという国民の批判に耐えられない」と菅氏に同調した。稲田朋美防衛相も報道各社のインタビューに対し「基地問題と振興策のリンクは菅氏が述べた通りだ」と語った。

沖縄振興特別措置法

(目的)第1条   この法律は、沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み、沖縄振興基本方針を策定し、及びこれに基づき策定された沖縄振興計画に基づく事業を推進する等特別の措置を講ずることにより、沖縄の自主性を尊重しつつその総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与することを目的とする。  

(施策における配慮)第2条   国及び地方公共団体は、沖縄の振興に関する施策の策定及び実施に当たっては、沖縄の地理的及び自然的特性を考慮し、並びに産業活動及び住民の生活における基礎条件の改善、沖縄固有の優れた文化的所産の保存及び活用、環境の保全並びに良好な景観の形成に配慮するとともに、潤いのある豊かな生活環境の創造に努めなければならない。

2016年8月5日午後1時 不作為の違法確認訴訟第1回口頭弁論事前集会に参加しました

2016-08-05

 2016年8月5日午後1時。翁長知事を、国が訴えた不作為の違法確認訴訟第1回口頭弁論の事前集会に参加しました。

 時折、雨が打ち付ける中、集会には1500人の市民が結集。会場となった福岡高裁那覇支部前の公園は翁長知事を支える多くの市民、県民の熱気にあふれた。

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 あいさつに立った翁長知事は、沖縄の置かれた状況について、今日結集した市民・県民、国民、そして外国までも沖縄に連帯の輪が拡がっている。今日の心持は勇気百倍、最後まで闘い抜こうと語った。

 菅官房長官の「基地と振興リンク」発言に対しては、多くの登壇者から、金は要らないから基地を持って行け、との発言が続いた。

 最後には、基地の無い平和な沖縄を取り戻すまで、団結してガンバローと気勢をあげた。

オール沖縄団結してガンバロー2016年8月5日午後1時 違法確認訴訟第1回口頭弁論事前集会

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県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。早期結審?国の主張は明らかな誤りだ。

2016-07-30

 翁長知事に対し、国が提訴した不作為の違法確認訴訟。国は裁判の早期の終結を求めて上申書を提出した。その内容は、裁判についての審理は、昨年11月の代執行訴訟で尽くされており、同訴訟で行われなかった主張や証拠提出を認めずに、裁判を終結することを求めている、という。

 これに対して、県は、今訴訟と代執行訴訟には法的な連続性はなく、「国の主張は「正当性、合理性のない不当なものだ」」(本日付け琉球新報より)として、反論書面を提出した。

 国の主張は明らかな誤りだ。(以下は県提出の「 原告「上申書」に対する意見」からの引用。勝手にまとめてみました)

①昨年11月の代執行訴訟と不作為の違法確認訴訟は、裁判の目的(訴訟物)が異なる。前訴の審理結果を引用することはできない

②国交大臣の是正指示は代執行訴訟終了(和解)後に発出されたものであり、裁判所において審理されていない

③和解で代執行訴訟は取下げられた。これにより、代執行訴訟は最初から無かったことになる。したがって無かった裁判で形成された心証などあり得ない

④和解で終わった事件の弁論の再開などあり得ない

⑤迅速な裁判を求めるが、一回目の是正指示を撤回し、二度も是正指示を出したのは国交大臣であり、迅速な裁判を求める資格はない

⑥主張・立証を尽くすことが許されないとし、本件訴訟を形式的に終わらせるべきであるとする原告の主張は、地方自治法への理解を欠いたものであり、正当なものではない

県の意見書はこちら(07/28)県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。県の「 原告「上申書」に対する意見」に見る国の主張の不当性

県を相手に国が提訴した不作為の違法確認訴訟。県の「 原告「上申書」に対する意見」に見る国の主張の不当性

2016-07-28

  7月22日、県を相手に、国が提訴した不作為の違法確認訴訟。提訴と同時に国は、初回結審を求める内容の「上申書」を提出した。この「上申書」に対する反論書が、県提出の「原告「上申書」に対する意見」である。

 その内容からは、国の主張の不当性が明らかになる。 

平成28年(行ケ)第3号
地方自治法第251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
原 告 国土交通大臣 石 井 啓 一
被 告 沖縄県知事 翁 長 雄 志


                      原告「上申書」に対する意見
                                               平成28年7月26日
福岡高等裁判所那覇支部民事部ⅡB係 御中
                                被告訴訟代理人
                弁護士 竹 下 勇 夫
                  同 加 藤 裕
                  同 松 永 和 宏
                  同 久 保 以 明
                  同 仲 西 孝 浩
                  同 秀 浦 由紀子
                  同 亀 山 聡

平成28年7月22日付で原告が提出した「上申書」について、以下のとおり、意見を述べる。


1 別訴の審理経過や心証形成に基づく判決を求める不当
 原告の主張は、裁判所に、本件の訴訟手続によらずに形成された心証に基づいて判決をすることを求めるものにほかならない。
 原告は、「代執行訴訟において、既に、本件訴訟と同一の争点について主張立証が尽くされ、口頭弁論が終結されており、その後、『弁論の再開』をすべき事由が見出し難い本件については、第1回口頭弁論期日において双方が、代執行訴訟における主張資料、証拠資料を整理して提出した上で、御庁におかれましては、直ちに口頭弁論を終結し、速やかに判決をしていただきたく上申する」、「代執行訴訟で主張していなかった新たな主張や証拠の提出をすることは厳に慎まれるべきもの」としている。
 しかし、代執行訴訟は、原告による訴えの取下げで終了したものであり、代執行訴訟は、初めから係属していなかったとみなされるものである( 民事訴訟法第262 条) 。

 本件訴訟は、代執行訴訟とは、異なる訴訟であり、訴訟法上の連続性がない、まったくの新規の訴訟である。

 また、審理の対象が異なることも明らかである。本件訴訟は、代執行訴訟が取下げられた後に出された、国土交通大臣による是正の指示に従わないことの違法性の確認が求められているものである。是正の指示に従わないことが違法であるというためには、是正の指示が適法であることが要件となる。この是正の指示は、代執行訴訟取下げ後になされたものであり、代執行訴訟係属中には存在していないものである。本件訴訟と代執行訴訟では審理の対象が異なることは当然である。
 代執行訴訟において、裁判所が心証を形成していたとしても、その代執行訴訟における心証は、本件訴訟においては、訴訟手続きによって形成されたものにはなりえないものである。

 原告は、代執行訴訟時の和解の過程で「書証番号も基本的に同じにして提出されるようご示唆いただいた」としているが、書証番号を同一にしなければならないという合理的な理由は見出し難い。書証番号を同一にしなければならない理由として、可能性を考えるのであれば、代執行訴訟における主張や争点、証拠の整理をそのまま本件訴訟の審理、判決に流用して省力化を図ることくらいしか想定できない。しかし、たまたま後に別訴を受理した裁判体が同一の裁判官による構成であったからといって、訴訟上はまったく別個の取り下げられた事件の審理の成果を利用しうる法的根拠はどこにもない。前訴で提出済みの書証と同一のものであっても、後訴で労を省くのでなく改めて提出しなければならないのが当事者の責任であることと同様、自明のことである。
 新訴について弁論再開の可否と同視することは暴論であり、訴訟にかかる態度で臨むことこそ「厳に慎まれるべきもの」である。裁判所が迅速適正な審理を行うために当事者が適切に訴訟行為を行うということは当然ではあるものの、原告の主張はこれとは全く異質のものである。


2 国地方係争処理委員会での審理経過の意義の否定であること
 原告は、「本件訴訟は、そもそも迅速な司法判断が求められる代執行訴訟の審理を経た上で、同一の争点について、再度司法判断を求める訴訟である」とするが、原告の上申書における主張は、国地方係争処理委員会における審理の経過と意義を真っ向から否定するに等しいものである。
 そもそも、是正の指示は、代執行訴訟の取下げ後になされたものであり、代執行訴訟時には、本件訴訟における審理の対象である是正の指示は、存在していないものである。

 代執行訴訟取下げ後になされた是正の指示に対し、沖縄県知事は、国地方係争処理委員会に審査の申出をし、国地方係争処理委員会において、是正の指示の適法性・違法性を巡る主張がなされてきた。

 国土交通大臣が国地方係争処理委員会に提出した主張書面は合計700 頁を超え、沖縄県知事が国地方係争処理委員会に提出した主張書面は合計1300 頁を超えるものであった。

 代執行訴訟と共通する主張もあるが、もちろん異なる主張も大幅に展開されている。そもそも、代執行と同じ主張か異なる主張であるのかということが、整然と区別されうるものでもない。
 代執行訴訟が取下げで終了された後になされた是正の指示について、沖縄県知事は地方自治法に基づいて国地方係争処理委員会に審査申出をし、審査手続においては国地方係争処理委員会や委員からの質問も受け、あらたな主張が展開されたものである。ここでは、国土交通大臣自身があらたな主張をしてきたではないか。

 「代執行訴訟で主張していなかった主張や証拠の提出をすることは厳に慎まれるべきもの」とする原告の主張には合理的な根拠は全く認め得ないものであり、国地方係争処理委員会における審理の経過と意義、そして同委員会における自らの主張をも否定するものである。

3 国土交通大臣に「迅速」をいう資格はないこと
 なお、迅速で充実した審理を妨げてきたのは国土交通大臣であり、その当事者が、弁論再開事由の有無との比較をし、十分な審理を経ることなく初回結審を求める資格はないというべきである。


 第1に、原告の意見は、代執行訴訟と本訴が同じ審理の繰り返しだから省力化せよ、というものであるが、そもそも最初の争訟手段の選択を誤ったのはほかならぬ原告なのだから、同一の争点があろうが、別訴において一から必要十分な訴訟追行の労をとらねばならないのは当然である。


 第2に、代執行訴訟の和解条項に基づいて、国土交通大臣がした是正の指示には、一切理由が示されていなかった。迅速で充実した審理を求めるのであれば、判断の対象となる是正の指示の理由をきちんと示さなければならないものであるが、一切理由を示さない是正の指示をするという暴挙に出たのは、ほかならぬ国土交通大臣である。

 そして、沖縄県知事は、和解条項に基づく是正の指示について、和解条項に定める期限内に国地方係争処理委員会に対して70頁に及ぶ大部の審査申出書により、審査の申出をした。ところが、国土交通大臣は、これに何ら反論することなく、和解条項に基づく是正の指示を一方的に撤回したのである。

 和解条項に基づく是正の指示の撤回後、国土交通大臣があらたに地方自治法に基づく是正の指示をしたのが本件是正の指示である。和解条項に基づいて想定されていた国土交通大臣による是正の指示は、当然1回限りのものだったはずではないだろうか。


 第3に、2回目となる本件是正の指示に関する審査では、国地方係争処理委員会の指示した期間までに、双方が主張と証拠を提出した(沖縄県知事が提出した主張書面の8割以上は期間内に提出をしたものである。)。ところが、国地方係争処理委員会から指示された期間経過後に、国土交通大臣が期間内に提出した主張書面の頁数を上回る分量の頁数の主張書面を提出し、これに対する反論の主張書面を沖縄県が提出した。

 さらに、国土交通大臣は、平成28年5月になってから、国地方係争処理委員会からの質問に対する回答として130頁近い書面を提出したが、実質的に質問に対する回答は1頁程度のみであり、その余は回答に藉口した主張であり、しかも、その多くが新たな主張であった。証拠の提出期限も経過し、審査期日も開かれた後に、まったく新たな主張をしたものであった。
 以上のとおり、原告は、代執行訴訟や不作為の違法確認訴訟の審理手続にかかる規定をとりあげて、異様な「初回結審」を求めているものであるが、原告が求める「迅速」は、原告自身によって損なわれているものであって、そのしわ寄せを相手方である地方公共団体に負わせる理由はない。


4 地方自治法における国と地方公共団体の紛争を解決するための制度の趣旨の理解に欠けるものであること
 本件訴訟を「代執行訴訟の弁論を再開するか否かが問われているに等しい」とすること、「代執行訴訟で主張していなかった新たな主張や証拠を提出するということは厳に慎まれるべき」とする原告の上申は、正当性、合理性のない不当なものであり、かかる上申にしたがった訴訟指揮がなされるべきものではない。

 不作為の違法確認訴訟は、「透明性の高いプロセスの下、国と地方公共団体の双方がそれぞれ主張・立証を尽くし、これをもとに裁判所が判断を行う」( 地方自治法抜本改正についての考え方(平成22 年))ことを制度趣旨として設けられたものである。

 主張・立証を尽くすことが許されないとし、本件訴訟を形式的に終わらせるべきであるとする原告の主張は、地方自治法への理解を欠いたものであり、正当なものではない。
 裁判所におかれては、上記の不作為の違法確認訴訟のもうけられた制度趣旨にもとづき、双方が主張・立証を尽くした充実した審理をなされるよう求めるものである。
                        以  上

※藉口(シャコウ):何かにかこつけること。口実をもうけて言いわけすること

国土交通大臣の「上申書」に対する意見(PDF:25KB)クリックで県HMに飛びます)

沖縄県に対して、国が求めた辺野古陸上部の工事は埋立工事と一体のものであり、再開は認めらない

2016-07-22

 7月14日の県と国の辺野古問題に関する作業部会。その中で、国は辺野古陸上部工事の再開を県に求めた。以下は中谷防相記者会見からの抜粋である。

 中谷防相は陸上部工事は「埋立工事と直接関係のない工事」であると発言し、間接的には関係のある工事であると認めている。さらに「(米軍の)全体の再編計画の中で、進められているところでございまして、キャンプ・シュワブの陸上においての、海兵隊の隊員宿舎の建設工事でございます」と発言している。埋立工事と一体の工事であることは明白だ。

 埋め立てによる新基地建設後の兵員宿舎であることは容易に分かる。新基地建設阻止により不要となる施設だ。無用の長物となる。

 沖縄県が認めることはない。 

大臣会見概要(平成28年7月15日)クリックで同HMへ)

Q:・・・辺野古の移設計画の中で、陸上部分の工事を一部再開すると・・・、政府・・から説明があったのと思うのですが、再開する工事の内容については決定するのでしょうか。

A:昨日の部会におきまして、政府側から、埋立工事と直接関係のない工事である、キャンプ・シュワブ陸上施設の再編工事を再開する考えを県に伝えました。本日午後に、沖縄防衛局から沖縄県側に対して、さらなる詳細な説明をする予定・・。・・工事は、着工済の敷地の造成、また、建物工事が挙げられますが、防衛省と・・しては、和解の当事者である沖縄県側との認識が異なることがないように、丁寧に説明をして、適切に対応してまいりたい・・、今日午後、沖縄県に詳細について説明に上がるという予定です。

Q:沖縄県・・は、辺野古の移設に関わる部分については、和解条項に係ってくるのではないかということで話をされている・・のですが、・・・造成・・部分については、埋立に関わる部分ではないという認識でしょうか。

A:その通りです。和解で示されたのは、埋立工事を中止するということでありまして、埋立工事と直接関係の無い、陸上の宿舎などの建設・建築、これは、実施しても許されるのではないかという認識で申し入れをしたということであります。

Q:関連してなのですけれども、造成工事は、埋立には直接関係のないというお話だったのですが、それは、全く、滑走路を作るために移動させる部分ではなくて、それ以外の部分、古くなった老朽化した部分とか、そういうことでよろしいでしょうか。

A:全体の再編計画の中で、進められているところでございまして、キャンプ・シュワブの陸上においての、海兵隊の隊員宿舎の建設工事でございます。また、その中で、施設の再配置があるということで行っておりまして、その点におきまして、計画に従って工事をしておりましたので、その部分においては、工事をさせていただきたいということであります。

Q:工事の再開に当たってですが、・・・これには、県の同意・・が必要なのでしょうか。

A:和解の関連の中で、海上の工事を停止しましたが、それと併せて、陸上部分も停止をしたわけでございます。そういう中で、施設の再配置ということで、この点において、海上の埋立工事ではないという点において、沖縄県にご理解いただくように、今、説明をさせていただいているということであります。

Q:確認なのですけれども、県も、これが和解条項に当たらないというような認識を、県が示す必要というのは工事再開には必要でしょうか。

A:我々、沖縄県に説明をさせていただきます。その後、工事の進行に支障のない範囲で、具体的な時期等も明らかにしてまいりたいと思いますが、いずれにしましても、県側と話合いをした上で、実施をしたいと思います。

Q:再開に当たって、何らかの入札をしたりだとか、事務的作業というのは、今後必要になっていくのか、それとも、和解で中止しているだけなので、やると決めればすぐできるようなものなのでしょうか。

A:今日午後、沖縄県側と話をさせていただきますので、そういったことも踏まえまして、今後の工事の進め方等、検討してまいりたいと思います。

辺野古埋め立て、政府、あす沖縄県を提訴へ 翁長知事「残念だ」(7月21日付沖縄タイムスより)

2016-07-21

 今日7月21日午前の沖縄県と政府との協議会の席上、翁長知事に対し、菅官房長官から、22日に違法確認訴訟提訴を提訴する旨が伝えられたという。

 福岡高裁那覇支部の和解勧告も、国地方係争処理委員会の判断も、県・国双方に協議を求めた、というのにである。

 国は提訴を決めた。先の協議会の席上、国は裁判を進めながらでも協議はできると言ったという。裁判の状況を見ながら、協議を有利な状況に持っていこうという、腹の中が透けて見える。

 いずれにせよ、決着は裁判でということになる。福岡高裁那覇支部がいかなる判断を下すのか。注視したい。

(7月21日付沖縄タイムスより抜粋)
<辺野古埋め立て>政府、あす沖縄県を提訴へ 翁長知事「残念だ」

【東京】政府は・・・埋め立て承認取り消しに対する国の是正の指示に翁長雄志知事が応じないのは違法として、22日に福岡高裁那覇支部へ不作為の違法確認訴訟を起こすことを決めた。21日午前・・・政府・沖縄県協議会で菅義偉官房長官が翁長知事へ伝えた。提訴から15日以内に第1回口頭弁論開かれる。
 同日は国地方係争処理委員会(係争委)の結果を受け、地方自治法に基づき県が提訴できる期限。翁長知事は会合後、記者団に「係争委の結果を重く受け止め、首相らには真摯(しんし)な協議を求めていた。法の規定で訴え可能な日を待っていたかのように提訴の判断が示されたことは非常に残念だ」と政府の対応を批判した。・・・
 係争委は是正指示をめぐる争いの本質について是正指示の適否は示さず、国と県に協議を促した。翁長知事は「協議が先かと思った。明日提起するのは係争委の考え方にもそぐわないものではないか」と不信感を示した。・・・

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