国地方係争処理委員会、判断はせず、県と国に協議を促すと〜国地方係争処理委員会に対する審査の申出に係る決定と通知(平成28年6月20日付)より〜
翁長知事の埋立承認取消に対する、井上国交相からの取消是正指示の適否審査申出について、国地方係争処理委員会の小早川委員長は、6月17日の記者会見で「判断を示さない」と述べたが、その具体的に内容が明らかにされた。(詳細は国地方係争処理委員会に対する審査の申出に係る決定と通知(国交省HMより).pdfを参照)
同通知によれば、以下のように判断した。
①本件是正の指示を巡る争論の本質は、普天間飛行場代替施設の辺野古建設の是非に関する国と沖縄県の対立である ②国と沖縄県は、普天間飛行場の返還が必要であることについては一致している ③国と沖縄県は、②実現のための辺野古沿岸域埋立による代替施設建設について、公益的適合性に関し大きく立場を異にしている ④両者の対立する③の論点について議論を深めるための共通の基盤づくりが不十分なまま、一連の手続きが行われてきたことが、本件争論を含む国と国と沖縄県間の紛争の本質的な要因である ⑤このままの状態が続けば、紛争は今後も継続する可能性が高い ⑥これらの状態は、国と地方のあるべき関係からかい離していると、当委員会は判断する ⑦本来、国と地方公共団体は適切な役割分担の下、協力関係を築きながら公益の維持・維持に努めるべきであり、双方の立場が対立するときは、両者が担う公益の最大化を目指して協議・調整すべきである ⑧当委員会の役割は、⑦の観点から国の関与の適否を判断し、国と地方のあるべき関係の構築に資することを予定している ⑨しかし、本件の場合、以上の状況下で、当委員会が本件是正指示の適否を判断しても、それが国と地方のあるべき関係の構築に資するとは考えられない ⑩国と沖縄県は、普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題の解決に向けての最善の道であるとの見解に達した ⑪結論 当委員会は、本件是正指示の適合性については判断しない |
結果は、国地方係争処理委員会は判断を回避した。つまり、この問題は同委員会の判断にはなじまない、判断できない、と判断したのだ。極めて無責任というしかない。
今後の手続きについて、翁長知事は、同委員会の判断を「県として重く受け止める」とし、「委員会の判断を尊重し、県と問題解決に向けた実質的な協議をしてほしい」と国に求めた(報道より)。
翁長知事が誕生し、知事からの協議の申し出を拒み続けたのは国だった。国地方係争処理委員会はその点を指摘したのだ。
菅官房長官や中谷防相は、県が提訴すべきであると発言するが、県は判断に不服はなく、協議を進める方針だ。国が提訴する途は残されているようだが、同じ国の第三者機関である国地方係争処理委員会の判断を無視して提訴するのは、それこそ世間体が悪いに違いない。