大津地裁、原発稼働差止め。関西電力高浜原発3,4号機

2016-03-12

 3月9日、大津地方裁判所(滋賀県大津市)は、稼働中原発、関西電力高浜原発3,4号機の稼働を差し止める仮処分決定をした。稼働中原発を司法が、初めて差し止めたという。

 大津地裁は、決定の理由として以下の事項をあげている。

①高浜原発3,4号機の安全性は関西電力が明らかにすべき。

②福島原発事故により、いかに原発が効率的で、コスト面で経済上優位であるとしても、それによる損害が具現化した時には必ずしも優位であるとはいえない。

③福島原発事故は調査が進んでいない。徹底した原因究明が不可欠だが、関電の主張と立証は不十分。こうした姿勢が原子力規制委員会の姿勢であるなら、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚える。新規制基準と各原発への設置変更許可が直ちに公共の安寧の基礎になると考えることをためらわざるを得ない。

④関電は外部電源の喪失時に備える対応策について、説明されたとは言いがたい。

⑤関電が海底を含む原発周辺を全て徹底的に調査したわけではない。断層が連動して動く可能性は否定できず、「安全余裕」をとったとはいえない。

⑥関電には「事故発生時の責任は誰が負うのか」について明瞭にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、避難計画を含んだ対策にも意を払う必要がある。その点に不合理な点がないかを立証する必要があるが、関電は尽くしていない。

 大津地裁の決定は、これまで指摘されてきた原発への疑問点について指摘しており極めて明瞭だ。

 脱原発以外に日本の進むべき途はない。

 継続中の他裁判にも大きな影響を与えるに違いない。

関西電力高浜原発3、4号機の運転を差止めた大津地裁(山本善彦裁判長)の仮処分決定の要旨は次の通り。

(3月10日付朝日新聞より転載)
■立証責任の所在

 原発付近の住民が原発の運転差し止めを求める仮処分においては、その人格権が侵害される恐れが高いことを立証する最終的な責任は住民らが負う。しかし、原子炉施設の安全性に関する資料の多くは電力会社が保持し、関係法規に従って原発を運転している。それに照らせば、高浜原発3、4号機が安全だと判断する根拠や資料などは関西電力が明らかにすべきだ。

■過酷事故対策

 福島第一原発事故によってもたらされた災禍は甚大であり、原発の持つ危険性が具体化した。いかに原発が効率的であり、コスト面で経済上優位であるとしても、それによる損害が具現化した時には必ずしも優位であるとはいえない。

 関電は福島第一原発の安全対策が不十分だったと主張するが、福島の事故の原因究明は建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ば。同様の事故を起こさないという見地から対策を講じるには徹底した原因究明が不可欠だ。この点についての関電の主張と立証は不十分で、こうした姿勢が原子力規制委員会の姿勢であるなら、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚える。新規制基準と各原発への設置変更許可が直ちに公共の安寧の基礎になると考えることをためらわざるを得ない。

 関電は外部電源の喪失時に備えてディーゼル発電機や蓄電池を置くなど、相当の対応策を準備している。しかし、これらが新規制基準以降になって設置されたのかどうかは不明。新たに義務化された補完的手段とアクシデントマネジメントとして不合理な点がないことについて、相当の根拠と資料に基づいて説明されたとは言いがたい。

■耐震性能、津波に対する安全性能

 関電が海底を含む原発周辺を全て徹底的に調査したわけではない。断層が連動して動く可能性は否定できず、「安全余裕」をとったとはいえない。

 関電は「過去に若狭湾で大規模な津波が発生したとは考えられない」と主張する。1586年の天正地震に関する古文書に、若狭に大津波が押し寄せて多くの人が死亡したとする記載がある。海岸から500メートルほど内陸で津波堆積(たいせき)物を確認したとする報告もある。関電の調査結果によって「大規模津波が発生したとは考えられない」とまで言っていいか、疑問がないとはいえない。

■避難計画

 関電の義務として直接問われるべきものではないものの、原発で事故が起きれば圧倒的な範囲に影響が広がり、その避難に大きな混乱が生じたことが福島の事故で認識された。国主導での具体的な避難計画が策定されることが必要で、避難計画を視野に入れた幅広い規制基準を策定すべき信義則上の義務が国にある。

 こうした状況を踏まえ、関電には「事故発生時の責任は誰が負うのか」について明瞭にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、避難計画を含んだ対策にも意を払う必要がある。その点に不合理な点がないかを立証する必要があるが、関電は尽くしていない。

1票の格差訴訟②〜広島高裁、広島高裁松江支部で選挙無効判決要旨から〜

2013-03-27

 昨年12月の衆議院選挙の無効を争った裁判の判決が出揃った。16の裁判のうち、現行区割りが違憲との判断を下したのが14高裁・支部、違憲状態との判断を下したのが2高裁となった。選挙無効については、14高裁・支部で選挙無効の訴えを認めなかったものの、広島高裁(対象は広島1,2区)は期限付き無効、広島高裁岡山支部(対象は岡山2区)は無効の判断を下した。

 区割りの違憲判断のうえ、選挙無効にまで踏み込んだ両裁判所の判断は極めて厳しい。以下は沖縄タイムスに掲載されて両判決要旨からの抜粋である。 

判断内容 広島高裁 広島高裁岡山支
区割り是正の放置について 本件選挙は憲法上要求される合理的期間内に区割り規定の是正がされず、憲法の投票価値の平等要求に反する状態が悪化の一途をたどっている状況下で施行され、選挙権の制約に伴って生じている民主的政治過程のゆがみの程度は重大。最高裁判所の違憲審査権も軽視されていると言わざるを得ない。 国会は遅くとも11年の最高裁大法廷が言い渡されたときには、区割り規定が違憲状態にあると認識できた。判決から選挙までの634日の期間は・・区割り規定や選挙制度を改定するための合理的な期間として不十分であったとは到底いえない。・・選挙までに改定された選挙区割りを作成し、これに基づき選挙を施行しなかったことは、国会の怠慢であり、司法の判断に対する甚だしい軽視というほかない。
事情判決の法理の適用  もはや憲法上許されるべきではない事態に至っていると認めるのが相当だ。一般的な法の基本原則を適用し、事情判決をするのは相当ではないから、無効と断ぜざるを得ない。

無効判決が確定した一部の選挙区における選挙のみ無効とされ、他の選挙区はそのまま有効とされる結果、区割り規定などの改定を含むその後の衆院の活動は、選挙を無効とされた選挙区選出の議員が選出されないままで行われることになる。しかし、投票価値の平等は最も重要な基準とされるべきで、無効判決が確定した選挙区での効力についてのみ失効することを考慮すると、長期にわたって投票価値の平等に反する状態を認容することの弊害に比べ、無効と判断することによる政治的混乱が大きいとはいえない。

 よって、・・事情判決の法理を適用することは相当ではない。

将来判決効 将来判決効は憲法の投票価値の平等の要求に反している状態の是正を、憲法の予定しない事態を現出させることなく行うための司法権の行使にほかならない。・・区画審は・・12年11月26日以降、是正法に基づく区割りの改定作業を開始・・。選挙の無効を1年以上の長期にわたって放置することは・・適切でない。よって、本件選挙の無効効果は13年11月26日の経過後にはじめて発生することにするのが相当。

 

 いずれの判決も2011年の最高裁判決により現行の区割りが違憲状態にあることを認識しながら是正措置を講じなかった国会の責任を指摘し、しかも、その姿勢について、広島高裁は「最高裁判所の違憲審査権も軽視されていると言わざるを得ない。」と、同岡山支部は「司法の判断に対する甚だしい軽視というほかない。」と厳しく非難している。国会が憲法尊重義務を果たしていないと、厳しく指摘している。

 そのうえで、選挙無効の判断を下しているのだが、是正のあり方について考慮した結果、広島高裁が是正期間を設け、選挙の無効は当該期間の経過をもって効力を発生させるとしたのに対して、同岡山支部は違憲状態を放置すること自体の弊害の方が大きいと判断し、事情判決の法理はもちろん、将来判決効についても採用しなかった。

 昨年12月の衆院選挙について、野田前首相は、現行区割りが違憲状態にあるとの最高裁判決について、首相の解散権を縛るものではない、と発言した。司法軽視も甚だしいとと感じたが、両判決とも、このような違憲状態を放置しつづける国会の姿勢に危機感をいだいた結果の判決といえると思う。

 先の衆議院選挙」一票の格差について、選挙無効の判決が出された。司法の忍耐の限界を超えた判決と言えるのではないだろうか。

 これまで司法は、事情判決の法理により選挙無効判決をためらってきた経緯がある。

 今回の2件の選挙無効判決は司法が憲法が定める三権分立の基本原則に還り、より公正な判断を示す姿勢を明らかにしたものと言える。 

衆院1票の格差、違憲判決が計13 うち2件「無効」(東京経済新聞) 

判決日 裁判所名 判決内容
一票の格差 選挙無効
3.6 東京高裁 違憲 認めず(棄却)
3.7  札幌高裁  違憲  認めず(棄却) 
3.14 仙台高裁  違憲  認めず(棄却) 
名古屋高裁  違憲状態 認めず(棄却)
3.18 福岡高裁 違憲状態 認めず(棄却) 
名古屋高裁金沢支部 違憲  認めず(棄却) 
3.22  高松高裁  違憲  認めず(棄却) 
3.25  広島高裁  違憲  選挙無効(期限付き)
3.26 東京高裁  違憲  認めず(棄却) 
広島高裁松江支部  違憲  認めず(棄却) 
広島高裁岡山支部 違憲 選挙無効
大阪高裁 違憲 認めず(棄却)
広島高裁 違憲 認めず(棄却)
福岡高裁宮崎支部 違憲 認めず(棄却)
福岡高裁那覇支部  違憲  認めず(棄却) 
3.27  仙台高裁秋田支部  違憲  認めず(棄却) 

3月7日:1票の格差 札幌高裁も違憲判決(NHK NEWSWEB)・・去年12月の衆議院選挙は、選挙区ごとの1票の格差が最大で2.43倍と、前回、4年前よりもさらに広がり、弁護士などの2つのグループが「国民の意思を反映した正当な選挙と言えず、憲法違反だ」などと主張して、全国14の裁判所に選挙の無効を求める訴えを起こしています。このうち北海道の選挙区を対象にした裁判の判決が、札幌高等裁判所で言い渡されました。判決で、橋本昌純裁判長は、去年の衆議院選挙について、憲法に違反するという判断を示しました。一方、選挙を無効とすることまでは認めませんでした。・・〜

 3月6日:昨年12月に行われた衆議員議員選挙。一票の格差が是正されずに行われのは憲法に違反し、選挙は無効であるとの訴えに対する裁判が、今日、3月6日東京高等裁判所であった。

 東京高裁は「選挙は憲法に違反する」とのの判断を下した。一方選挙無効の訴えについては認めなかった。

 同様の訴えは8高裁と6高裁支部に訴えられているが、今月27日までにすべての裁判所で判決が言い渡されることになっている。

 「1票の格差」訴訟 東京高裁、憲法違反と判断も選挙無効は棄却(FNN)〜格差が2.33倍あった東京1区について、東京高裁は、「著しい不平等状態が認められ、区割りを是正するまでの合理的期間も過ぎている」としたうえで、選挙は憲法に違反すると判断した。一方、選挙無効の訴えについては退けた。〜

 今日、4月15日付琉球新報に日本国内法が米軍基地には適用されないことを示す、記事が掲載された。

在日米軍基地は基本法の適用外 騒音問題で政府答弁書

 政府は13日、環境基本法に基づく航空機騒音に関する基準が、在日米軍の飛行場にも適用されるかについて、「在日米軍には適用されないが、政府として環境基準に基づき、飛行区分に応じて基準が達成され、維持されるように務める」とする答弁書を閣議決定した。防音工事の実施で、「屋内の環境が相当程度改善されるものと考えている」との見解も示した。 

 ・・・照屋寛徳衆議院議員の質問主意書に答えた。・・

 航空機騒音に関する環境基準を定める日本国内法が米軍基地に適用されないのであれば、沖縄県内の米軍基地運用はすべて米軍の自由裁量ということになる。嘉手納・普天間両基地における昼間はもちろん、夜間深夜早朝における航空機の離発着・エンジン調整等の爆音被害の発生はこれに基づくと合点した。

 日本国内法が米軍基地に適用されないのであれば、基地運用に関する協定等を結び、爆音被害等が発生しないようにすべきである。しかし、嘉手納町等が要求する運用規定の締結については米軍は拒否し続けている。

 平成8年に締結された騒音防止協定(クリックで外務省HMへ)では爆音の軽減について米軍の果たすべき役割が規定されている。しかし、締結から16年が経過しているが、爆音は軽減されるどころか激化している。理由は規定が単なる努力規定になっていることと、協定が順守されているか否かの検証作業が行われていないからである。

 このような状況で沖縄では県民自らが生活防衛のために動き出した。普天間飛行場の辺野古移設反対闘争。嘉手納、普天間両基地に関する爆音訴訟をはじめとする裁判闘争。軍用地主会による軍用地再契約拒否の動き。東村高江のヘリポート建設阻止闘争、そしてオスプレイ配備阻止闘争等である。

 沖縄の民意の動きを止めることはできない。

 沖縄県国頭郡東村高江では、米軍によるヘリパッド建設反対闘争が続いている。その反対闘争を国が訴えていたが、その判決が昨日3月14日に言い渡され、被告一人に請求棄却、残る一人に対し妨害排除請求が認められた。

 その判決要旨が昨日付琉球新報に掲載された。その内容に沿って国の訴提起及び判決の不当性について述べたい。

冒頭の【訴権の乱用】で国の本裁判について次のように述べている。

・・本件訴えは、SACO最終報告に基づく北部訓練場の返還により影響を受ける地域住民との間の法律関係に関する紛争にとどまるものではなく、日米安保条約に基づき、特に沖縄県内に米軍の基地および施設等が多数存在しているという現状を背景とするものであって、司法権の行使によって本件の紛争やその背景にある社会的実態の抜本的解決を図ることができる性質のものとは考え難い・・

 裁判所は国の本件訴訟の目的について疑問を呈している。ヘリパッド建設阻止闘争の背景にある問題を根本的に解決しなければ、問題の解決にはなり得ないと指摘しているのである。この指摘は正しい。根本は普天間飛行場の辺野古移設問題と同じであり、米軍基地の返還という基地負担軽減の裏に潜む沖縄の米軍基地の強化・固定化を図る意図が透けて見える。

 高江区を囲むように6個のヘリパッド建設という計画への反対闘争は、至極当然である。昼夜・深夜・早朝を問わない米軍機による爆音禍に晒されている嘉手納・普天間両基地周辺住民の状況を知る者にとっては当然である。

 深夜・未明に戦闘機等の航空機が離陸する理由を米軍に尋ねると、着陸が夜間になるとパイロットの負担が大きいので、グアム・ハワイ等の基地に帰還する時間が昼間になるように深夜・未明に離陸するという返事だ。夜間着陸となれば付近住民(米国民)への爆音被害が発生する。それら諸々への配慮であろうと推測できる。

 ならば、嘉手納・普天間両基地周辺住民への配慮はないのか。米軍は応える、我々は日米間の取り決めに基づいて基地使用しているにすぎない。日本政府が認めているのだと。

 現岡田副総理は外務大臣をのころ、「米軍基地の使用は、一義的には米軍に委ねられており、こちらからとやかく言うことはできない」と発言していたが、この日本政府の姿勢は現在(いま)も変わらない。

 これらの状況を認めたうえでの、本件訴訟への裁判所に認識は正しい。

 しかしながら、裁判所は、被告が主張する、本件訴えがスラップ訴訟であり、不適法として却下すべきであるとの主張を却下した。極めて不当であると言わなければならない。

 憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と規定している。この「国民の不断の努力」がいかに重要かを思い知らされる。

 敗訴被告は既に控訴すると表明した。控訴審での健闘を期待したい。

 昨年、平成23年1月の沖縄市内の交通死亡事故で、検察審査会の議決を経て起訴された在沖米空軍軍属の男性(23)に対しては2月22日に禁固1年6月の実刑判決が言い渡されたが、ルーフェイス・ラムジー被告人は23日、福岡高等裁判所那覇支部に控訴した。

沖縄市交通死亡事故 米軍属の男が控訴(QAB動画)

米軍属が控訴 沖縄市の交通死亡事故(沖縄タイムス)

米軍属が控訴 交通死亡事故 実刑判決受け(琉球新報)

 昨年、平成23年1月の沖縄市内の交通死亡事故で、検察審査会の議決を経て起訴された在沖米空軍軍属の男性(23)に対して、禁固1年6月の実刑判決を言い渡した。

 在沖米空軍軍属の男性(23)は、自動車運転過失致死罪で送検されたが「公務中」を理由にいったんは不起訴となった。しかし、遺族の申し立てを受けた那覇検察審査会は、2度に渡って起訴相当の判断を下した。その後、那覇地検は不起訴の判断を覆し、昨年11月25日軍属の男性を在宅のまま起訴した。その判決が今日2月22日に言い渡され、那覇地方裁判所は禁固1年6月の実刑判決を言い渡した。

米軍属に禁錮1年6月 那覇地裁(沖縄タイムス)

米軍属に禁錮1年6月 那覇地裁、死亡事故裁判で判決(琉球新報)

米軍属に実刑判決=地位協定見直しの死亡事故−那覇地裁(時事ドットコム)

那覇地裁、米軍属に禁錮1年6月 地位協定見直し初適用(西日本新聞)

  昨年12月21日名古屋高等裁判所(長門栄吉裁判長)判決(クリックで最高裁HMへ)は、非嫡出子の相続分が嫡出子の1/2となっている民法の規定(民法900条4号ただし書)について、条件付きながら、違憲と判断した。
 判決では、同規定の意義について「・・本件規定の立法理由には,尊重し優遇されるべき法律婚が現に又は過去に存在している状態で出生した非嫡出子との関係において一定の合理的根拠となり得る」としている。

 つまり、被相続人が現に結婚しているか、又は過去に結婚しているような場合には、その後に出生した非嫡出子については、同規定の適用を受けるべきとしている。 それを前提としたうえで、今回のように、被相続人が初婚の場合は婚姻前に出生した非嫡出子については同規定が保護しようとする法益は存在しないとし、本件については違憲であると判断し、次のように結論付けている。 

「(本件相続が開始した当時)において,被相続人が1度も婚姻したことがない状態で被相続人の非嫡出子として出生した子について,被相続人がその後婚姻した者との間に出生した嫡出子との関係で本件規定を適用することは,本件規定の前記立法理由をもって正当化することは困難であり,本件規定の適用により生ずる前記のような差異を合理的理由のあるものとして支持するに足りなくなったというべきであるから,上記のような状態で出生した非嫡出子について本件規定を適用する限度で,本件規定は憲法14条1項に違反して無効というべきである。

 しかし、この考え方を適用すると、以下の図③のように同じ父親から生まれた非嫡出子間での相続分の不均衡が生じる可能性が出てくる。
 これを図示すると以下のようになる。
  ①合憲となる場合
      婚姻の嫡出子 → 未婚の非嫡出子
  ②違憲となる場合(本件の例)
      未婚の非嫡出子 → 婚姻の嫡出子
  ③問題となる事例(同じ父親から生まれた非嫡出子間での相続分の不均衡が生じる可能性がある))
      未婚の非嫡出子 → 婚姻の嫡出子 → 未婚の非嫡出子 
相続分     1            1           1/2
 ③のような批判を覚悟でこのような違憲判断を下した裁判所の本旨は理由中の以下の部分に表わされているように思う。

 非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする相続規定は,明治時代の旧民法制定当時に設けられ,戦後の民法改正の際に本件規定として引き継がれた・・が,家族関係や親子関係等に対する国民意識や婚姻関係等の実情は,亡父が死亡した平成16年当時と上記の改正当時とを比較しても,大きく変化している・・。すなわち,わが国は戦後急速に経済発展し,都市化が進むなど,経済的,社会的環境は大きく変化し,また,男女雇用機会均等法の施行など,女性の社会進出の増大などの事情も相まって,核家族化などの少子高齢化に伴い家族形態は変化し・・,近年は事実婚や非婚など男女の共同生活のあり方も一様なものでなくなって・・いることは公知の事実であり,必ずしも法律婚でなくとも,子供を持ち,周囲もそのことを受容する傾向が次第に現れてきている・・。そして,平成8年2月26日の法制審議会総会決定による民法の一部を改正する法律案要綱によれば,嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分と同等とするものとされており,我が国が平成6年に批准した児童の権利に関する条約2条1項には「締約国は,その管轄の下にある児童に対し,児童又はその父母若しくは法定保護者の(中略)出生又は他の地位にかかわらず,いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し,及び確保する。」と定めているなど,嫡出であるか否かなどの生まれによって差別されない制度とすることが求められている・・。

 本裁判は条件付き違憲判決という形態を取っているものの、その本旨は非嫡出子相続分規定が違憲であると指摘するところにあり、立法府による制度改正を促すものとなっていると理解するべきである。

 平成7年7月5日最高裁は同規定について合憲判断(クリックで最高裁HMへ)したが、その際にも大法廷15名の裁判官のうち5名が違憲の反対意見を述べている。

 今回の名古屋高裁判決は上告されることなく確定したという。

 同規定改正の動きが加速されることを期待したい。

 昨年、平成23年1月の沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。那覇地検は不起訴の判断を覆し、11月25日、軍属の男性を在宅のまま起訴したが、第2回公判期日が昨日、2月1日に開かれ、検察官は被害者を死亡させた責任は重いとして、禁固2年を求刑した。

 裁判はこれで結審し、今月22日に判決が言い渡される。

交通死亡事故の米軍属に禁固2年求刑(沖縄タイムス)

公務中軍属に禁錮2年の求刑(NHK沖縄)

沖縄市交通死亡事故 米軍属に禁固2年求刑(RBC)

米軍属事故 検察側、禁錮2年求刑 弁護側は執行猶予求める(琉球新報)

米軍属起訴裁判 結審(OTV)

 昨年、平成23年1月の沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。那覇地検は不起訴の判断を覆し、11月25日、軍属の男性を在宅のまま起訴したが、その初公判期日が今日、1月23日に開かれた。

 被告人の米軍属は起訴事実を認めた。正午のHNKニュースによれば、今日で結審する予定だという。

 この事件では、米軍属の不起訴を受けて、被害が遺族が那覇検察審査会に異議を申し立て、同審査会は起訴相当の議決を行い、これを受けて、昨年11月24日に「日米地位協定における軍属に対する裁判権の行使に関する運用についての新たな枠組みの合意(クリックで外務省HMへ)」がなされ、これにより、不起訴の判断が覆され起訴に至った。

 玄葉外相は今回の合意について「地位協定の適切な実施という観点で、新しい枠組みができたことは一定の前進だ」とその意義を強調するが、地位協定の改定を求める沖縄の民意からすれば、やっと出発地点に立ったというにすぎない。植民地支配的協定内容の改定は沖縄の民意だ。

 日の丸・君が代訴訟については、昨年、最高裁は、学校長による国家斉唱の際の起立斉唱命令は憲法には違反しないと結論付けた。しかしながら、判決には多数の補足意見、反対意見が付され、この判決が、直ちに、国家斉唱の際の起立斉唱命令にお墨付きを与えたわけではなかった。(詳細は本HM記事を参照①日の丸・君が代訴訟上告審判決(平成23年5月30日)について②日の丸・君が代訴訟上告審判決について③日の丸・君が代訴訟上告審判決について②

 今回の最高裁判決は、その職務命令違反に対する処分について一定の歯止めをかけ、個人の思想信条の自由を守る姿勢が示された、といえる。この判決を契機として櫻井裁判官が補足意見で述べているように「自由で闊達な教育が実施」されることが期待される。 

 今回の判決は2つの事件で出されている。

【平成24年(行ツ)第242号】(詳細はクリック 最高裁HMヘ)

 「・・過去2年度の3回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分を受けていることのみを理由に・・懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間の長短にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない・・。」 としている一方で、

 「規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為を非違行為とする複数の懲戒処分を含む懲戒処分5回・・文書の配布等を非違行為とする文書訓告2回を受けていたことを踏まえて・・停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間(3月)の点を含め,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない・・」としている。

【平成23年(行ツ)第263号】(詳細はクリック 最高裁HMヘ)
 「・・以上によれば,過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。」としている一方で

「・・過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に・・懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は,減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない・・」

 判例よれば、東京都(東京都教育委員会)における懲戒処分は次のように定められていることがうかがわれるという。

職務命令違反の行為に対し
1回目 戒告処分
2回目 減給1か月
3回目 減給6か月
4回目以降 停職処分

 櫻井裁判官はその補足意見で次のように述べている。

 最後に,本件の紛争の特性に鑑みて付言するに,今後いたずらに不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかなければならない。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し,これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれるところであり,全ての関係者によってそのための具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるものというべきである。

 今日1月3日付け琉球新報に衝撃的な記事が掲載された。

 1970年に糸満町(現糸満市)で発生した女性れき殺事件。被疑者の米兵は酒酔いのうえ、速度超過運転であったにもかかわらず、米軍法会議において無罪判決が下された。この裁判について検証した米国民政府法務局は、裁判から約3週間後に、判決が誤審であったことを認める報告書を作成していた。しかし、報告書では「この事実を公開するのは生産的でなく、ほぼ確実に判決への批判を高めるだけだ。この複写を日本政府や琉球政府に渡すべきでもない。」として、誤審の事実を隠ぺいすべきであると進言した。さらに「代わりに、琉球人社会に軍法会議と米国の陪審員制度をよく理解してもらう方が有益で、時として無罪判決もあることが受け入れられるよう導くことができる。」として、誤審の事実でさえ、沖縄支配の手段として活用しようとしたのである。

 まさに植民地的支配である。とこ沖縄の基地負担軽減、ろが、上記事件のような実態はけして昔の話ではない。

 昨年1月沖縄市内の交通死亡事故で、飲酒のうえ自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件である。検察審査会の起訴相当の議決を受け、那覇地検は不起訴の判断を覆し、11月25日、軍属の男性を在宅のまま起訴した。

 このような事件を発生させる日米地位協定は、まさに植民地的協定である。沖縄の民意が地位協定の改定を求めているにもかかわらず、日本政府の動きは鈍い。

 普天間飛行場の県外移設をはじめとする沖縄の基地負担軽減の実現を目指して、沖縄の声を発信し続けなければならない。

 今年1月に沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。那覇地検は不起訴の判断を覆し、11月25日、軍属の男性を在宅のまま起訴した。

 初公判は来年1月23日に那覇地方裁判所で行われる予定だが、被告人の米軍属は、裁判権等について争う姿勢を示しておらず、「初公判で結審する可能性もある(12.21沖縄タイムス クリックで同記事へ)」と報道されている。

 被告人が争うとすれば、①裁判権帰属の問題、②起訴事実の内容、③一時不再理の原則等が考えられる。

 ①について:既に、米国は刑事訴追せず、かつ日本の裁判権行使に同意(当HM記事クリックで同記事へ)していることから、報道によれば争わないものと見られる。

 ②について:報道によれば起訴事実を認める見込みのようである。

 ③について:一時不再理の原則とは、同一の犯罪については二重に処罰を受けることはないとの原則(憲法39条)である。今回でいえば被告人が受けた免許停止5年間という処分が既に処罰を受けたことにならないかという問題であるが、報道によればこれについても争わない見込みのようである。

日本国憲法第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 沖縄の民意が日米両政府を動かし、検察の判断が覆った成果は大きい。 今後は地位協定の改定に向けて、さらに、沖縄の民意を発信し続ける必要がある。

 今年1月に沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。那覇地検は不起訴の判断を覆し、25日、軍属の男性を在宅のまま起訴した。

 この事件については、亡くなった男性の遺族が「不起訴」の判断は不当であるとして、4月25日に那覇検察審査会に審査を申し立て、那覇検察審査会は、5月27日、「起訴相当」と議決した。

 これを受けて、通常検察官は3カ月以内に起訴するか否かの判断をすることになるが、那覇地方検察庁は、処分期限を11月25日まで延長していた。

 この間、当時の菅首相が、8月8日の衆院予算委員会で「一人の命が亡くなった中で、日本の常識的感覚からすると、5年間の免停は処罰としてはあまりにも弱いのではないか」と指摘した。さらに、11月10日には、那覇地検平光次席検事が、米軍属が公務中に起こした事件・事故について、日本が専属的に裁判権をもつという考え方もあり得る、との見方を示した。

 那覇地検の判断が注目されていたが、公務中であることを理由とした不起訴の判断が覆され、在宅起訴となった。

 沖縄の民意が日米両政府を動かし、検察の判断が覆った成果は大きい。

 沖縄は、さらに、沖縄の民意を発信し続ける必要がある。

 今年1月の沖縄市内の交通死亡事故で、不起訴となっていた在沖米空軍軍属について、

 11月23日に、米国政府から刑事訴追しないとの通告が日本政府にあり,同日,日本政府から米国政府に対し、裁判権行使への同意を求める要請を行い、11月24日、米国政府からこれに同意する旨の回答があった(外務省HM「日米地位協定における軍属に対する裁判権の行使に関する運用についての新たな枠組みの合意 平成23年11月24日」を参照クリックで同HMへ)

ことにより、那覇地検は今日25日にも米軍属を起訴するものと見られると報道されている。しかし、那覇地検は、明確な起訴の時期、5月27日の那覇検察審査会の「起訴相当」と議決に対する見解を示していない。

 今後の米軍属の事件・事故への対応については、米側が当該軍属を刑事訴追しない場合,日本政府は,米国政府に対し,裁判権の行使に同意を与えるよう要請することができる、とされているものの、米国政府の同意については,米国政府の「好意的考慮」「日本政府から提示された特別な見解を十分に考慮する。」するとされ、あくまでも米国政府の裁量に委ねられており、これまでの運用の域を出ていない。

 玄葉外相は今回の合意について「地位協定の適切な実施という観点で、新し枠組みができたことは一定の前進だ」とその意義を強調するが、地位協定の改定を求める沖縄の民意からすれば、やっと出発地点に立ったという印象だ。

 根本的な解決には程遠い。

 日本国内での米軍属の公務中の犯罪をめぐり、2006年9月1日〜10年に発生した62件中、約4割に当たる27件が米側で懲戒処分なども科せられず「処分なし」となっていたことが12日、明らかになった(11.13沖縄タイムス クリックで同HMへ)。

  軍法会議 懲戒処分 処分なし 合計

2006年

2007年 16
2008年 12 19
2009年 12
2010年 11
合計 35 27 62

                      (表同紙より転載)

  犯罪の種類については自動車事故に伴う業務上過失致死傷が多くを占めるという。事件事故を起こしても裁判どころか懲戒処分も受けてないという状況は正に植民地である。このような状況が許されてはならない。

  今年1月の沖縄市内の交通死亡事故。自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となったが、亡くなった男性の遺族が那覇検察審査会に審査を申し立て、那覇検察審査会は、5月27日、「起訴相当」と議決。処分期限11月25日までに那覇地方検察庁に処分が出される。

  米軍属の男性が起訴されれば、裁判権の所在について裁判所が判断することになる。   

  裁判を通して日米地位協定の不当性が明らかになることを期待したい。 

「逃げ得だ」被害者ら一斉批判(沖縄タイムス)

在日米軍属の犯罪、4割が不処分 裁判権の空白明らかに(朝日新聞)

米軍属犯罪 裁判できず 日本国内「公務中」で不起訴に(東京新聞)

軍法会議ゼロ 日本で裁ける仕組みつくれ(琉球新報:社説)

 今年1月に沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。亡くなった男性の遺族が那覇検察審査会に審査を申し立て、那覇検察審査会は、5月27日、「起訴相当」と議決。これを受けて、通常検察官は3カ月以内に起訴するか否かの判断をすることになるが、那覇地方検察庁は、処分期限を11月25日まで延長した。

 この事件に関して、那覇地検の平光次席検事は10日の定例記者会見で以下のように述べたと報道されている。(11.11沖縄タイムスより抜粋)

 那覇地検の平光信隆次席検事は・・米軍属が公務中に起こした事件・事故について、「日本が専属的に裁判権をもつという考え方もあり得る」との見方を示した。・・

 ・・平時に米軍属を軍法会議で処罰できないとした米連邦最高裁判決や、韓国では裁判権が行使された事例を挙げた。裁判権行使の「最終的な判断は裁判所にある」と強調し、地検側は外務省などの関係機関と懲戒裁判権の解釈について、処分期限の25日までに慎重に検討して判断するとした。

 また、米軍側が同軍属の運転禁止5年の処分を「米軍としては重い」と地検に回答していると語った。・・

 ・・外務省は同軍属の処分について、「米軍が交通裁判という形で懲戒の裁判権を行使した」とし、同裁判の形態などは「特に聞いていない」と答えている。

 那覇地検の方針は、記事にも示されているように、裁判権行使の「最終的な判断は裁判所にある」となる可能性が高い。そうなれば、米軍属は起訴される。そして、米国からの裁判権行使の主張がなされれば、起訴の相当性についても裁判所が判断することになる、ものと考えられる。

 記事の中で気になるのは外務省の見解である。「米軍が交通裁判という形で懲戒の裁判権を行使した」とし、同裁判の形態などは「特に聞いていない」と答えている。外務省は裁判権が行使されたとの見方を示しているが、どう考えてもおかしい。何故、裁判権が行使されたと判断することができるのか、その理由を問いただしたい。

 11月25日に期限を控えた那覇地検の判断に注目である。

 初公判を終えた小沢氏の記者会見を視たが、その主張は、これまでどおり身の潔白を示したものだった。

 今回の強制起訴については、検察の小沢一郎個人を狙った違法な捜査によって収集された証拠によりなされた検察審査会の誤った判断である、と断定し、即時中止すべきであると述べる一方、検察捜査の違法性を厳しく糾弾し、我国憲政史上に残る最大の汚点とまで表現した。

 更に、最大の争点となっている4億円の出所については、自分のお金である、とし、1年にわたる検察の強制捜査を受けたのだから検察に聞いてくれ、と述べ詳細を明らかにしなかった。

 国会での説明責任についての記者の質問に対して、小沢氏は、国権の三権のひとつである司法の場で裁かれているときに、国会の場で事件について釈明することは疑問であると述べた。しかし、小沢氏自身も述べるとおり、国会議員は選挙によって国民からの負託を受けている。ならば、国会の場で国民に説明することは議員としての責任を果たすことに他ならない。

 ただ、今回の検察審査会の判断が、小沢氏の容疑について立証されているという判断ではなく、立証されているのか否か裁判所への判断を委ねたいという理由で起訴相当の判断がなされたというのは問題を含んでいる。

 東京第5検察審査会の議決の要旨には、「本件事案については、被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。」とし、本件事案についての判断を裁判所に委ねた形になっている。

 本来の刑事事件の構図は検察官が起訴し、裁判所はその起訴内容について判断することになるが、今回の小沢氏事件については、裁判所に起訴そのものの相当性についても判断を求めているようにも見える。

 その意味において、今回の裁判の結果如何では、検察審査会制度の在り方についても議論が起こる可能性がある。

 裁判所が、起訴事実についてどのような判断をくだすかはもちろん、検察審査会の起訴相当判断そのものについてもどのような判断をくだすのか注視したい。

 今年1月に沖縄市内の交通死亡事故で、自動車運転過失致死罪で送検された在沖米空軍軍属の男性(23)が「公務中」を理由に不起訴となった事件。亡くなった男性の遺族が不起訴を不服として那覇検察審査会に審査申し立て、那覇検察審査会は、5月27日、「起訴相当」と議決した。

 検察審査会の「起訴相当」の議決を受けて、検察官は3カ月以内に起訴するか否かの判断をすることになるが、那覇地方検察庁は、処分期限を11月25日まで延長すると発表した。理由について、平光次席検事は「現段階で(米側の)裁判権行使が確定できていない」として補充捜査が必要と述べた。(本日付け沖縄タイムスより)。

 期限の延長については、検察審査会法41条の2第2項に規定されており、再度の延長を認められていない。

 米側が同軍属に下した処分は免許停止5年間とされている。これに対して菅首相は、今月8日の衆院予算委員会で「一人の命が亡くなった中で、日本の常識的感覚からすると、5年間の免停は処罰としてはあまりにも弱いのではないか」と指摘した。

 免許停止処分は日本で言えば一般的には行政処分であり、裁判権が行使されたのかについては極めて疑問である。

 那覇地検の判断に注目したい。 

 尖閣諸島沖での中国船衝突事件で、不起訴処分になっていた中国人船長に対して、今月21日に那覇検察審査会が2度目の起訴相当の議決をしたが、28日、那覇地方裁判所は起訴する検察官役の弁護士2名(指定弁護士)を指定した、と報道されている。

 今後は、指定弁護士が、中国人船長を裁判所に起訴することになる。

 起訴を受けて、裁判所は、起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない(刑訴法271条1項)。公訴提起日から2カ月以内に送達されないときは、公訴の提起はさかのぼって効力を失う(同2項)。そして、公訴の提起が効力を失ったときは、裁判所は公訴を棄却しなければならない(同法339条1項1号)。 

 報道等においても、中国に帰国した船長への送達の確保が問題視されている。送達の責任は裁判所が負うことになるが、所在調査は指定弁護士が行っており、公判維持のためにも、指定弁護士の協力が不可欠である。

 報道等では、公判の維持は困難であるとの見方が示されているが、裁判所、指定弁護士等の努力に期待したい。

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