日の丸・君が代訴訟については、昨年、最高裁は、学校長による国家斉唱の際の起立斉唱命令は憲法には違反しないと結論付けた。しかしながら、判決には多数の補足意見、反対意見が付され、この判決が、直ちに、国家斉唱の際の起立斉唱命令にお墨付きを与えたわけではなかった。(詳細は本HM記事を参照①日の丸・君が代訴訟上告審判決(平成23年5月30日)について②日の丸・君が代訴訟上告審判決について③日の丸・君が代訴訟上告審判決について②)
今回の最高裁判決は、その職務命令違反に対する処分について一定の歯止めをかけ、個人の思想信条の自由を守る姿勢が示された、といえる。この判決を契機として櫻井裁判官が補足意見で述べているように「自由で闊達な教育が実施」されることが期待される。
今回の判決は2つの事件で出されている。
【平成24年(行ツ)第242号】(詳細はクリック 最高裁HMヘ) 「・・過去2年度の3回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分を受けていることのみを理由に・・懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間の長短にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない・・。」 としている一方で、 「規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為を非違行為とする複数の懲戒処分を含む懲戒処分5回・・文書の配布等を非違行為とする文書訓告2回を受けていたことを踏まえて・・停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間(3月)の点を含め,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない・・」としている。 |
【平成23年(行ツ)第263号】(詳細はクリック 最高裁HMヘ) 「・・過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に・・懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は,減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない・・」 |
判例よれば、東京都(東京都教育委員会)における懲戒処分は次のように定められていることがうかがわれるという。
職務命令違反の行為に対し | |
1回目 | 戒告処分 |
2回目 | 減給1か月 |
3回目 | 減給6か月 |
4回目以降 | 停職処分 |
櫻井裁判官はその補足意見で次のように述べている。
最後に,本件の紛争の特性に鑑みて付言するに,今後いたずらに不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかなければならない。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し,これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれるところであり,全ての関係者によってそのための具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるものというべきである。 |