判決に付された補足意見及び反対意見の主要な部分についてまとめてみた。
補足意見等の内容を見ると、今回の判断が合憲とされたものの、この判断が直ちに教育現場の混乱を回避するものではなく、現場の自助努力を求めていることがわかる。処分の妥当性の判断等、教育現場の混乱回避に向けた努力を求めている。これらの合憲判決が、直ちに、国家斉唱の際の起立斉唱命令にお墨付きを与えたわけではない、ことが確認できる。
23.5.30第2小法廷補足意見については当HM記事:日の丸・君が代訴訟上告審判決(平成23年5月30日)についてを参照。
補 足 意 見 |
23.6.6判決(第1小法廷) 金築裁判官の補足意見:もっとも、教職員に対する職務命令に起因する対立であっても、これが教育環境の悪化を招くなどした場合には、児童・生徒も影響を受けざるを得ない・・。・・全ての教育関係者の慎重かつ賢明な配慮が必要とされることはいうまでもない。 |
23.6.14判決(第3小法廷) 那須裁判官の補足意見:上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約があるとしても、・・入学式ないし卒業式等という・・重要な教育活動を効果的に実施し、その成果を教育の受け手である生徒らに十分に享受させるという公共の利益に沿うものである。その目的と効果を比較考慮しても、その制約に合理性がないとはいえず、上告人らはこれを甘受すべき・・である・・ 岡部裁判官の補足意見: 思想及び良心の自由が憲法上の保障であるところからすると、その命令が憲法に違反するとまではいえないとしても、その命令の不履行に対して不利益処分を課すにあたっては慎重な衡量が求められる・・。
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反 対 意 見 |
23.6.6(第1小法廷)宮川裁判官反対意見憲法は少数者の思想及び良心を多数者のそれと等しく尊重し、その思想及び良心の核心に反する行為を行うことを強制することは許容していないと考えられる。・・上告人らに起立斉唱行為を命ずる本件各職務命令は憲法審査の対象となる。・・その審査は厳格な基準によってなされるべきである・・原判決を破棄し差し戻すことを相当とする。 |
23.6.14(第3小法廷)田原裁判官反対意見本件各職務命令と憲法19条との関係を検討するにあたっては、「起立行為」と「斉唱行為」とを分けてそれぞれにつき検討すべきものと考える・・「起立命令」に限っていえば、・・間接的な制約となる面はあるものの、職務命令の目的及び内容並びにその制約の態様等を総合的に較量すれば、・・必要性及び合理性を有することを是認できる・・。国家を「唱う」ことを職務命令をもって強制することは、・・思想、信条に係る内心の核心的部分を侵害するものであると評価されうるということができる。・・原判決を破棄し差し戻すことを相当とする。 |