北朝鮮問題の行方は〜崔天凱駐米中国大使が語る北朝鮮、日本、そしてアメリカ・・(フォーリン・アフェアーズ・リポート6月号)より〜
引き続き、フォーリン・アフェアーズ・リポートの今月6月号に掲載された“崔天凱駐米中国大使が語る北朝鮮、日本、そしてアメリカ”からの紹介だ。
北朝鮮の核開発等の強硬姿勢は近隣諸国の悩みの種となっている。その北朝鮮の後見人とも言われてきた中国の姿勢は、近年厳しさを増している。この点についての崔天凱駐米中国大使の指摘も興味深い。
まず、北朝鮮情勢について次のように述べている。
・・中国の朝鮮半島政策の基本は三つの要素で組み立てられている。第1に、われわれは(朝鮮半島の)安定を支持している。第2に朝鮮半島の非核化を望んでいる。第3に、われわれは平和的な方法で問題を解決したいと考えている。この三つの要素は密接に関連しており、どれか一つを優先して他の二つを犠牲にすることはできない。 |
朝鮮半島の安定を求める姿勢については、中国も近隣諸国と同様の認識のようだ。
ジョナサン・テッパーマン フォーリン・アフェアーズ誌副編集長(質問者)が、 「北京は、・・ピョンヤンの行動に苛立ち、圧力を行使することに積極的になっているようにみえる。・・」との指摘に対しては、次にように回答している。
・・朝鮮半島が極度の混乱に陥ったり、半島で武力衝突が起きたりすれば、中国の国家安全保障利益に大きな衝撃がはしる。・・つねにこの点に配慮しなければならない。・・ |
北朝鮮情勢の不安定さが中国にとって安全保障上の脅威であると指摘し、配慮が必要であるとする。その一方で、中国と北朝鮮の関係については、次のように述べその緊密さを強調している。
・・われわれは、北朝鮮の核開発には反対しているし、北朝鮮もこの点は明確に理解している。彼らは、中国が北朝鮮の核開発プログラムを決して受け入れないことを理解している。われわれは核実験にも反対している。だからこそ、国連安保理による北朝鮮制裁に賛成した。 |
中国が北朝鮮の核開発に反対していること、そしてその中国の意思を北朝鮮が理解しているとの指摘は驚きだ。ならば、なぜ北朝鮮は強硬姿勢を改めないのか。
北朝鮮の姿勢が改まらなければ、より強硬な措置をとるのか、問われると、次のように述べている。
非核化と安定化という目的を実現するのに必要なあらゆる措置をとるつもりだ。だが、われわれが何をするのかが、長期的目的にどのように作用するかも考えなければならない。朝鮮半島(の緊張)をさらにエスカレートさせるような措置をとれば、われわれの長期的目的の実現が阻害されることになる。 |
中国は、朝鮮半島の非核化・安定化こそが中国の国益につながるとの立場を明確にし、その実現のためにあらゆる措置をとる、と明言しているが、朝鮮半島の非核化・安定化は日本・韓国、米国等も望んでいる。
朝鮮半島の不安定化は近隣諸国のみならず、多くの国々の国益を損なうことになる。北朝鮮を取り巻く多国間の協議により解決策を探る以外に途はなさそうである。
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ところで、日本の最大の懸案である、北朝鮮による日本人拉致の問題については、同記事では触れられていない。この問題の解決なくしては朝鮮半島の安定化もない。報道によれば、北朝鮮の核開発問題等に目を奪われる中で、拉致問題への米国を中心とした世界の関心が薄れつつあるとの危機感の中で、飯島氏の訪朝に踏み切ったとの観測も示されている。拉致問題については日本が主導的役割を果たし、解決に向けて取り組む必要がある。
中国の基本的立場でもある①朝鮮半島の安定②朝鮮半島の非核化③平和的方法による問題解決、の立場に立ちつつ問題解決に向け、日本が主導することが必要だ。
例えば、北朝鮮による拉致被害国合同の会議を開催し、世界の意思として北朝鮮に拉致問題の解決を迫るのである。
拉致問題の解決については、日本が主導するという意思と覚悟が必要だと思う。