普天間騒音訴訟(差止を求めない)判決の意義〜爆音被害は第1次普天間爆音訴訟時と「大きく異なるところはない」と普天間の公共性は「限られた一部の少数者の犠牲」で成り立っている〜
6月12日、普天間騒音訴訟(差止を求めない)判決が言い渡された。那覇地方裁判所沖縄支部の日景裁判長(藤倉裁判長代読)は判決の中で以下のように指摘した。(以下は6月12日付沖縄タイムス掲載の判決要旨から抜粋した)
普天間騒音訴訟判決要旨【被害の性質と内容】 普天間の騒音発生は、第1次爆音訴訟控訴審判決の口頭弁論終結時と現在で大きく異なるところはない。・・(W値)75の区域の住民は大きな騒音に、同80の区域の住民はかなり大きな騒音に、高い頻度でさらされていたと推認できる。・・ 【普天間の公共性】 普天間の共用はわが国の安全や極東における国際平和に寄与するもので、国民全体の利益につながる公共性を有している。・・ ・・普天間の公共的利益は、限られた一部少数者が特別の犠牲を払うことによって初めて実現し得る。公共性のみをもって原告らが被害を受忍すべきものとはできない。・・ |
判決内容は、国とって極めて厳しい内容になっている。
まず、被害状況について、2010年に言い渡された普天間爆音訴訟控訴審判決時と比較して「大きく異なるところはない」と指弾した。つまり、これまで、爆音被害の軽減策がまったく取られてないと指弾したのだ。
2010年普天間爆音訴訟控訴審判決で福岡高裁那覇支部は「司法判断が3度も示されているのに、抜本的な対策を講じていない上、自ら定めた環境基準も達成していない」とそれまでの国の姿勢を厳しく非難した。それから5年が経過した現在、那覇地裁沖縄支部は現状はまったく変わっていない、と指弾したのだ。この指摘を被告国はどう受け止めるのか。
さらに、普天間飛行場の公共性を認めながらも、その公共性は、原告ら「限られた一部の少数者の犠牲」によって成り立っていると厳しく指摘した。
裁判所のいう「限られた一部の少数者の犠牲」とは何を指すのか。沖縄県内の軍事基地は普天間飛行場だけではない。極東最大の嘉手納飛行場を含め、多数の米軍・自衛隊基地が存在する。裁判所のいう「限られた一部の少数者の犠牲」とは沖縄の現状そのものを指している。私はそう理解した。
今回の判決の損害額の算定は、結果として、第1次普天間爆音訴訟一審と控訴審の間の数字となっている。しかし、今後、裁判所が国に対して、原告らの被害救済を求めるのであれば、損害額を引き上げ、経済的に国を追い詰めることも必要になるだろう。
判決結果を受けて、井上沖縄防衛局長は「普天間飛行場の早期移設、返還に努力する・・」と発言したが、判決の趣旨をまったく理解していない。普天間の辺野古への移設は「限られた一部の少数者の犠牲」を移設することに他ならない。
国は判決の趣旨を理解し、辺野古新基地建設を断念すべきだ。
さらに、現在進行中の第2次普天間爆音訴訟、第3次嘉手納基地爆音差止訴訟の両原告団は、みずからの訴えに確信を持ち、さらに被告国を追い詰めなければならない。
訴 訟 名 | 判決日 | 一人当たりの損害額 | 低周波損害認定 | 最低賃金(時給) | |
第1次普天間爆音訴訟(一審) | 2008.6.26 | W値75 | 日額100円(月額約3000円) | × | 627円 |
W値80 | 日額200円(月額約6000円) | ||||
第1次普天間爆音訴訟(控訴審) | 2010.7.29 | W値75 | 日額200円(月額約6000円) | ○ | 642円 |
W値80 | 日額400円(月額約12000円) | ||||
第2次普天間騒音訴訟(一審) | 2015.6.11 | W値75 | 日額150円(月額約4500) | × | 677円 |
W値80 | 日額300円(月額約9000円) |