第四次厚木爆音訴訟控訴審判決 自衛隊機の夜間飛行差止及び将来に渡る損害賠償請求等を認容
今日、7月30日に言い渡された第四次厚木爆音訴訟の控訴審判決。東京高裁は、1審判決で認容された自衛隊機の夜間飛行差し止めを認容(行政訴訟)し、さらに爆音による損害賠償について将来(期限付き)請求も認容した。さらにはフィリピン人原告について、1審で請求を認められなかったが相互保証が認められるとして請求を認容した。
これまで認められなかった将来請求について、期限付きではあるものの認容されたことは、1審に続き画期的な判決だ。東京高裁は、「厚木飛行場周辺の使用及び共用の違法性が少なくとも約40年にわたって継続している」として「今後も相当の蓋然性をもって、同程度の航空機騒音の継続が見込まれる」こと。さらに「騒音被害の軽減が直ちに見込まれない」と断言し、その被害態様は「一時的な騒音減少といった程度」くらいでは「騒音状況の変化が生ずる可能性は相当低い」とし、将来請求を認容した。
同様の国の不作為を糾弾する指摘は平成22年7月言渡しの普天間飛行場控訴審判決(福岡高裁那覇支部)でも出されている。同支部は「国は近接する嘉手納基地で騒音被害が違法な水準に達しているとの司法判断が3度も示されているのに、抜本的な対策を講じていない上、自ら定めた環境基準も達成していない」
自衛隊機の差止は認容しながら、米軍機の差止が認められない点は極めて不満であるが、少なくとも住民被害の実態について裁判所が認めている事実は動かない。
今後の爆音訴訟への好影響を期待した。
以下は判決要旨からの抜粋である。
【民事訴訟】 将来の損害賠償請求について ・・これまで厚木飛行場周辺の使用及び共用の違法性が少なくとも約40年にわたって継続していることに鑑みれば、今後も相当の蓋然性をもって、同程度の航空機騒音の継続が見込まれる。ところで、厚木飛行場に駐留する米海軍第5空母航空団は平成29年頃に岩国飛行場へ移駐する計画であり、・・移駐後は・・相当の変化が見込まれる。 ・・・また、第1審原告らの客観的な居住状況の推移からして、平成28年12月末までの約1年8か月間に限れば、そのほとんどの者が引き続き厚木飛行場周辺の75W以上の地域での居住を継続すると推認される。 ・・・本件特有の事情として、厚木基地爆音差止訴訟における3度の確定判決の存在とその中で違法性等に係る裁判所の考慮事由や判断枠組みが明確にされている・・。 ・・航空機騒音の状況に関しては騒音被害の軽減が直ちに見込まれないだけでなく、・・一時的な騒音減少といった程度では請求権の内容に影響を及ぼす騒音状況の変化が生ずる可能性は相当低い。・・ ・・転居等する者の割合は相当低いと見込まれること、将来請求に係る手続きについても代理人弁護士において必要な確認を・・期待・・できること、居住事実は住民票に基づいて確認することが可能であり、・・国の・・過重な負担を課すものではない・・事情等に加え、3度にわたる確定判決の経緯に鑑みた当事者間の公平の観点をも考慮すれば、事情変動の証明責任を国に課すことが格別不当とはいえない。・・・ よって、平成27年5月15日から平成28年12月31日までの約1年8か月間の賠償請求に限り、将来請求のとしての請求権が認められる・・・。 |