井上国交相の執行停止決定は違法だ①〜沖縄防衛局(国)には行政不服審査法上の申立人適格なし。執行停止決定書からも明らか〜
10月27日、井上国交相は、「翁長知事の埋立承認取消し」の効力を停止した。
沖縄防衛局(国)は行政不服審査法上の申立人となれるかについて、井上国交相は、決定書で以下のとおり判断を示したが、その判断は論理に飛躍があり、明らかに誤りだ。以下その理由について述べる。(末尾決定書当該部分抜粋を参照)
決定書冒頭で、一般論として国は行政不服審査法の申立人たる資格はない、とする。正論だ。
しかし「固有の資格」としての相手方ではなく「一般私人と同様の立場において処分の相手方となる場合」であれば、申立人の資格ありとする。行政不服審査法上、基本的には、国は申立人にはなれないが、「一般私人と同様の立場」であれば、例外として申立人になれるという判断だ。
そして、「一般私人と同様の立場」の判断に際しては、「当該処分を定める法令の規定に基づき判断されるべき」であり、「当該機関・・が処分を受けるに至った目的や経緯と言った個別の事情に基づき判断されるべきものではない」とする。しかし、この点がまず誤りだ。
行政不服審査法上、基本的には、国は行政不服審査法の申立人にはなれない。認められるのはあくまでも例外だ。しかも、国交相のいう「一般私人と同様の立場」という例外は条文にも規定されていない。法解釈によるものにほかならない。法令の規定のみで判断されるのであれば、一般原則に戻り、国は申立人にはなれないことになる。
国の申立人資格を判断する際は、当該処分を定める法令の規定に基づくことはもちろんのこと、処分を受けるに至った目的や経緯と言った個別の事情も当然に判断材料されなければならない。例外を認めるか否かの判断だから当然だ。この点において井上国交相の判断は根本的に誤っている。
さらに、国交相は、公有水面埋立法の「免許」「承認」の文言の違いについて論じて私人性を強調する。「免許」が必要なのは「私人」だけではない。「地方公共団体」も同じだ。国民でない地方公共団体は行政不服審査法上の申立人にはなれない。「免許」「承認」の文言の違いについて論じる意味はない。
その上で、「国」は「私人」と同じ公有水面埋立法の審査を受けなければならないから「一般私人と同様の立場」とする。審査基準が同じなのは法の規定であり、それを根拠にして、行政不服審査法上の国の私人性という例外を導くのは論理の飛躍であり認められない。
ちなみに、このような解釈が認められれば、国だけでなく地方公共団体にも申立人の地位が認められることになり、行政不服審査法の趣旨である「・・国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」を損なうことになる。
以上のとおり、国に行政不服審査法上の申立人としての地位を認めた判断は、明らかに誤りだ。したがって、井上国交相の執行停止決定は違法だ。
翁長知事は、あらゆる法的手段を通じて、井上国交相の判断の誤りを追及すべきだ。
(以下は決定書からの当該部分の抜粋) ・・一般に、国の機関又は地方公共団体・・はその機関に対する処分については、当該機関・・がその「固有の資格」において処分の相手方となる場合には、不服申立てをすることはできないが、一般私人と同様の立場において処分の相手方となる場合には、不服申立てをすることができると解されている。 そして、当該機関・・がその「固有の資格」において処分の相手方となっているか否かは、当該処分を定める法令の規定に基づき判断されるべきものであって、当該機関・・が処分を受けるに至った目的や経緯と言った個別の事情に基づき判断されるべきものではない。 そこで、法の規定をみると、法上、埋立てを行おうとする者は、私人又は地方公共団体においては都道府県知事の「免許」・・を、国においては都道府県知事の「承認」・・を受けなければならない。ここでいう「免許」及び「承認」は、その文言は異なるものの、いずれもそれを受けなければ適法に埋立てを行えないこと、また、同じ審査基準・・によって都道府県知事の審査を受けることに鑑みると、申立人が国の「固有の資格」において本件承認を受けたものと解することはできない。 したがって、申立人は一般私人と同様の立場において処分の相手方となるものであるから、審査法に基づく不服申立てをすることができる・・。』 |