井上国交相の執行停止決定は違法だ②〜沖縄防衛局(国)主張の執行停止要件は存在しない〜
10月27日、井上国交相は、「翁長知事の埋立承認取消し」の効力を停止した。
沖縄防衛局(国)は「重大な損害を避ける緊急の必要性」があるとするが、必要性はない。それどころか、埋立事業執行により、自然環境に回復できない損害が発生すること、さらに新基地建設は名護市辺野古周辺はもちろん、やんばる地域に基地被害を発生させることになる。国交相の効力停止の判断は間違っている。理由は以下のとおりだ。
国は、執行停止の必要性について、埋立承認取消しにより、以下の2点について不利益が生じると主張する。
①埋立事業停止により普天間飛行場周辺に居住する住民等が被る航空機による事故等に対する危険性及び騒音等の被害が継続すること。
②米国との信頼関係や日米同盟に悪影響を及ぼす可能性があるという外交・防衛上の不利益が生じること。
国交相はこの主張を認めて、執行停止を決定したのだが、あまりにも稚拙で閣内の出来レースであったことが分かる。
①については、埋立事業の継続により普天間飛行場周辺住民の基地被害が無くなることはない。米軍は辺野古新基地建設が終了した後に普天間を移設すると明言しており、その時期も日米合意では2022年以降とされているだけで、明確な移設時期も示されていない。この状況下で辺野古埋立事業の停止が、普天間飛行場周辺住民の基地被害除去を妨げている判断することはできないはずだ。
②については、この主張はまったく成り立たない。辺野古埋立停止が「米国との信頼関係や日米同盟に悪影響を及ぼす可能性がある」とする。しかし、米国は「辺野古は日本の国内問題だ」と再三再四指摘している。辺野古埋立停止が日米関係に影響を及ぼすことはない。その証左に国交相決定書にも「可能性がある」と記載するのみで、悪影響を及ぼすとは書いていない。
さらに、「悪影響を及ぼす可能性があるという外交・防衛上の不利益が生じる」としているが、「可能性がある」というだけで「悪影響」は発生していない。にもかかわらず、「外交・防衛上の不利益が生じる」と断じることができるのか。可能性があるという仮説をもって生じるのはやはり仮説である。正しくは、悪影響を及ぼす可能性があるという外交・防衛上の不利益が生じる可能性がある、とすべきだ。
結局、国の②の主張は成り立たない。
他方、処分庁である県は、本件事業実施区域の環境が回復不可能な被害を被るとして、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」という要件に該当し、埋立承認取消しは正当なものだと主張している。
これに対して国交相は、この要件は、国が取消処分によって被る損害と比較考量して判断すべきとし、国の①の主張は損害が普天間基地周辺住民の生命・身体に危険を及ぼすものを含むこと等を踏まえると、これと比べて県の主張する環境への影響の防止が優先するものとは認められないとして、この主張を退けた。
しかし前記「①については」で指摘したとおり、辺野古埋立事業継続が普天間基地周辺住民の基地被害・危険性除去につながらない(いつ基地被害・危険性の除去が実現されるのか分からない)ことから、国交相の判断は誤りである、ということになる。
以上のとおり、翁長知事の埋立承認取消しに対する、井上国交相の執行停止決定は違法だ。
翁長知事は、あらゆる法的手段を通じて、井上国交相の判断の誤りを追及すべきだ。
(1)・・本件申立てが・・執行停止をしなければならない場合に該当するか否かを検討する。 (2) 本件承認取り消しによって、申立人が行う本件事業の継続が不可能となるため、普天間飛行場周辺に居住する住民等が被る航空機による事故等に対する危険性及び騒音等の被害の継続や、米国との信頼関係や日米同盟に悪影響を及ぼす可能性があるという外交・防衛上の不利益が生じ、これらの重大な損害を避ける緊急の必要性があるとする申立人の主張は相当であると認められる。 したがって、・・・効力を停止しなければならない場合に該当する。 (3) 他方、処分庁は、本件事業実施区域の環境が回復不可能な被害を被るとして、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」という要件に該当する旨、主張する。しかしながら、本要件は、申立人が処分によって被る損害と比較考量して、なお、公共の福祉を保護する必要があるかという見地から判断されるところ、申立人の前記(2)の損害が人の生命・身体に危険を及ぼすものを含むこと等が踏まえると、これと比べて処分庁の主張する環境への影響の防止が優先するものとは認められないlことから、本要件に該当しない。 |