11月13日の日米首脳会談により普天間基地移設問題解決への行程表が決定した。出されるべき条件は揃い、協議はワーキングループに委ねられることになった。そこで、まず現状分析から始めよう。
(1)米国は従前案の辺野古移設案が最善でありこれを実行するよう求めている。この問題について、米国の現状には変化はない。
(2)それにひきかえ日本国内状況の変化は著しい。
①普天間の国外・県外移転を掲げた民主党政権が誕生した。しかも国民の圧倒的支持による政権交代が実現した。
②①にもかかわらず、選挙から2,3ヶ月も経過しないうちにこの問題についてトーンダウンする新政権の姿に国民が懐疑的になっている現実がある。救われるのは鳩山首相が毅然としていることである。日米首脳会談後の記者会見においても、鳩山首相は①の事実をオバマ大統領に伝えたことを明らかにした。ワーキングループでの交渉における日本側のベースがここにあることを伝えたこと、そしてその事実を、国民の前に明らかにした意義は大きい。
③しかし、ワーキングループの米国側メンバーを見る限りは日本の現状に理解を示しそうな人物は見当たらないと報道されている。交渉は厳しいものが予想されている。
④交渉の前に、嘉手納統合案を模索する岡田外相は沖縄県を訪問し、この問題について説明するとしている。県外・国外移転を求める沖縄の民意を再確認するための来県か、それとも、単なるアリバイ作りなのか、その真意は不明だが、面会に応ずる各首長の対応は厳しいものになる。
(3)これらの状況において、県内の政治状況も変化しつつある。
①自民党県連も民主党公約である普天間基地の県外・国外移転へ方針を転換した。これを受けて県議会において、与野党一致による普天間基地の県外・国外移転を求める決議の採択も間近である。
②これに呼応するかのように、島袋名護市長も辺野古受入れ方針の変更を示唆する記者会見を行い、辺野古受入れは「苦渋の決断」であり「基地誘致」ではないとの基本姿勢を明らかにした。
戦後60年を経て、基地問題解決に向けてこれだけの条件が整ったことがかつてあっただろうか。基地問題については、常に県内保守・革新の対立の構図の中で処理されてきた。それが、今回は違う。県全体が一つの方向に向かって基地問題を解決しようとしている。基地問題解決に向けてこれだけの条件が整うのは最初で最後になるに違いない。
これから問われるのは普天間基地の県外・国外移転が本当に実現するのか否かの可能性ではなく、基地問題解決を求める県民の意思が明白であることを主張し続けることである。平たく言えば、県民が本気で普天間基地の県外・国外移転を求めており、ひいては基地問題の解決を求めていることを示し、示し続けることである。
仲井真知事に申し上げたい。これまで全く進まなかった基地問題の解決に向けた道筋が今回、正に開くことができるか否かの大事な局面にある。知事の方針転換がワーキングループの交渉にこれまでと違った条件を提示することになる。知事の英断に期待する。二度と後悔しないために。