今年8月の総選挙により、沖縄の基地をめぐる状況は大きく変わった。正確に言えば、公示から選挙までの30日間で変わったと言える。
当時の鳩山民主党代表の発言に県民は勇気づけられたと言っても過言ではない。普天間飛行場の名護市辺野古への移転計画に待ったをかけた発言、それに続く民主党候補による辺野古移設見直し発言の数々に、政権が変われば沖縄の基地問題は大きく動くと誰もが確信した。
自民党政権下での基地政策については、当時の幹部の発言を聞けば沖縄への思い入れの深い面々がいたことは確かである。去る大戦で本土防衛のために防衛線として唯一の地上戦が展開され、その後は米国の占領下におかれ、1972年に本土復帰されるまで米国の施政権下におかれた。日本であって日本でない期間が27年間も続いた。ところが、本土復帰を果たしたものの依然として米軍基地は存在し続けている。このような沖縄の現状について、自民党幹部からは、これまでの沖縄の苦悩に配慮し、基地負担を軽減しなければならないとの発言は相次ぐものの、現実は何も変わらない。そこには、日米安保条約に基づく日米関係の安定が最重要課題となっており、金で解決できるものは金でとの思想があった。湯水のように注がれる基地関連予算?それでも沖縄の低所得状況は変わらない。失業率も全国平均の2倍近い数字である。沖縄の努力が足りないと指摘する意見もあるが、本島の中央部の利用価値の高い土地は基地となり、その割合も2割近くにのぼる。自由な土地利用ができない状況の中で、その指摘が正しいのか疑問である。
基地被害にあえぐ沖縄の声は、夜間飛行の制限というわずかな希望でさえ、裁判所には届かない。裁判所の判断は、基地利用の制限は高度な政治判断であり、問題の解決は政治に責任があると指摘している。
このような状況での政権交代である。民主党政権に期待する声が高まるのは当然である。
そんな中、鳩山首相は辺野古に変わる新たな場所を模索すると宣言し、その意向はクリントン米国務長官に伝えられ、理解を得たという。後に、理解したとは言ってない、辺野古が最適であることに変わりはないとの米国報道官による会見はあったが。
以上の状況の中で、これから、沖縄は何をすべきか。
12月上旬に沖縄タイムスが47都道府県知事に行ったアンケートでは沖縄の米軍基地負担が過剰であるとの認識を示した知事が3割であった。その後、12月下旬に琉球新報が実施したアンケートでも、橋下大阪府知事の「沖縄の負担を全国で分担すべきだ」とした発言に対する賛否を問うたところ、賛成4知事、反対2知事、他は回答を控えたとのこと。アンケートは各都道府県知事に対してなされたものであるが、これが日本全体の沖縄に対する見方、認識であろうことは推認できる。経営コンサルタントの小宮一慶氏が新聞のコラムの中で、観光で沖縄を訪れる自分にとっても基地問題は切実ではない、ましてや本土に住む人にとっては関心は薄いと指摘し、もっと関心を持つべきであると問題提起をしている。これが現実である。
そこで沖縄は何をなすべきか。
沖縄から声を発することである。基地のありのままを伝えること。日本全体の防衛問題が沖縄に凝縮されていることを発信することであり、発信し続けることが必要である。
何を、どうすべきか。問題意識を持つ県民自身が自分自身でできることから始めることが大事だ。鳩山総理に手紙を書くも良し、オバマ大統領に手紙を書くのも良い。今は、メールが便利だ。総理官邸やホワイトハウスのホームページを開けばいくらでもメールを送ることができる。
県は県なりに、議会は議会なりに、経済界は経済界なりに、今できることから始めることである。
そうしなければ基地問題解決の千載一遇の機会を逸することになる。