遺言は自らの財産の処分についての最後の意志表示です。通常、自らの財産の処分は自由ですが、その自由な処分の意志を死後に示す、あるいは効果を及ぼすのが遺言といえます。ですから、財産の処分についてすでに意志を固めている場合は、遺言書を作っておいた方が良いでしょう。
相続による遺産分割をする場合には、基本的には相続人間の自由な協議によって相続分を決めることができます。遺言書があっても、相続人全員の協議で、遺言書に示された以外の分割方法を決めることができます。また、遺留分(民法1028条)を侵害されている場合は遺留分減殺請求(民法1031条)をすることができます。遺言で一銭も財産をもらえなかった場合でも遺留分減殺請求が認められれば、相続できる可能性があるわけです。
だからと言って遺言書を準備する意味がないわけではないと思います。遺言書を残すことによって、その後の財産分けの基本となる被相続人(亡くなった人)の意志が示されるわけですから、当然それを無視することはできないわけです。
親の死後に、親が子供のために残した財産の分割で骨肉の争いを繰り広げることは、望むところではないはずです。多数の財産を有している方ほど、遺言書は準備すべきではないかと考えます。
人の欲望は財産が大きければ大きいほど強くなります。目の前に示された財産が大きければ大きいほど取り前を多くしたいと思います。これが人の常でしょう。ところがそれが原因で家族仲が悪くなるというのは不幸です。お互いが譲り合って更に絆を強くすることもできる半面、最悪の事態を招く可能性もあるわけです。最悪の事態を避けるためにも遺言書は必要かもしれません。特に財産を多くお持ちの方については、あえて言わせていただければ、義務にも近い責任があると言えるかもしれません。