名護市長選挙の結果を受けて、仲井真知事は「政府与党を構成する3党が推薦した候補が(辺野古移設に)ノーと言って当選した以上、(辺野古移設案は)普通は消えるでしょう」と述べた。本来ならそれが筋である。政党が推薦する候補の公約は、当然、推薦政党との公約についての協議が行われているはずである。そうであれば、選挙結果が出た時点で、民主党は辺野古移設断念を発表すべきである。
ところが、鳩山政権は、選挙結果を受けても、普天間移設に関する協議は辺野古を含めて零ベースで進めるとの従来の見解に終始している。それはなぜか。米国への配慮か。
普天間飛行場の移設に関しては米国は辺野古案を終始主張してきた。それは今回の選挙結果にも表れたのでないだろうか。開票結果は次のとおりである。
稲嶺進氏 17,950票 島袋吉和氏 16,362票
その差は1,588票。有効票数の4.6%、極めて僅差である。敗戦の弁を語る島袋氏の目に光るものがあったのは、この点の無念さがあったに違いない。
米国の辺野古案を主張する根拠もこの辺にもあったのではないか。鳩山新政権は辺野古移設見直しを主張するが、地元は受入れを望んでいるとの見方である。過去10年に渡って行われた北部振興策は北部市町村のすみずみにまで行き渡っているからである。
今回の選挙に関する世論調査の結果からすれば、私自身、もう少し差が開くのでないかと思っていた。選挙当日の、マスコミ報道でも、開票作業開始時(午後8時)に稲嶺氏当確を発表した局もあったし、開票作業が5割に至った時点で当確を出したところもあった。私自身、2局の当確報道を確認して床についたのだが、翌朝の新聞を見て僅差に驚いたのである。
沖縄の基地問題は複雑である。基地依存という言葉であるが、その内実は住民生活の深い所まで浸透している。だからこそ、鳩山新政権の成立を契機として、沖縄の基地負担軽減を基礎として沖縄問題を解決していく決意を日本政府はもとより米国政府にも求めたい。そして、なによりも重要なのは沖縄人(ウチナーンチュ)自身がその覚悟を決めることだ。