1月30日に、国民新党の下地衆議院議員が、嘉手納基地を抱える地元3市町でつくる連絡協議会(三連協)に対し、普天間基地の移設案として「新嘉手納統合案」を提案した。その内容は報道によれば次のとおりである。
「(嘉手納所属のF15戦闘機の一部を)先行して三沢や関空に移して、嘉手納や北谷、沖縄市の方々が体感的に音が少なくなったと納得できる状況になってから、普天間のヘリを嘉手納に移す」
三連協は反発したというが当然である。嘉手納基地の爆音被害の改善という問題はこれまで地元が求めつづけてきたにもかかわらず、一向に改善されないどころか、悪化しているのが現状である。その状況の中で、いったん配備機器を移駐して騒音被害を改善した後に、普天間飛行場機能を移すというのは理解できない。
爆音の問題については、「嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機騒音規制措置に関する合同委員会合意について(平成8年3月28日外務省)」(クリック)によって、夜間訓練の自粛や夜間のエンジン調整の自粛が謳われていた。しかし、その実行は米軍に委ねられており、現実には爆音被害は縮小するどころか拡大しているのである。仮に嘉手納所属のF15戦闘機の一部移転が実現しても、移転により空白となった時間の利用は米軍に任されているのが現実である。これまでは、その空白となった時間にはあらたな演習が行われてきたのである。
沖縄における米軍基地の在り方(演習等)については日本政府は介入できないはずである。1月30日の会談で宮城嘉手納町長が「(嘉手納の)第18航空団の司令官も日本政府は米軍に介入するのかと笑い話にしていた」とこの案の現実性を疑問視していたと報道されているが、まさにこのことを示している。今年7月には普天間基地爆音訴訟の控訴審判決が出される予定であるが、これまでの判例からすれば、爆音被害による慰謝料は認められても、夜間飛行の差し止め等が認められる可能性は極めて低い。
このような状況の中で、下地議員を信じて嘉手納飛行場の爆音被害の軽減を前提として普天間基地を受け入れてくれと言われても、誰が同意するだろうか。地元は自らの手で生活環境を守るしかないのであり、地元首長が反発するのは当然である。野国北谷町長が「地元の理解を得ない場合、当然行動を起こさないといけない」と強調したというが当然である。沖縄選出の国会議員である下地議員が、これ以上嘉手納統合案に固執するならば、自らの政治生命を懸ける覚悟が必要であろう。