1月29日に行われた鳩山首相の施政方針演説。今後の日本の在り方、世界の在り方についての方向性が示されているのではないかと思う。これまでの単なる成長路線、拡大路線からの転換が謳われている。
私たちは何のために生きているのか。
私たちが日々働いて収入を得、日々の生活を営み、家族を養い、子どもを育てているのは何のためなのか。企業が企業活動をしていく中で、経営を拡大し、収益をあげていくのは何のためなのか。すべては、命を守るためにある。しかしそれは、誰かを犠牲にして自分だけが生き残るという弱肉強食の世界を肯定するものではない。世界が命を守るために生きるべき道を模索すべきであると指摘している。
しかし、その命も瞬間の災により失われることがある。結びの震災の話はそのことを物語っている。それでも生きていかなければならず、そのためにはどうするのか。共同体の力が必要である。今ある命とこれから生まれてくる命を育むためにも、共同体の努力が必要であり、それにより復興を遂げた成果が語られている。
鳩山首相の施政方針演説は、これまでの経済成長路線からの価値観の転換を訴えている。資本主義社会で競争原理はつきものであるが、勝ち組、負け組の存在が社会構造の中ですでに決定づけられている行き過ぎた競争社会は不健全である。実はみんなそのことに気づいていながら、そこから抜け出せいでいる。そこで、抜け出すために“命を守る”という新たな価値観を提示しているのである。
具体策が提示されていないなどの指摘があるが、今後の日本、世界が進むべき道を示し、これまでの施政方針にはない未来像が描かれている。私は高く評価したい。