民法には遺言の方式は民法に定める形式に従わなければならないと規定されています。したがって、遺言は自筆証書、公正証書又は秘密証書によって作成しなければなりません。但し、特別の方式による場合はこの限りではないとされていますが、特別の方式も民法に規定されています。
それでは方式に従っていない場合はどうなるのでしょうか。
相続が開始し、遺言書(公正証書は不要)を預かっている人や発見した人は家庭裁判所に申出て遺言書の検認手続(詳細こちらをクリック)を受けなければなりません。検認を受けた遺言書でなければ預金等の引き下ろしや不動産等の移転登記はできませんの必ず検認を受けなければなりません。
ここで、一つの問題が発生します。民法に定める形式に従わない遺言書について、家庭裁判所は遺言書の検認手続を拒否できるかということです。
一般に遺言書の検認手続は遺言書の有効・無効を判断する手続ではなく、後日の紛争(遺言無効の訴え等)に備えての証拠保全手続と言われています。この考え方に立てば家庭裁判所は検認を拒否することはできないことになります。したがって、検認を受けた遺言書であれば預金等の引き下ろしや不動産等の移転登記手続等が可能になりますので、民法に定める形式に従わない遺言書についても実行が可能となります。
もちろん、民法に定める形式に従わない遺言書は後日遺言無効の訴等が提起されれば無効と判断される可能性が高くなります。裁判等で無効が確定すれば、預金の返還請求や不動産等であれば真正な登記名義の回復請求等の財産の取り戻しの手続、裁判に発展していくことになります。
なお、以上は私の調べた範囲での見解ですので、これが一般的に認められるかがどうかは不明です。一つの考え方として参考にしていただければと思います。