足利事件の再審公判手続が結審した。検察は論告で無罪判決を求めた後、菅谷さんに謝罪したという。その後の最終意見陳述で、菅谷さんは17年半もの間自由を奪われた原因を説明してほしいと訴えた後、裁判所の謝罪を求めたという。3月26日にも無罪判決が言い渡される見通しだ。
今回の再審開始の決定的な証拠となったのはDNA鑑定である。現場に残された体液が菅谷さんのものと判断した当時のDNA鑑定が誤りだったことが判明したのだ。
菅谷さんが裁判所への謝罪を求める理由は2つあると思う。
一つは技術が未熟なDNA鑑定を含む不十分な証拠で自らを犯人と断定したこと。もう一つはその後の再審請求で当時のDNA鑑定の未熟さが明らかになったのに再審請求を認めず、結果として17年もの歳月が経ってしまったことである。
適正・迅速な裁判を行うのが裁判所の使命であることは言を待たないが、同時に、仮に裁判が誤りであったときに人身を救済するのも裁判所の使命である。なぜなら、救済は裁判所以外にはできないからである。
殺人等の重大事件については時効制度が廃止される見通しとなっている。時効制度の廃止については冤罪を懸念する声もある。年月の経過によって証拠が風化していく中で十分な裁判ができるのかという懸念である。ただ、時効制度の廃止はDNA鑑定制度が上がったことにより冤罪の可能性が小さくなったことも関係しているのだが。
いずれにしても裁判所の果たす役割が重要になっていることは間違いない。横浜事件の刑事補償に関する横浜地裁決定では(戦前のことではあるが)裁判官の過失を認定している。今回どのような判断が示されるのか、3月26日の判決は注目である。