木に登っているのである。しかも、家の中から見える位置にいる。ということは、彼の位置からは私が丸見えということだ。私は、またカメラを取り出し、彼を撮影した。先歩ほど小降りだった雨がだんだん大きくなっていたので、私は家中から彼を狙った。相変わらずに私がカメラを向けると彼は微動だにしない。
私はガラス戸を閉めて寝床を準備することにした。雨はますます激しさを増してきた。そのうち、雷が鳴り出した。石垣の雷は那覇で経験したものとは大きく異なっていた。音が大きいうえに、耳元で鳴っているような気がするくらい近くに聞こえる。だからその迫力たるやこれまで経験したものとは比べものにならない。しかも、一人暮らしである。雷鳴に驚いて声をあげても私一人。しかも、事業所の一角の民家で、裏手は御獄ときている。夜分に訪ねてくる人などはめったにはいない。普通の人なら、用があっても昼間に済ませたくなる。