普天間飛行場の移設先選定問題については議論が大詰めを迎えている。与党3党による案の提示は見送られたが、その基本となるのは沖縄の基地負担の軽減である。沖縄の基地負担の軽減は与党3党の政策合意でもある。
今後の基地の返還等も見据えて沖縄どうすべきか。今後は、沖縄が沖縄自身のために如何にあるべきかを考えることが重要である。世界の安定とか。日本の防衛とか。アジアの軍事バランスの安定とか。沖縄以外の事情を一切排斥して、沖縄は如何にありたいと考えているのかの視点からの、大胆な提言が必要ではないかと思う。エゴイストと罵られるくらいの提言があってもいいのではないか。
戦後60余年、沖縄の軍事的役割は極めて重要であったことは歴史の示すところである。嘉手納町に生まれ、嘉手納町に住む私が実際に目にした、ベトナム戦争、中東戦争、そしてイラク・アフガン戦争への出撃はここ嘉手納基地が重要な役割を果たしているという。かつての米ソに冷戦構造が消失し、現在はテロとの戦争と言われているが、沖縄の米軍基地の必要性・重要性が薄れていることを指摘する声は後を絶たない。
今、沖縄の基地問題を考えるとき、基地返還により失われる基地に関連する収入をどう補うかが緊急の問題となる。跡地利用に要する時間は長期間を要し、跡地で何をするのかは大きな問題だ。基地収入に替わるだけの利益を生み出せるのか全くもって不透明である。
もう少し先のことも考えてみたい。基地が整理縮小される中で何が起こるかである。縮小することによって基地の重要性が薄れる。すると、更に基地の整理縮小が起こるということである。日本政府はもちろん米国政府も財政赤字に陥る中、出費を抑えたいのはやまやまである。いったん基地の整理縮小が軌道に乗ればその速度は加速度的に速くなると予想される。つまり、沖縄が出ていってくれと言う前に、米国の方から出ていく事態になるのである。その時に基地の誘致という現在と逆の発想に陥らないように、今から準備を進めるべきである。
先日、沖縄の将来像を描く長期構想「沖縄21世紀ビジョン」(仮称)の答申案が公開された。一切の悲観的将来像を排し、基地がなくなれば仕合せな沖縄が約束されるような将来像であるが、現実的でないことはいたる所で指摘されているとおりである。
沖縄が、沖縄のためだけに、沖縄のあるべき姿をどう描くのか。そこから議論を出発すれば、様々な問題を克服する新しい議論に発展させることができるのではないかと思うのだが。