ちなみに那覇ではハブは見つけたら退治するように教えられている。ハブは、退治しようと人間が追いかけていくと、途中でとぐろを巻いて追ってきた人間に逆に襲いかかるという。ハブは見つけた時点で退治しないとその場所に戻ってくるとも言われているので退治するのだ。猛毒を持っおり、咬傷事故を防ぐためにも退治するのが一般だ。 どうしようか迷っているうちに彼は庭に降りて行った。スルスルと庭を這っていく蛇、途中で立ち止り、かまくびを持ち上げ周囲を確認している。下をへらへらさせながらこちらを振り向いて一瞬制止したが、また、スルスルと這っていった。やがて彼の姿は暗闇の中に消えていった。
事務所の裏通りにある老舗の昭和食堂。そこの店主に真夜中の蛇の話をした。
「そりゃ良かった。蛇は神様の使いだ。あんたに会いに来たんだよ。きっと。 その蛇はメスだな。きっと。間違いない。」と店主が言った。
「なんでですか。」と私。
「男の布団にもぐりこんでくるんだ、女に決まっている。」と店主。
「でも、最近では男好きの奴も普通みたいですよ。」と私。
私の顔を覗き込んで大笑いした店主は、そのまま店の奥へ入っていった。
食事を終えて帰ろうとすると、店の奥から顔だけ出した店主が言った。
「命を助けてくれたお礼に、彼女があんたに会いに来るよ。」
「彼女?」と私。
「さっき話していた蛇の彼女だよ。あんた単身だろ。きっと良い女が会いに来るよ。楽しみにしてな。」
そう言って、また大笑いしながら奥へ引っこんでしまった。
あれから、数か月、蛇の彼女は、未だに訪ねてこない。