基地負担軽減の議論が政府内で行われ、報道によれば、嘉手納基地については米軍機の訓練移転が取りざたされている。しかし、訓練の移転だけでは基地負担は軽減されない。訓練が移転されても空白の時間帯には、外来機による訓練が組み込まれる。つまり、F16の爆音は軽減されても、外来機による訓練が実施されるのである。訓練が移転されても、空いた時間の利用についても日本政府が管理しないかぎりは何も解決しない。現実はどうか。日米地位協定問題も含めて、基地運用の判断が米軍に委ねられている現状では、訓練の移転は、国民受けのする、かつ米軍としても受け入れやすい解決策に外ならず、基地負担の軽減にはつながらない。
ここに、平成17年に嘉手納町がまとめた「嘉手納基地に関する使用協定締結について(詳細についてはこちらをクリック)」と題するレポートがある。この中には嘉手納町民が求める基地負担軽減策が記載されている。政府が本気で嘉手納町民の基地負担の軽減を考えるならば、訓練移転だけでなく、このレポートに記載された内容を実現すべきである。以下に、生活に密接した早急に改善が求められる部分を抜粋する。
①航空機の離発着回数の制限
②航空機のエンジン調整等はすべて消音施設等(サイレンサー)を使用するか、住民地域から離れた滑走路東側で行うこと。
③休日・祝祭日・慰霊の日など特別に意義のある日は飛行を禁止すること。
④早急に洗機場の移転を行うこと。
⑤19:00から07:00までの間、すべての航空機の飛行活動、エンジン調整等を行わないこと。
⑧航空機の離着陸の場周経路は、学校、病院等人口稠密地域上空を避けるよう設定する。
⑨夜間のタッチ・アンド・ゴーの訓練をしないこと。
⑩飛行場周辺の住宅上空で旋回して滑走路に進入しないこと。
⑪飛行場及び住宅地域上空では空中戦闘訓練及び曲技飛行をしないこと。
⑬深夜早朝の即応訓練・滑走路修復訓練等は行わない。
嘉手納町民が求めているのは生活環境の保全であり、特に夜間の平穏な生活である。政府の基地負担軽減の議論は基地周辺住民の生活環境を改善する立場から、現実に負担軽減が実感できるものでなければならないとの方針の下で行われているという。そうであれば、政府与党内で検討されている単なる訓練の移転だけでは何も解決しないことを踏まえ、基地負担軽減の実効性のある施策を実施すべきである。