鳩山首相が普天間飛行場移設先を県内に求めた際の理由としてあげたのが、抑止力である。しかし、その意味するところについてはよく分からない。
この点について、5月14日にQABで放送された「どうなる普天間移設~朝まで生激論~」は興味深かった。
出演者全体の発言からすれば、在沖海兵隊が日本防衛のための重要な抑止力であるという点については極めて否定的であった。しかし、嘉手納基地を中心とした空軍(嘉手納基地が抑止力の最たるものであるとの認識については一致していた)等との連携において、海兵隊が果たす役割が抑止力の一端を担っているであろう点についてまで否定する意見は少なかった。
抑止力の一端を担う軍隊として、これ以上海兵隊が、抑止力として沖縄に駐留すべき必要性があるのか。必要であるとする論拠は米国の軍再編計画上の都合、つまり、飛行場建設及び移設先の提供については日本が日本の責任で負担するということ、とみるのが合理的なようだ。そうであれば、普天間移設問題は日本の出方によって十分に交渉の余地があり、決して固定化されたものではないということである。
普天間問題に関する最近の論評に中には「最低でも県外」とうそぶいた鳩山首相を非難し、その見識を問いながらも、自民党が13年かけて築いた辺野古埋立現行案が優れていると結論づけるものが目立つ。しかし、それは勉強不足を率直に認め、沖縄に謝罪し、新たな負担を求める鳩山首相と、結論においては何ら変わりがない。
沖縄の民意はすでに示されているとおりである。基地の整理縮小と新たな基地負担の拒否である。
解決すべき問題が硬直状態に陥ったときは、沖縄全体を俯瞰して考えることが必要である。名護市辺野古への飛行場建設を考えるとき、小さな沖縄に3つもの軍事飛行場が必要なのか。那覇空港は自衛隊との軍民共用基地であり、嘉手納基地は極東最大の米空軍基地である。名護市辺野古に飛行場を建設すれば沖縄は基地の島そのものとなる。北から南まで軍事飛行場を有する、まさしく基地の島となる。仮に、辺野古飛行場建設と引き換えに普天間以南の基地が返還されるとしても、沖縄が将来に渡って負わなければならない基地負担、軍事負担を考えるとき、正に基地の固定化の始まりとなる。
沖縄は決して引いてはならない、苦渋の決断などしてはならないのである。