7月30日に言い渡された普天間爆音訴訟の控訴審判決では、飛行差し止め請求については、国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ事柄については司法機関が差し止め命令を発することはできない、として国の統治行為に属する問題については司法判断になじまないとして、それが夜間・深夜にかかるものであっても禁止できないといした。その一方で、「過去の嘉手納基地爆音訴訟で、これまで「司法判断が3度も示されているのに、抜本的な対策を講じていない上、自ら定めた環境基準も達成していない」として、国の姿勢を厳しく指摘している。
つまり、飛行禁止等の措置には限界があり司法判断できないが、低周波音騒音を含む爆音により損害が発生していることは事実であり、その軽減策等、抜本的な施策を怠っている国の姿勢については厳しく非難しているのである。
それでは、どうすれば飛行場周辺の地域住民の平穏な生活を守ることができるのだろうか。
懲罰的損害賠償(ちょうばつてきそんがいばいしょう)という言葉がある。これは、損害賠償事件において、加害者の行為が強い非難に値する場合に、加害者に金銭的制裁を加えることによって、将来の加害行為を抑止する効果を期待して、実害の賠償額に上乗せして賠償額を決定するものである。英米国では認められているが、日本では認められていないとされている。
今回の控訴審判決を受けて、今後は、地域住民の生活を守るためには、懲罰的損害賠償的な考え方が必要ではないかと思う。たしかに、控訴審判決では低周波音騒音を損害の発生源と認定し、1審に比べて賠償額が2倍に引き上げられた。財政難とされる国を動かすきっかけになるのではないかとの見方もあるが、抜本的な改善策を求めるためには5倍、あるいは10倍の損害賠償額となる必要がある。
今回の控訴審判決が国の不作為を厳しき非難したことには極めて大きな意義があると思う。