8月21日の琉球新報「佐藤優のウチナー評論」に紹介された中央公論9月号の記事を読んだ。前外務事務次官谷内正太郎氏と手嶋龍一(元HNKワシントン支局長)との対談である。
その中で谷内氏は、日本が「国際政治を生き抜くためとはいえ、沖縄はことあるごとに日米間の取引に使われてしまった側面は否めません」と指摘している。戦中は本土決戦を防ぐための防波堤として、終戦時は日本の独立を守るための捨石として、復帰後は日米同盟を維持すための基地の島としての役割を強いてきた事実認識を述べている。対談の最後には、普天間問題に関して「ここまで泥沼化してしまったのですから、かつて橋本龍太郎首相がそうしたように、何度でも政府首脳が沖縄に足を運び、地元の得心ゆく答えを見つけるしかないでしょう」と述べ、手嶋氏も「同時に沖縄の負担軽減のため、すべての日本人が同盟コストを担う姿勢を沖縄の方々に身をもって示さなければと考えます。」と応じている。
沖縄の基地問題を解決するためには、沖縄がこれまで背負ってきた歴史を、きちんと認識することが重要だ。これなしには議論は深まらない。
沖縄の基地問題が議論されるとき、引き合いに出されるのが沖縄は基地無しには成り立たないのではないかという議論である。米軍基地から派生する経済的利益には、軍用地料や軍雇用等の直接住民が受ける利益とともに、基地交付金にみる基地周辺自治体へ入る利益がある。他にも、軍関連公共工事や基地から派生する爆音対策としての周辺住宅への防音工事(クーラーの設置等)、軍人・軍属の周辺住宅賃貸による利益等もある。これらがすべて一度に無くなれば経済的打撃は避けられない。しかし、これらすべては国策の結果である。すべてが、谷内氏の指摘する歴史認識を償うためであり、国策を遂行するための施策の結果である。沖縄の基地問題の解決を考えるとき、この側面は重要である。だからこそ、谷内氏の指摘する歴史認識は、本土の側にとっても、沖縄にとっても重要なのである。
佐藤優がウチナー評論の中で指摘している。「「もはや沖縄を日米間の取引の対象にさせない」ということを沖縄人がはっきり宣言する。そこから普天間問題を仕切り直すのだ。」この指摘は正しい。そして、更に重要なのは、決して沖縄が引かないことだ。決して引かないこと。二度と苦渋の決断をしないことを明確に宣言することが必要だ。
来月には民主党代表選挙が行われる。普天間問題が争点となって、次への足がかりになるような議論が行われることを期待したい。
そして11月の知事選挙では、これまで沖縄が背負ってきた歴をどう認識し、そのうえに立って、現在の沖縄をどうするのか、そして、沖縄の将来をどうすべきか。真正面からの議論を期待したい。