尖閣列島付近で違法操業の疑いで逮捕された中国人船長が釈放された事件と無罪判決が出た後に証拠物の偽造が発覚した村木さんの事件は、これまで抱いていた検察への信頼を大きく揺るがす事件だ。
村木さんの事件は、結局、検察のでっち上げであることが判明し、村木さんも復職を果たした。その後に発覚した証拠物の偽造は検察への信頼を失墜させ、その影響は偽造により逮捕された前田検事が担当した他の事件にも波及している。何が何でも起訴しなければならないという検察の姿勢が生んだ冤罪事件である。
これに対して、中国人船長の事件は、領海侵犯の疑いで事情聴取しよとした海上保安官の停戦命令を無視して逃走したあげくに、海上保安庁の船に自らの漁船を2度も衝突させて逃走を図ろうとした、と報道されている。領海侵犯、公務執行妨害、器物損壊の犯罪行為であり、しかも、容疑については否認しており、裁判所の勾留延長が決定された。報道のとおりであれば、通常、この時点で釈放はあり得ない。法に則って粛々と手続きを進めるのなら、なおさらである。ところが、突然の処分保留による釈放。
証拠物を偽造してまで起訴に踏み切った村木さんの事件と、容疑が明らかであるのに突然処分保留にした中国人船長の事件。いずれの事件についても、これまでの検察への信頼が大きく揺らいだことは間違いない。
10月の臨時国会では、検察に関する議論が期待されるが、どこまで、真実が語られ、その姿が明らかになるのか、注目したい。