沖縄の米軍基地キャンプ瑞慶覧で不当解雇されたとして解雇無効を訴える裁判が進行中であるが、その控訴審の和解協議の際に、解雇無効の判決が確定した場合でも、米軍側が日米間で定めた諸機関労務協約をたてに復職を拒むことができるということが分かったという。(沖縄タイムス報道詳細はこちらをクリック)
解雇無効判決が確定しても、米軍側が復職を拒むことができるとはどういうことなのか調べてみた。
(1)基地従業員の雇用形態
日米両国は、日米地位協定により、日本国が労働者を雇用し、在日米軍に提供するいわゆる「間接雇用方式」を採用している。そして、その労務提供を円滑に実施するため、防衛省と在日米軍は、3つの労務提供契約(①基本労務契約②船員契約③諸機関労務協約)を締結し、提供する駐留軍等労働者の資格要件、労務管理の実施方法、給与その他の勤務条件の内容、労務経費の日米負担の区分等在日米軍への労務提供に関する具体的諸条件を細かく取り決めている(駐留軍等労働者の労務管理に関する検討会報告書平成22年8月より)。
つまり、基地従業員は日本国が採用して米軍に提供しており、提供する際の労務契約の中身が今回の問題の発端ということになる。
(2)報道によれば、その労務提供契約には、日本の裁判所で解雇無効の判決が確定した場合、「安全上の理由による解雇」を除く訴訟事案については復職義務を負うものの、日米協議の結果「安全上の理由によると解雇」と判断された場合は、米軍が復職を拒むことが可能になるという。
(3)日本の裁判所の解雇無効判決が確定しても、日米協議でその解雇が「安全上の理由による解雇」と判断することができるのか。解雇に至った事実関係はすでに裁判所によって無効と判断され、雇用主である日本国を拘束する。にもかかわらず、日本国と米軍が協議して、「安全上の理由による解雇」として認定することができるのか。仮にそのように判断するとなれば裁判所の判断に反する行政行為であり、憲法の基本原則である三権分立の基本理念にも抵触する恐れがあるのではないか。
裁判所で解雇無効の判決が確定した場合でも、日米協議の結果「安全上の理由による解雇」と認定できるのか。極めて疑問である。