平成23年の広報かでな1月号(詳細はこちらをクリック)には、宮城町長の年頭のあいさつが掲載されている。宮城町長はすでに勇退を表明し、去る1月30日の町長選挙では當山ひろし氏が当選し、次期町長へ就任する。
さて、宮城町長の年頭のあいさつであるが、基地問題に関する宮城町長の基本姿勢が示されている。宮城町長は、「アメとムチ論」に対して、「アメとムチの理論を展開する人びとは、「アメを求めれば地域は衰退し、人々は意欲を失い、進むべき方向を見失うであろう」と嘆きます。果たしてそうなるものでしょうか。」と疑問を呈し、行政の長として住民生活に責任を負う立場にある首長として、「この理屈で現実に被害を受け続けている人びとは果たして救われるのでしょうか」と指摘する。そして「爆音訴訟が被害者としての権利獲得のため司法判断を求める行為であると同様、行政が正当な権利を主張し、施策として補償を勝ち取る事は何ら恥ずべきことではなく、むしろ権利だと確信しております。」として「アメとムチ論」を排斥する。 更に、嘉手納町の基地の歴史的経緯について、「(住民が)自ら基地を受入れた訳でもなく、戦争終結によって民間用地が米軍によって接収され、復帰と同時に国策によって施設を提供させられてきたのが我が町の実情」であると指摘し、このような理不尽な状況の中で、「基地被害を受けている者が問題解決を求めてその加害の根源を絶つべく関係者に要求することは当然の権利」と述べ「加害者は被害原因の除去のために努力し、責任を負うべきであります。」と指摘している。正論である。 そして、平成9年7月に、宮城町長自身が、それまでの基地の整理縮小から全面返還を打ち出した経緯に触れ「私が不退転の決意で全面返還を打ち出したのは、けっしてアメに甘んじないという信念であり」、「いかなる国策があっても町民を犠牲にする問題提起には断固反対する政治姿勢を貫き通すべきであると考えました。」としている。 このような基本的姿勢を持つ宮城町長の下で、嘉手納基地から発生する基地被害の状況はどうなっているのか。連日報道されているように基地被害(爆音や排気ガス等)は減少どころか、ますます酷くなっているのが現状である。 基地の整理縮小・基地被害の軽減は嘉手納町のみならず、沖縄全体の課題である。普天間飛行場移設問題にみる政府の姿勢は、沖縄無視の姿勢を維持し続けている。言葉では誠意ある対応と言いながらも。沖縄の民意である基地の整理縮小・基地被害の軽減に向けて誠意ある対応をしているとはとうてい言えない。ならば、現状打破のためにどうすればいいのか。
そのヒントは宮城町長のあいさつの中の次の言葉にあるように思う。それは次のくだりである。
「基地被害を受けている者が問題解決を求めてその加害の根源を絶つべく関係者に要求することは当然の権利だと考えております。被害の原因が国家間の条約によるものであろが何であろうが、加害者は被害原因の除去のために努力し、責任を負うべきであります。」
政府が沖縄の声に耳を傾けない現状においては、沖縄が自らの行動に確信を持たなければならない。その意味において宮城町長の言葉は正に正論である。
そして、このような状況下における嘉手納町長の責任は重大である。嘉手納飛行場に関する三連協(三市町連絡協議会)や軍転協(県軍用地転用促進・基地問題協議会軍転協)とも連携しながら、基地の整理縮小・被害除去に向けた取り組みを強化していく必要がある。
當山新町長の手腕に期待したい。