5.16沖縄タイムス紙面に普天間移設問題で、米上院軍事委員会のレビン委員長に対し、「現実的な案」として嘉手納統合案、国頭村安波への移設、キャンプ・シュワーブ陸上案を提示した下地氏のインタビュー記事が掲載されたが、多くの認識違いと誤りがあるので、指摘しておきたい。(詳細は普天間移設3案:下地幹郎幹事長に聞く こちらをクリック)
氏は言う。「・・3案は確実に普天間の危険性を除去できる現実的な案・・、イデオロギーでは基地問題の解決はできない」 |
そもそも普天間飛行場移設問題は、イデオロギーを問うているのではない。2009年8月民主党政権誕生以降の動きの中で明らかになった沖縄差別の歴史、その実態が問題である。改めるべきは沖縄蔑視の歴史観ともいうべき日米両政府の深層に巣くう考え方であり、それこそが問題の根本である。そこに至ることなく、安易に現実的解決を求めるのは、沖縄にとって極めて危険な発想だ。更に言えば、沖縄内部でのイデオロギー対立をあおり、それを利用したのは誰だったのか。
氏は続ける。「騒音防止協定が守られないのは、そこに戦闘機がいるからだ。だからこそ・・『嘉手納の戦闘機2個中隊のうち、1個中隊24機を移転・・』『出て行った後・・普天間・・を入れて』と言っている。これほど合理的な話はなく、これを否定するのは感情論だ。」 |
「騒音防止協定が守られないのは、そこに戦闘機がいるから」ではない。米国にその気がないからに過ぎない。これは自明の理だ。日米地位協定の改正に手がつけられないのも根本は同じだ。嘉手納基地周辺住民にのしかかる基地被害の実態を無視して、嘉手納統合案への反対を感情論だと切り捨てる論議こそ、現実論に名を借りた日和見主義にすぎない。
氏続ける「・・米政府から辺野古の代替案に関するメッセージが必ず出てくる」 |
沖縄が目指すはこのメッセージである。辺野古移設案の撤回がない限り、基地負担の軽減という沖縄の民意の実現はない。米国からの代替案の提示は、正に、交渉のテーブルに米国が付くことであり、それこそが沖縄が求めてきたものではなかったのか。「米政府から辺野古の代替案に関するメッセージが必ず出てくる」というのであれば、正に望むとおころであり、今度こそ沖縄の民意を、日米両政府に伝える役割を果たすことが沖縄選出議員役割ではないのか。
下地氏の主張は、単に普天間飛行場移設問題に留まらず、今後の沖縄の基地問題解決の方向性を誤らせかねない危険性をはらんでおり、決して受け入れられるものではない。