八重山地区の教科書選択に関する騒動は、八重山3市町の全教育委員協議会による育鵬社版公民教科書不採択で決着がついた、と思われたが、9月2日に文科相に就任したばかりの中川氏は「残念だが協議は整っていないと考えざるを得ない」と発言し、協議会の決定に疑問符を投げかけた。
教科書の無償化については、憲法26条2項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と規定されている。
この憲法の規定を受けて具体的な手続きが「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に規定されている。今回問題となっている採択に関しては第三章に規定されている。(以下はその抜粋。詳細は義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律 (クリックで電子政府HMへ))。
第三章 採択 (採択地区) (教科用図書の採択) ・・・ |
問題となっている点について整理してみる。
1 教科書採択の権限について
採択権限については、第10条は明確に市町村教育委員会と定めている。地区協議会の教科書選定手続は、あくまでも第13条4項の採択地区内同一教科書選定の規定に従った選定を行うための手続きに他ならず、その決定は助言でしかない。したがって、地区協議会の決定が市町村教育委員会の採択権限を縛るとの結論にはならない。
2 中川文科相の「協議は整っていない」との認識について
第13条4項は、「当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」と規定している。今回の協議は八重山3市町の全教育委員による協議会で行われた。これをして第13条4項にいう「協議」は整っていないとの判断した根拠が不明である。
3 期限に間に合わなければ無償化の措置が受けられないとの指摘
義務教育の無償については憲法26条2項に規定されている。仮に文科省の定めて採択期限に間に合わなかったからと言って、国が無償給付を拒否すれば憲法違反となる恐れが高い。文科省が無償化の措置が受けられないとの指摘について否定したことは当然である。
4 今回の騒動についての県教育委員会の指導について
第10条は「都道府県の教育委員会は、・・・採択に関する事務について、適切な指導、助言又は援助を行わなければならない。」と規定している。したがって、今回の県教育委員会の指導は当然のことであり、逆に文科省が直接介入する姿勢を見せている点が問題であると言わなければならない。
以上からすれば、八重山3市町の全教育委員協議会による育鵬社版公民教科書不採択は有効であると考える。