八重山地区の教科書選定問題についての文科省の見解が出された(詳細は文科省HM10.28文科大臣記者会見で確認できます。詳細はこちらをクリック)。以下その内容をまとめてみた。
①教科書を無償給付するためには義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(以下「無償措置法」という)に基づいた手続きが必要である。 ②八重山地区では同選択区域の中で作った規則に従った結論が出ている。その結論は育鵬社公民教科書を使用するということである。 ③文科省としては、八重山地区については育鵬社公民教科書で報告されているので、同教科書を給付をすることになる。 ④しかし、竹富町はその受入れを拒否している。地方教育行政の組織及び運営に関する法律によれば、教科書の採択権はそれぞれの教育委員会、その市町村単位の教育委員会にあるとされていることから、文科省としては、竹富町に対して、公民育鵬社教科書を使えと強制はできない。 ⑤竹富町は無償給付を受け取らないということだから、採択権に基づいて自分の決めたところで、町が負担をして、子どもたちに実質的には無償給付をしていただくことになる。 |
疑問のひとつは、②の部分である。八重山「選択区域の中で作った規則」は、現場の教師たちが専門的な視点で教科書を調べ、ふさわしい教科書を推薦する制度を廃止し、教科書の投票は無記名、審理の非公開など、公正であるべき教科書選定手続きに疑問を抱かせる内容となっている。更に、選定過程にも問題がある。公民教科書の選定協議はわずか10分足らずで終了しているという。
民主的手続きを担保するためには、選定結果の正当性とともに、選定過程の正当性・透明性も確保されなければならない。
この問題を回避するため、沖縄県教育委員会は、無償化措置法に基づく指導、助言による八重山3市町の全教育員協議会を9月8日に開催し、育鵬社版公民教科書不採択で決着がついた。にもかかわらず、文科省は9月8日の協議結果を無効とした。この経緯から、県教育委員会は文科省に対し、協議を無効とするのなら、一本化に向け文科省と県教育委員会が3市町教育委員会に再協議の開催を求めるべきだと提案したが、文科省はこれを拒否した。
手続の形式面にこだわり、選定手続きの内実に目を向けようとしない文科省の姿勢は非難されるべきである。
もう1点疑問点がある。⑤の竹富町は無償給付を受取らないとしている点である。そもそも、憲法に定める無償給付の権利者は子どもたちであり、その親権者である。その権利を竹富町が放棄することは許されないし、そもそも、文科省が放棄したものとみなすことなどできないはずである。文科省の教科書無償給付義務を回避することができるのか疑問である。
このような問題は、今後も起こりうる可能性がある。今回は育鵬社教科書を使いたくないという竹富町の場合であるが、逆に同教科書を使いたいとして選択区域の判断に異議を唱えることも予想される。
重要なのは、育鵬社教科書を使うか否かの多数決による決定ではなく、その教科書を選定した理由・手続の公開である。民主的手続きを踏む事が重要であり、更に、その手続の公開が必要となる。
問題解決に必要なのは、教科書選定手続き及び選定理由の公開であり、その意味においても、県教育委員会が主張するように、あらためて選定手続きを行う以外に解決の途はないと考える。