12月17日付琉球新報に掲載された佐藤優氏のウチナー評論「外交権の部分的回復に向けて〜沖縄は国際法の主体だ〜」は、今後の沖縄の進むべき方向性を示す示唆に満ちた指摘だ。
これまでの沖縄の政治家は「防衛問題は国の決定すべき問題で、一地方自治体の首長がとやかく言う事柄ではない」として意図的に言及を避けてきた。国際情勢が複雑に絡み合う事柄であり、地方自治体の首長にとっては限界があるのも事実だ。
しかし、明らかに沖縄の民意が拒否している普天間飛行場の辺野古移設を強行すると明言して憚らない現政権の姿勢は尋常ではない。このような状況を打破するには沖縄自らが基地問題に対する考え方を示す必要がある。
普天間飛行場移設問題に関する現状をまとめてみた。
①米海兵隊の抑止力を肯定しているのは民主党政権のみであり、民主党内部においても鳩山前首相を筆頭には抑止力については疑問を示している。
②米国内においても辺野古移設は実現不可能であるとの主張が数多く出され、その代替案が提示されている。
③米議会はグアム移転費を予算から削除し、日本の防衛予算においても辺野古移設費は予算計上されていない。
このような状況においても、なお、辺野古移設を唱える民主党政権の姿勢は理解不能である。同記事で佐藤氏が指摘する「外交・安全保障問題は、中央政府の専権事項であるというステレオタイプにとらわれていては、もはや沖縄の利益を守ることができない。」との指摘は正しい。「暴言を吐いた田中聡前沖縄防衛局長のような東京の政治エリートに沖縄にとって死活的な重要な問題を委ねることはできない」のであり、そのためにも沖縄県庁内に発足される「安保研究課」の存在は重要である。
沖縄の抱える最大の課題である基地問題について自らの意思を示すことは今後の沖縄の姿を考えるうえでも極めて重要であり、そのための専属の部署を設けることは意義がある。。
更に同氏は安保研究課のあり方について、「外部に委託する形で外国での情報を収集を行うと、「安保研究」課は初期の目的を達成できなくなる」と指摘する。その理由の詳細については次回の同氏の評論を待たなければならないが、沖縄県が自ら収集した情報に基づいて、自ら考え、自らの意見を提示するのでなければ意味がないという趣旨ではないかと考える。
収集した情報の取捨選択にあたっての信憑性の判断は重要である。そのためには自ら収集した情報に基づいて判断しなければ意味がない。判断の正当性も重要ではあるが、沖縄自身が自ら判断することの方がより重要であり、優先されるべきである。そして、その意思を日米両国に示すことが必要である。
自らの未来は、自らが切り開くという意思と覚悟が問われているのだと思う。
沖縄の基地問題について、沖縄自身が自らの意思を明確に示すべきであることに気がついた今、そのためには理論武装された主張が必要である。そのためにも来年4月にも設置されるという安保研究課の役割は極めて重要である。