昨年末に夜襲搬入された環境影響評価書の要旨が1.8付琉球新報に掲載された。記載された内容は極めて不誠実な、曖昧なものとなっている。
冒頭の【対象事業の目的】の項目には次にように記載されている。
・・。航空機騒音はヘリ訓練などで日常的に使用する場周経路は、周辺集落から離れた海上を考えており、飛行経路は周辺集落を極力通過しないよう考えている。 |
嘉手納・普天間両基地の運用実態からしても「飛行経路は周辺集落を極力通過しないよう考えている。」との見解を信用することはできない。「考えている」だけでは米軍に白紙委任状を渡しているようなものであり、その恣意的運用に委ねられているに他ならない。
しかも、【飛行場使用を予定する航空機の種類】の項目には次にように記載されている。
・・11月6日に米国防省から・・沖縄配備が発表されたMV22(注 オスプレイ)。他飛行場からの航空機の使用もあり得る。 |
辺野古に建設予定の基地には、明確に、オスプレイを配備すると明記している。沖縄の民意が、爆音・機材の危険性等から配備を反対しているにもかかわらずである。当初から沖縄の民意など聞く耳を持たないと意思を示しているかのようだ。しかも、「他飛行場からの航空機の使用」については可能性を指摘しているかのような表現だが、普天間・嘉手納両飛行場の運用からすれば外来機の飛来は当然であり、配備機材はもちろん外来機の爆音にもさいなまれることは確実である。
【騒音】の項目の記載には次のように記載されている。
◆環境保全措置 ・・周辺地域上空を基本的に回避する方向で対応しており、騒音による影響は住宅地からの住宅地からの距離が離れることで相当程度低減できる。 環境保全措置の効果を検証するため、航空機騒音の環境監視調査を実施し、環境保全措置の見直しを要する場合には、専門家等の指導・助言を得て、必要な措置を検討し、米軍に対してその実施を周知する。 |
周辺地域上空を回避することによって低減できる爆音の程度は「相当程度」と記載されている。しかし、嘉手納・普天間両基地の運用を見れば明らかな通り、「相当程度低減」の表現は如何にも心もとない。日米間で協議し、自ら定めた騒音防止協定さえも米軍は遵守しない状況の中では納得できるものではない。
【低周波音】の項目の記載は更に不誠実さを増す記載となっている。
◆低周波音の評価結果 飛行で出る低周波音はCH53では、すべての予測地点で心理的、生理的、物的影響に係る閾値(いきち=最少可聴値)を下回った。MV22は、一部の予測地点(安波集落)で、心理的、生理的影響に係る閾値を上回っているが、飛行回数はわずかで、予測地点付近上空を飛行する時間も短時間となっている。移動発生源である航空機の飛行に伴う低周波音の値が閾値を越えても必ずしも影響が出るとは限らない。 |
オスプレイの低周波音について、安波集落では、心理的、生理的影響を及ぼす数値が示された。そうであれば、オスプレイは配備できないとの結論になるべきである。ところが、評価書は「飛行回数はわずか」「飛行する時間も短時間」などの理由をあげ、「低周波音の値が閾値を越えても必ずしも影響が出るとは限らない。」と結論づけている。これでは環境アセスの意味がない。正に移設ありきの環境評価書と言わなければならない。
そして、低周波音の低減について、次のように記載されている。
◆低周波音の環境保全措置 滑走路をV字型にして運用することから周辺地域上空を基本的に回避する方向で対応しており、低周波音による影響は相当程度低減できる。環境監視調査を実施し、環境保全措置の見直しが必要な場合は、専門家の指導・助言を得て、必要は措置を検討し、米軍に対してその実施を周知する。 |
「滑走路をV字型にし」「周辺地域上空を基本的に回避する方向で対応」するので影響は「相当程度低減できる」としているが、その運用は米軍任せである。先にも述べたように嘉手納・普天間両基地の運用実態を考えれば、記載内容がいかに不誠実で、曖昧なものになっているかが分かる。更に、「環境監視調査を実施」すると記載されているが、嘉手納・普天間両基地の運用に関し、基地周辺地方自治体や県議会が改善を求める意見書・決議を行ってもほとんど改善が図られなかった。正に糠に釘状態であることを考えれば、いかに信用のおけないものであるかが分かる。
その他にもサンゴやジュゴン、サンゴ礁などうの海洋生物に与える影響についても記載されているが、騒音に関する記載だけでも周辺地域住民に与える爆音被害は甚大なものになることが判る。しかも、爆音は昼夜はもちろん、深夜・未明にもおよぶ。このような基地を辺野古の海を埋め立てて建設するのか。
県外・国外移設の沖縄の民意が揺らぐことはない。