2月12日の宜野湾市長選挙は大方の予想を裏切って、900票の僅差で佐喜真氏が勝利した。予想では伊波氏が断然有利と思われていた。
沖縄防衛局前々局長の犯す発言による更迭、昨年末の環境影響評価書の夜襲搬入、そして真部局長による講話問題は、選挙の争点ともなっていた普天間飛行場移設問題とも相まって、有権者の投票行動に間違いなく影響を及ぼすと考えられた。特に、講話問題については、佐喜真陣営がすかさず沖縄防衛局に抗議するなど、同陣営の危機感が表れた。
開票後のどの時点で伊波氏当確の報道がなされるのか。誰もが、伊波氏の圧倒的勝利を予測していたのではないだろうか。ところが、結果は900票の僅差による佐喜真氏の勝利。有効投票数4万4324票のわずか2%の差である。
本日付け琉球新報の特集記事では、開票作業が進む中、伊波氏有利と見込んで同氏事務所に陣取っていた報道各社が、佐喜真氏有利の一報によ同氏事務所に一気に移動したと記載されている。
奇跡の大逆転劇とも称される今回の選挙の様相を示すのが、報道各紙に掲載された当選確実の瞬間の佐喜真陣営の写真である。テレビの画面を指差し、手を叩く支持者の真ん中でじっと画面に見入る佐喜真氏。口を真一文字に結び喜びを噛みしめているのか、当確の事実が信じられないのか、その真意をうかがい知ることはできないが、支持者の歓喜の表情が選挙戦の厳しさを物語っている。
この結果について、沖縄タイムス紙の特集記事は次にように分析する(2.14付同紙特集記事より抜粋)。
選挙戦最終日の11日夕。佐喜真陣営の打ち上げ式に集まった支持者 持者は、伊波洋一陣営の3分の1ほど・・。・・動員の少なさに、市街から駆け付けた自民党県議は「期日前投票の集計も正確にできていない。戦略がない。」と目はうつろだった。 |
そんな状況に変化をもたらし、佐喜真氏勝利へと導いた原動力について、同紙は次のように分析している。
長年の保守分裂を克服した16人の市議団は遊説や地域回り、ビラ配布、電話作戦などに奔走。期日前投票で攻勢をかけた。 地元経済界もまとまった。・・今回初めて事務所を選対本部と別に設置。零細規模に至るまで呼び掛けの徹底を目指した。 若年や無党派層の票の掘り起こしも奏功した。・・あえて佐喜真氏の名前を伏せて「まずは投票に行こう」「あなたの1票で地域をよくしよう」と呼び掛ける運動を展開。公園や模合など・・で支持の輪を広げた。 メンバーの一人は「『また選挙か』ではなく、『面白くて楽しい選挙』というイメージに誘導した。結果的に佐喜真票につながった」と振り返る。 ・・「『チェンジだ』という雰囲気を市内に広げることができた」と無党派層の取り込みに成功したと自負する。 ある選対幹部は・・「最後まで司令塔は不在だったが、総力結集できた」と胸をなで下ろした。 |
選対幹部の指摘する司令塔不在の状況下では、通常、まともな闘いは維持できない。ところが今回は、選対組織が機能しきれなかった状況の中で各組織が独自に動いたという。これが逆に市民総ぐるみ的な選挙につながったのではないか。危機感を抱いた地元経済界が事務所を選対本部と別に設置した事実は正にこのことを示している。
結果として市民参加型の選挙戦に持ち込んだのが勝因なのかもしれない。
ともあれ、結果は選挙民の意思である。
佐喜真新市長には、選挙公約の実現に向けた市政運営を行ってもらいたい。