小沢一郎氏に対する政治資金規正法違反強制起訴事件。26日、東京地裁は無罪判決を言い渡した。
第2回公判期日では、石川議員が受けた東京地検特捜部の任意聴取の様子の録音DVDが法廷で再生された。同議員と検事のやりとりは小沢氏の起訴・不起訴に影響するところまで話が及び、さながら司法取引のようなやりとりが明らかになった。更には、石川議員の再逮捕の可能性についても話が及び、威迫と利益誘導によって小沢一郎氏の関与を認める供述調書が作成されたことが明らかとなった。同供述調書は証拠採用されなかった。
報道された判決要旨によれば、秘書らの虚偽及び不実記載については認め、さらに小沢氏と秘書ら関係において、虚偽及び不実記載の共謀があったことについて、「指定弁護士が主張していることに、相応の根拠があると考えられなくはない」としながらも、十分な立証がされたと認めることはできず、合理的な疑いが残るといて無罪を言い渡した。
今判決で気になるのは琉球新報版判決要旨の次の部分である。
検察官が公判で証人となる可能性が高い重要な人物に、任意性に疑いのある方法で取り調べて供述調書を作り、取り調べについて事実に反する内容の捜査報告書を作成、検察審査会に送付することはあってはならない。 |
つまり、今回の検察審査会の判断にあたっては威迫と利益誘導によって作成された供述調書と事実に反する内容の捜査報告書が検察審査会に提出され、それによって小沢氏起訴の判断がくだされた。しかも二度に渡ってである。本来であれば、違法な捜査資料に基づく判断であれば、その判断、強制起訴そのものが違法であり、公訴棄却されるべきであるが、裁判所は次のように判断した。
しかし、証拠の内容に瑕疵かしがあることと、手続きの瑕疵は別の問題だ。検察官が任意性に疑いのある供述調書や、事実に反する内容の捜査報告書を作り、検察審査会に送ったとしても、審査手続きに違法があるとはいえない。 審査会の会議は非公開で、適正な運用には秘密の確保が不可欠。審査員の意見形成過程や捜査報告書の送付と本件起訴議決との因果関係を、本訴訟で審理、判断の対象とすることは相当でない。訴訟手続きで証拠能力や信用性を否定することで被告を救済すべきだ。 |
つまり、市民参加の検察審査会制度は秘密の保持が不可欠であり、起訴議決の相当性を判断するのは妥当ではない、とした。しかし、裁判所の任務が罪に問われるべきでない個人の救済にあるとすれば、あまりに検察審査会制度を守る姿勢に終始した判断ではないか。
検察の違法捜査により起訴された村木さんの事件とも合わせて考えると、裁判所は毅然と公訴棄却すべきだった、と考えるのだが。