6月9日付琉球新報に掲載された佐藤優氏のウチナー評論「森本防衛相をどう見るか〜官僚依存を強める可能性〜」は、今後の普天間問題、ひいては沖縄の基地負担軽減策を考えるうえで、極めて興味深い。
6月4日に発足した野田改造内閣で防相に抜擢された森本氏については、もともと自民党寄りの人物であり、同氏の自民党をも巻き込んだ政治力によって辺野古移設が進められるのではないかとの観測がある。しかし、佐藤氏は「その可能性はない」と否定する。そして、野田政権の普天間問題への認識について次のように述べている。
野田佳彦政権は、表現は慎重であるが、辺野古移設は、沖縄の反発が強く政治的には無理であると認識している。それだから、辺野古以外の落としどころを考えている。 |
この指摘は、昨日9日、森本防相のテレビ番組での辺野古変更示唆発言につながる。本日(10日)付琉球新報(クリックで同記事へ)によれば、「・・森本防衛相は、普天間飛行場の移設について『日米間でいろんな案を模索して、最後に今の案になった』」と強調、米側は合意内容の実現を期待しているとした。その上で「アメリカは大統領選挙のたびに政権が代わり、いろいろな政策の見直しが行われる。今のポジションが永久に同じポジションか、アメリカの政治は必ずしもそうならないので、見極めながら考えていかなければならない」と指摘。11月に行われる米大統領選挙の結果によっては、日米間の合意が見直される可能性について含みを持たせた。」とされる。
それでは、辺野古断念後、日本政府はどうするのか。この点について、佐藤氏は次のように指摘する。
筆者が見るところ、現下、外務官僚は、「野田政権に辺野古移設を撤回する政治力はあるが、普天間固定化を阻止するほどの力はない。従って、状況を放置すれば、辺野古は自然死し、普天間固定化により米国を満足させることができる」と考えている。沖縄に対する構造的差別構造を脱構築しようという発想は、小指の先程もない。 |
辺野古断念に追い込んだとしても、その先には普天間固定化の問題がある。この点について、同氏は「沖縄が団結し、辺野古移設、普天間固定化を断固拒否するという姿勢」を取り続けることが必要だと指摘する。
動かないと言われていた山が動き出しているのは事実だ。しかし、その山をあらたな方向に動かすには、さらに沖縄の努力が必要だ。決して妥協することなく、沖繩の民意を主張し続けることが必要だ。