第三次嘉手納基地爆音差止訴訟の第3回口頭弁論で被告国は次のように主張した。
移転補償などを利用するか否かは、住民の自由な意思に委ねられ、これを利用せずに住み続けるのは、爆音被害等の影響があってもそこに住む利便を選択しているからであり、自ら住み続ける住民は爆音被害等を自ら甘受すべきである、と。
この「爆音甘受」主張は原告団のみならず、基地周辺自治体からも批判を浴びている。當山宏嘉手納町長は「裁判所から指摘された自らの責任を果たさず、これまで67年間にわたり広大な基地負担を強いられ、航空機の騒音被害に苦しめられてきた町民に、その被害の責任があると言わんばかりの問題ある主張である」と厳しく指摘した。
被告国の主張する爆音対策については、第1次嘉手納爆音訴訟では「防音工事及び移転補償等については便益を受けた原告らの被害軽減等の範囲で考慮すれば足りる」とし、第2次同訴訟でも「住宅防音工事を行った場合被害が一定程度軽減されるが、高温多湿の沖縄では窓を開け放して生活する人が多く、防音工事は必ずしも効果を上げていない」と判断している。
平成22年7月に言い渡された普天間爆音訴訟控訴審判決では国の爆音対策について、「国は近接する嘉手納基地で騒音被害が違法な水準に達しているとの司法判断が3度も示されているのに、抜本的な対策を講じていない上、自ら定めた環境基準も達成していない」と厳しく指摘した。この判決は、このまま爆音被害等が放置されつづければ、差止認容判決が出る可能性があることを示唆したものとも言え、国の無作為を糾弾する画期的判決となった。
以上の判決が指摘するように国の爆音対策は極めて不十分で、爆音被害は逆に増加しているのが実態だ。第3次嘉手納基地爆音差止訴訟の原告総数が2万2千余に及んでいるのも、一向に改善されない爆音被害等への、住民の不満が一気に噴き出したものだ。
これらの批判を受けて、被告国は7月19日の第4回口頭弁論において、「爆音甘受」主張は移転補償等の施策が受忍限度の判断にあたって十分に考慮されるべきであるとの趣旨であると説明したが、原告はこれを拒否し、撤回を迫った。裁判所も表現と説明に齟齬があるとして、表現の訂正等を求めた。
以上の状況からすれば、被告国は直ちに「爆音甘受」主張を撤回すべきである。
本来なら、今日10月18日の第5回口頭弁論では被告国の検討結果が示される予定だったが、台風接近のため期日は延期された。次回期日は未定である。