野田首相の突然の解散宣言により、12.16総選挙が決まった。「最低でも県外」発言で沖縄の基地問題を告発した鳩山元首相は、早々に引退を宣言した。
今月発刊された「文藝春秋2013年論点100」“普天間問題 すべての批判に答えよう”には鳩山氏の現在の心境が綴られているが、この時点では引退などなかったように思う。
鳩山氏は「最低でも県外」発言について、「至極当然の帰結」として、今でもこの発言は正しかったとしている。そして、「私がお詫びしなければならないのは、「最低でも県外」を掲げたことそれ自体ではなく、それを実現する道筋をつけるに至らなかったことに対してである」としている。そして、長年にわたり基地に苦しんできた沖縄に対して「基地の返還と過重な負担軽減に対する希望の光を、政治家は強めこそすれ、摘んでしまってどうするのだ、わずかでも可能性があれば、そこに向かって最大限の努力をするのが政治の役割ではないか」と指摘している。
そして、日米同盟の重要性を認めながらも、「一国の領土に他国の軍隊が未来永劫居続けることによって国の平和が保たれると考えることは歴史的に自然なことではない」と指摘し、日本が自らの手で平和と安全を得なければならず、「その道筋の中で・・沖縄の米軍基地問題の真の解決を図っていきたい」としている。
そして、度重なる米兵による婦女暴行等の蛮行について、「謝罪して済む問題ではない」と指摘し、「沖縄県の抱える過重な負担と危険除去について、日米政府関係者、政治家はもちろん、全ての国民が考え、行動しなければならないのではないか」と結んでいる。
12月の総選挙を前に、鳩山氏のように沖縄の基地問題について真剣に捉えている党がどれほどあるだろうか。自民党、民主党、第3極といわれる日本維新の会も、普天間基地の危険性除去のためには辺野古新基地建設以外にはないとしている。
しかし、沖縄の民意は、これまで普天間基地の危険性除去のための辺野古新基地はあり得ないとしてきたし、オスプレイの強行配備や米軍機による爆音被害の増大、度重なる米兵による事件・事故により、すべての米軍基地撤去しか沖縄の基地問題解決の途はない、と決意している。
鳩山元首相の引退は極めて残念だ。
今回の総選では鳩山氏の遺言を受け継ぐ候補者が多数当選することを願っている。