11月22日、沖縄防衛局から普天間飛行場におけるヘリ(回転翼機)の飛行経路の調査結果が公表された。
期間は平成23年4月から平成24年3月まで。したがって、強行配備されたオスプレイ以前のデータということになる。
この調査は平成19年8月「普天間飛行場に係る場周経路の再検討および異なる可能な安全対策についての検討に関する報告書」に記載されている飛行経路が守られていないとの指摘が、付近住民からあったことから実施された。つまり、約束通りの飛行経路が守られず住民からの苦情が絶えないことから実施されたのだ。
約束された飛行経路が示された報告書(飛行経路概略図)は普天間飛行場における回転翼機の飛行状況調査結果について(24.11.22沖縄防衛局).pdf(クリックで同資料へ)末尾に添付されている。
それによれば、ヘリの飛行経路は人口密集地を避けて離発着し、場周経路についても普天間飛行場上空で実施するとなっていいる。
しかし、資料を見れば、実際の飛行経路は、約束された飛行経路を逸脱し完全に無視されている状況が分かる。
ところが、沖縄防衛局は問題なしと評価している。その内容は次のとおりだ(詳細は前記資料の冒頭)。
①場周経路(基地上空の旋回)については、「今回の調査結果からは、昨年度公表したものと比較した場合、北側の場周経路の長い方の径については狭まり、ほぼ場周経路内にとどまっているのが見られ、報告書に記載のものにより近づいている。」としている。
つまり、昨年度公表のデータに比較すれば良くなっていると評価できるとしている。
②進入・出発経路(離発着)については、「大部分が位置通報点であるキロ・ポイント(中城村久場崎付近)又はタンゴ・ポイント(中城村津覇付近)を通過している。また、キロ・ポイントを通過した航跡とタンゴ・ポイントを通過した航跡の割合は、それぞれ約61%と約39%であり、市街地上空の通過が比較的短いキロ・ポイント通過経路が昨年度よりやや多く用いられている。(昨年度はそれぞれ約57%と約43%)しかしながら、位置通報点を通過していない飛行や人口高密集度区域の直上の飛行が一部に見られる。
つまり、通過ポイントを通過することについては良くなっていると。しかし、人口密集地の飛行が一部みられるとして、約束違反の飛行実態を認めている。
約束違反の実態についての総合評価は「全般的には報告書に記載されている飛行経路のパターンが見られ、昨年度より報告書に記載されている飛行経路に近づいている点も見受けられる。一方、引き続き、報告書に記載の飛行経路と差異がある航跡も見受けられるが、場周経路等の航跡は、風向・風速などの気象条件等のため、個々の飛行ごとに差異が生じることを踏まえれば、今回の調査結果は、米軍が報告書を守っていないということを示すものではないと考えられる」としている。
つまり、約束された飛行経路のパターンで飛行しているが、約束違反の飛行も見られる。しかしそれは「風向・風速などの気象条件等のため、個々の飛行ごとに差異が生じることを踏まえれば」 取るに足らない違反だ、としている。
沖縄防衛局の結論は住民被害を無視したものとしか言えない。現状の基地被害を訴えている住民に対して、昨年よりは良くなっているとか、気象条件などの影響でそうなったと説明されても、それで解決する問題ではない。言葉の遊びとしか思えない。
さらに、米軍への対応については「米軍からは、当該措置を引き続き厳格に厳守するべくコミットメントしていく旨の回答を得た。」としている。遵守されていない、という住民からの訴えを前に「引き続き厳格に」と言われても意味不明である。穿った見方をすれば、「引続き」という意味は「これまでどおり」訓練を実施していくということになる。何らの対策も取らないという趣旨にしか受け取れない。
ここでも日米両政府の沖縄に対する差別が丸出しだ。
この差別をあらためさせるためには、沖縄は、沖縄の声を挙げ続けなければならない。