昔、琉球の北のはずれに村があった。村人は田畑を耕し、漁をして活(い)きていた。けして裕福とは言えなかったがその暮らしぶりは仕合せそうだった。
ある日、その村にそれまで見たことの無い鳥が舞い降りた。ミサゴである。
この鳥、主に海岸線に生息する。水面をゆっくりと低空飛行し獲物を探す。春・秋の渡りの季節には東北あたりでも観察されることがあるという。食性は肉食。獲物を見つけると素早く翼を羽ばたかせて空中に静止する。その後に獲物めがけて急降下し、水面近くで脚を伸ばし両足で獲物を捕らえる。名前の由来は様々な説がある。「水を探る(みずをさぐる)」が転じたとする説や、獲物を捕らえる時の水音が由来とする説等がある。
村に舞い降り、海岸線の松木立のてっぺんにいるミサゴが「ぴよぴよ」と鳴いている。その声は優しい。優しい声に魅かれて村人が振り向くと、その口から光るものがこぼれ落ちてくる。村人が近づいてみると、それは金(きん)だった。おどろいた村人は、喜んで拾い集めた。
やがて「ぴよぴよ」の鳴き声は大きく村中に鳴り響いた。多くの村人が集まり、競って金を拾い集めた。
貧しかった村はしだいに豊かになっていった。
田畑を耕し、漁を生業としていた村人たちは、拾った金が無くなるとミサゴの下に出向き金を拾うようになった。
やがて、ミサゴの口からこぼれ落ちるものは金から銀に代わった。それでも村の豊かなにぎわいは変わらなかった。やがて、銀は銅になり、銅はやがて鉄になった。