米ジュゴン訴訟、一審は、訴えは政治的問題を提起するものであり原告には訴えの利益がないとして却下したが、連邦高裁は「原告には差し止め救済を求める当事者適格があり、訴えは政治的問題を提起するものでない」として、一審判決を破棄し、審理のやり直しを命じた。つまり、1審裁判所は審理を尽くしていないので、あらためて審理を尽くせと命じたのである。
判決は「政府は普天間飛行場代替施設計画(FRF)の着手にこぎ着けるまで20年以上をかけ調査や分析、交渉を尽くしたと強調するが、米国家歴史保存法(米文化財保護法=NHPA)に基づく手続きを踏まえなかった。NHPA402条を読み解くと、同法には軍隊による基地建設や計画を妨げる性質はない。ただ、計画を進める際には議会が義務付ける特定の手続きを踏まなければならないことが指示されている。」と指摘、つまり手続き違反があったとの指摘である。
米国が上訴する可能性もあり今後の行方は不透明だ。しかし、一つ言えることは、米国司法が単に日米安保条約等の政治的判断ではなく、米国家歴史保存法(米文化財保護法=NHPA)の趣旨に照らし判断を下している点だ。1審での審理再開、そしてジュゴンを保護せよ(工事を止めよ)との判断が下されることを期待したい。
米ジュゴン訴訟 米サンフランシスコ第9巡回区控訴裁判所(連邦高裁)判決要旨は以下の通り。(8月24日付琉球新報より転載) 沖縄県内での新基地建設を巡り、環境団体や個人が米国防総省を相手取り起こした訴訟について、第9巡回区控訴裁判所は原告の主張の一部を認め、一部を棄却し、さらに審理を尽くすべきとの判断から、訴訟を一審に差し戻した。 原告は国の天然記念物で絶滅の危機にひんするジュゴンは米国家歴史保存法(米文化財保護法=NHPA)に基づき保護されるべきで、種への影響が懸念される米軍の新基地建設は差し止めるべきだと訴えている。 米国政府がNHPAに基づく評価や情報収集、利害関係者などとの協議によってNHPA上の義務から免除されるのか、そうでなければ行政手続き上の要件を満たしているのかどうか、原告は確認の訴えを提起する権利を有すると(控訴裁は)判断した。 また、原告には差し止め救済を求める当事者適格があり、訴えは政治的問題を提起するものでないと(控訴裁は)結論付けた。 米政府は普天間飛行場代替施設計画(FRF)の着手にこぎ着けるまで20年以上をかけ調査や分析、交渉を尽くしたと強調するが、NHPAに基づく手続きを踏まえなかった。NHPA402条を読み解くと、同法には軍隊による基地建設や計画を妨げる性質はない。ただ、計画を進める際には議会が義務付ける特定の手続きを踏まなければならないことが指示されている。 同訴訟に関する一連の議論は収束していない。米政府は、日本政府が「環境分析を終え最終的な計画を策定した上で、FRF計画に着手している」と主張しているが、FRF計画は一時停止や再開、計画変更を繰り返しているのが現状だ。米政府の今後の計画は予測不可能で、早急な決めつけはできない。 われわれ(控訴裁)は原告が行政手続法3条に基づき原告適格を有すると判断し、救済要求を却下した連邦地裁の判断を覆す。よってさらに議論を尽くすために訴えを地裁に差し戻す。 |