2017年2月23日に判決が言い渡された第三次嘉手納基地爆音差止訴訟一審判決。「静かな夜を返せ」の原告住民の願いは、またしても第三者行為論により棄却された。
裁判における、被告国の第三者行為論の主張は、主権亡き幻想的主権国日本の姿を露呈する。
原告住民の夜間飛行差し止め請求に対して、日本政府は、安保条約や他の法令には、日本政府に米軍の活動を制限する権限を与える特段の定めはない。したがって、嘉手納飛行場における米軍の活動を制限することはできず、その行為を差し止める権限が一切認められれない。さらに、原告住民が一般の賃貸借関係をあてはめ、貸主たる日本政府は、借主である米軍に対して爆音被害の防止を求めるべきであるとの主張には、日米地位協定2条3により米軍は基地が不要になったときは、米国はいつでも基地を返還することになっており、米国から返還の申し出がない限り、基地の返還を求めることはできず、基地を提供し続けなければならない。したがって、米軍に用法違反があってとしてもに返還を求めることはできない。
つまり、米軍には、どんなことがあっても、ものを言えない、ということだ。仮に、米軍が基地内に米国企業を誘致し事業を営んだとしても、日本政府は黙ってこれを見ているしかないのでる。これは被告国、日本政府の主張である。
正に、主権亡き幻想的主権国日本である。
さらに言えば、主権亡き幻想的主権国日本と米国関係の犠牲を強いられているのが沖縄だ。
日本全土の0.6%の面積の沖縄県に、74.48%の米軍専用施設が存する。沖縄県以外の都道府県の米軍専用施設の負担割合は、最も大きい青森県が全体の7.8%。沖縄県以外で10%以上を負担する都道府県はない。
さらに、沖縄県面積に占める米軍専用施設の割合は9.9%。沖縄県土の約1割が米軍専用施設だ。沖縄県以外の都道府県面積に占める米軍専用施設の割合は、最も大きい青森県が0.24%。沖縄以外で1%を超える都道府県はない。
このままでは、沖縄は、日本政府に殺されてしまう。
沖縄は、沖縄の民意を掲げ、声を挙げ続けるとともに、自力救済の途を模索しなければならない。
第三者行為論(被告国)の主張 ・・・航空機騒音を発生させているのは合衆国軍隊の航空機であるから、結局、原告らの請求は、本件飛行場における合衆国軍隊の航空機の離発着等の差止め求めるものである。 この点、差止請求の相手方には、現に妨害を生じさせている事実をその支配内に収めていることが必要であるが、被告は、本件飛行場における合衆国軍隊の航空機の航空等を規制し、その活動を制限し得ないことから、仮に権利又は利益の侵害行為があったとしても、その侵害行為を支配内に収めているとはいえない。 すなわち、本件飛行場は、日米安保条約第6条及び日米地位協定2条1(a)に基づき、合衆国軍隊が使用を許された施設及び区域であり、その管理運営の権限は、日米地位協定3条1によって全て合衆国軍隊に委ねられている。・・・合衆国軍隊は、本件飛行場において、その判断と責任に基づいて自由に航空機の離着陸等を行う権限を有する。このような本件飛行場に係る被告と合衆国軍隊の法律関係は、条約に基づくものであるところ、条約は当事国を拘束し、誠実に順守されなければならないとされているから、被告は、条約又はこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、本件飛行場における合衆国軍隊の活動を制限し得ない。そして、本件において、関係条約及び国内法令に被告に合衆国軍隊の活動を制限する権限を与える特段の定めはないから、被告が本件飛行場における合衆国軍隊の活動を制限することはできず、被告にはその行為を差し止める権限が一切認められれないことは明らかである。 イ 賃貸借論の主張に対する反論 ・・・日米地位協定2条3は、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、い つでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目 的としてたえず検討することに同意する。」と規定しており、日米安全保障条約及び日米地位協定によってその使用が許された施設及び区域の返還に当たっては、当該施設及び区域の必要性をアメリカ合衆国が判断することとしている。したがって、被告は、合衆国軍隊に使用を許した本件飛行場について、日米地位協定2条3に基づきアメリカ合衆国から返還されない以上、同国に対し、引き続きその使用を継続して許す条約上の義務を負っている。そのため、本件飛行場用地の管理運営の権限は全て合衆国軍隊に委ねられているから、合衆国軍隊の用法違反等を理由に返還を求めることもできず、この点において、賃貸人が賃借人による契約上の用法違反を理由に債務不履行に基づいて賃貸借契約を解除することができることとは根本的に異なる。 |