2017年2月23日に判決が言い渡された第三次嘉手納基地爆音差止訴訟一審判決。那覇地方沖縄支部(藤倉徹也裁判長)は「静かな夜を返せ」の原告住民の願いを、第三者行為論により棄却した。
1982年2月に第1次嘉手納基地爆音訴訟が提訴されてから実に35年が経過しているのにもかかわらず、嘉手納基地周辺住民の爆音禍は解消されるどころか悪化し続けている。
裁判所の判断は次のような内容だ。
日米安保条約や日米地位協定の規定からすると、嘉手納飛行場の管理や運営の権限は、すべてアメリカ合衆国に任されているから、日本政府は、嘉手納飛行場での米軍機の運航や管理を規制し、制限することはできない。だから、日本政府に米軍という第三者の行為を制限することはできない。いわゆる第三者公論である。
ところが、一方で、裁判所は、日本政府の爆音被害への無策ぶりを痛烈に非難する。
嘉手納本件飛行場の米軍の活動は,その周辺住民という一部少数者に各種の軽視することのできない被害を及ぼしている一方、国民全体が利益を受けている。原告らを含む一部少数者に特別の犠牲が強いられており、これは看過することのできない不公平だ。
住宅防音工事による爆音被害軽減効果には様々な限界がある。爆音被害が改善されたとは言えない。
日本政府は、米国との間で航空機騒音規制措置(騒音防止協定)を締結しているというが、それが十分に履行されているとは言えず、その規制措置の少なからぬ部分が十分に履行されておらず、日本政府が、米国に航空機騒音規制措置の約束を守るように措置を具体的に努力した事実は認めれない。その他対策についても、一定の早期離陸が制限されるなどの効果を上げたものが見られるものの, 原告住民らの騒音曝露状況は改善していない。
昭和4 0年代半ばには既に本件飛行場周辺で航空機騒音による影響が社会的に問題となっていたにもかかわらず,今日に至るまで, 米国又は日本政府によって抜本的な被害防止策が採られずに,原告らを含む本件飛行場の周辺住民が航空機騒音による被害にさらされいる。
第一次嘉手納基地爆音訴訟で、爆音によって原告周辺住民らに受忍限度を超える違法な被害が生じていることを認定し,被告に損害賠償を命じた判決が確定した平成1 0年からは既に1 8年以上,第二次嘉手納基地爆音訴訟の同様の判決が確定した平成2 3年1月からは既に4年以上が経過しているものの,米国又は日本政府に被害防止対策に特段の変化は見られないことからすれば,周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむを得ない。
日本政府が、30年以上も爆音被害を、延々と放置し続けてきたとの非難、日本政府の何らかの対策を取れとの指摘だ。
ところでこの判決、極めて妙だ。
裁判所は、米軍基地について、第三者行為論では管理や運営の権限はすべてアメリカ合衆国に任されているから、日本政府は嘉手納飛行場での米軍機の運航や管理を規制し制限することはできない、とした。そのような米軍の行為についてまったく権限を持たない、主権を持たない、行使しえない日本政府に対して、いったい何をしろと言っているのか。という疑問である。
日本政府が何も対策を取らないから、原告住民らは裁判所に救済を求めているのだ。
第三次嘉手納基地爆音差止訴訟は原告被告双方が控訴し、11月7日に第1回口頭弁論が開かれた。
静かな夜を取り戻すため、原告住民らは声を挙げつづける!!!
