8月31日、沖縄県は、2013年12月27日に仲井真前知事が発した辺野古埋立承認を取り消した。これにより、沖縄防衛局は辺野古埋立工事を進める法的根拠を失い工事が止まった。
これに対して、10月17日、沖縄防衛局長は国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づく審査請求及び執行停止の申立てを行った。
この審査請求等については
①行政不服審査法が国民保護を目的として制定された法律であること、
②審査庁(国交大臣)と申立人(防衛大臣)が内閣の一員であり公平公正な判断が期待できない、との理由から違法であると指摘されている。
この状況は2015年5月の翁長前知事の埋立承認取り消しに対する同様の審査請求等が申し立てられてときと同じだ。その後は複数の訴訟が提起され結果として、翁長知事が埋立承認を取り消したため工事が再開された。ところで、この行政不服審査法に基づく審査請求及び執行停止の申立ての違法性についての判断はどうなったのか。
これについては、代執行訴訟において和解が成立し、結果として、国の審査請求等については裁判所は判断しなかった経緯がある。
その際の福岡高裁那覇支部の和解勧告には次のような記述がある。
「今後も裁判で争うとすると、仮に本件訴訟で国が勝ったとしても、さらに今後、埋立承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要になったりすることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性があり、それらでも勝ち続ける保証はない。むしろ、後者については、知事の広範な裁量が認められ敗訴するリスクは高い。仮に国が勝ち続けるにしても、工事が相当程度遅延するであろう。」
和解勧告が指摘する「埋立承認の撤回」が、県が発した承認撤回でり、これについて福岡高裁那覇支部は国が勝ち続ける保障はないと指摘した。
県知事選挙、豊見城市長選挙、そして那覇市長選挙で選挙で示された「辺野古新基地反対」の民意を見れば辺野古に基地は造れない、というべきだ。さらに、年内にも実施される辺野古の是非を問う県民投票によって、あらためて民意が示されれば、辺野古新基地反対の民意は動かし難いものとなる。
デニー知事は、このような民意の後押しを受けて知事に就任した。
デニー知事は、自らの背後には県民の支持があることに自信を持ち、国に対して毅然とした態度で臨んでもらいたい。安易な和解など禁物だ。もちろん、米国政府に対しても同様である。
デニー知事の奮闘に期待する。