仲井間元知事の埋立承認=固有の資格を有する沖縄防衛局長に対する処分 ↓ 埋立承認の撤回=固有の資格を有する沖縄防衛局長に対する処分 ↓ 今回の審査請求=固有の資格を有する沖縄防衛局長の審査請求は許されない |
沖縄県が、8月31日に発した辺野古公有水面埋立承認取消処分について、10月17日、沖縄防衛局長は国土交通大臣に対し、行政不服審査法(以下「行審法」)に基づく審査請求及び執行停止の申立てを行ったが、10月30日、石井国交相の埋立承認撤回の効力停止を認容した。
同相は、沖縄防衛局長の申立てを有効と判断したが、その判断には、以下のとおり誤りがある。
①行審法1条はその目的について「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする」と規定している。同法は行政機関による申立ては前提としていない。本条の規定からそれは明白である。
②ところで、行審法7条2項は①を前提として行政機関が「固有の資格」おける処分等については同法の適用を否定している。それゆえ、その反対解釈から「固有の資格」に該当しないものについては、申し立てが認められることになる。
「固有の資格」について、総務省見解によれば「一般国民と同様な立場で行動している」場合はそれにはあたらないとされている。つまり、一般国民と同様な立場であるか否かが「固有の資格」か否かを判断するうえでの分岐点となる。
具体的には、地方公共団体がコミュニティーバスを運行させる場合のバス営業許可や市直営のレストラン等の飲食店営業を行う場合の営業許可等が考えられる。これらの場合は一般国民と同様の立場で行動している場合に該当すると考えられ、処分に不服のある場合は地方公共団体等でも行審法に基づく審査請求が可能となる。
それでは、今回の公有水面埋立法(以下「埋立法」という)に基づく埋立事業についてはどうか。
埋立法では、一般国民が埋立事業を行う場合は許可が必要としているのに対して、国が行う場合は承認が必要としている。許可とは一般に禁止されている行為を認めること、承認とは一定の行為又は事実の存在を肯定することとされている。
埋立法が国民と国の間に手続きの差異を設けているのは、正に、国に対して特定の資格を与えていることに他ならない。したがって、仲井真元知事による沖縄防衛局長に対する埋立承認は、一般国民と同様の立ち場ではない「固有の資格」に基づく処分であるということができる。
それでは8月31日に、県が発した辺野古公有水面埋立承認取消処分についてどうか。「固有の資格」に基づく埋立承認の取消し処分であるから、取消し処分の相手方たる沖縄防衛局長は、行審法7条2項にいう「固有の資格において当該処分の相手方となるもの」というべきである。
したがって、10月17日、沖縄防衛局長の国土交通大臣に対する行審法に基づく審査請求及び執行停止の申立ては不適法であり、却下すべき事案だった。
井上国交相の埋立承認撤回の効力停止認容決定は違法なものと言わざるを得ない。