玉城デニー沖縄県知事を支持する世界のウチナーンチュによる声明 2018年10月31日、沖縄県の玉城デニー知事は、世界各地のウチナーンチュに協力を求める呼びかけをした。知事の要請は、沖縄の歴史においても危機的状況下でなされたものだったが、日本政府は翌日、沖縄が23年間も反対し続けている辺野古の新基地建設工事を再開した。 玉城知事の辺野古新基地建設反対は、沖縄県民の58.2%の民意を代弁したものであり、反米感情ではない。玉城知事の父親は沖縄に駐留していた米海兵隊員であり、知事の存在自体が米国と米軍基地に絡み合うものだ。県知事選で辺野古新基地反対を訴えた玉城知事の地滑り的勝利は、沖縄が直面している過酷な状況を映し出したものといえる。 日本の国土面積の約0.6%にすぎない沖縄に、米軍専用施設面積の約70%が存在し続けている。沖縄は、1945年の沖縄戦で荒廃していた当時は、米軍基地に依拠せざるをえなかったが、現在では沖縄の人々に経済的負担を招く要因となっている。実際に、沖縄からすべての米軍基地が撤退し、それに付随する政府補助金が撤廃されれば経済は改善するという調査結果もある。 長期に渡り、米軍基地の存在をめぐり政治的に分断され続け、時には家族をも引き裂かれてきたこれらの島々において、辺野古新基地建設計画に反対する圧倒的民意は重要な意味を持つ。 玉城デニー知事の前任者である保守派出身の翁長雄志前知事は、大切なのは「イデオロギーよりもアイデンティティー」と宣言することにより、こうした虚偽の境界線を取り払った。これまで米兵の父を持つ子供とウチナーンチュの母親たちが米軍基地との関係性において社会から否定的に捉えられてきた事実を踏まえると、玉城デニー氏が日本史上、初の「混血」の知事となった事実は、今後の流れを変えうる重要な分岐点といえるだろう。 玉城知事の多様な生い立ちは、多くのウチナーンチュ、そして「純血」の概念に抵抗する沖縄ディアスポラの人々に共感を広げている。日本の同化政策により、多くのウチナーンチュが政治的イデオロギーに縛られてきた。ウチナーンチュとしての立場性を主張する難しさを海外のウチナーンチュも感じている。玉城知事はこうした阻害要因を取り除きうる存在だ。 日本政府は、公有水面埋立法に基づく辺野古新基地建設の埋め立て工事において、沖縄との合意形成を怠り、情報開示や説明責任を果たさないまま、独断的な法解釈や一方的な解釈の変更により新基地建設工事を強行している。それは辺野古だけの問題ではなく、ヘリパッド建設がすでに行われている高江でも同様だ。 しかし状況はより複雑性を帯びている。だからこそ、今、世界各地のウチナーンチュ、特に米国に住むウチナーンチュが立ち上がり、声をあげるべき時なのだ。 玉城知事は、辺野古の新基地建設問題について、米国と日本、沖縄の三者による対話を呼びかけているにもかかわらず、米国は沖縄との対話を拒否し、「日本の国内問題」と片付けている。米国の多くの政治家が沖縄の米軍基地の問題を直視しないのは、日本が世界でも(韓国とドイツを合わせても)最大で熱心な米軍の財政支援国家だからだ。 玉城知事の世界各地のウチナーンチュへの呼びかけは、ウチナーンチュを「巨大な政府たち」の影に隠れた存在ではなく、「民意」として明確に認識せよ、という要求でもある。ウチナーンチュの声は、日本だけでなく、米国でも耳を傾けられるべきなのだ。それは私たち世界のウチナーンチュの要求でもある。玉城知事が訪米行動について世界各地のウチナーンチュに呼びかけた背景には、そうした目的もあるのだ。 「私たちはアメリカに行って、「実はこのようなおかしいことが行われているのだ」と伝えたい。「皆さんの国でもしこのようなことが起きたら、住民が反対と声を上げ続けているのを政府が無視し基地建設を強行するなんていうことが行われたとしたら、民主主義の原則に基づいてどう思うか」と問いたい。世界には沖縄系の皆さんがたくさんいる。そういうウチナーンチュのネットワークも使って訴えたい。そこには草の根の民意と民主主義が必要だ。」 玉城知事のディアスポラへの呼びかけは、国境を超えた沖縄のユイマールの伝統に由来するものである。1899年、日本政府による土地の地割に促された当山久三を先頭とするハワイ移民を皮切りに、ラテン・アメリカ、フィリピン、南洋諸島への移民、また、1920年に「ソテツ地獄」と知られた沖縄の砂糖産業の崩壊のさなかに海を渡り、米軍によって計画された戦後のボリビア移民まで、沖縄はディアスポラを通じた繋がりを維持しながら、故郷の家族に送金し、物資を送り援助した。移民は現在では沖縄の一部だ。若い世代は奨学金やスタディ・ツアーで県に歓迎され、喜び溢れる世界のウチナーンチュ大会は5年ごとに開かれている。沖縄県の人口140万人に対し、世界のウチナーンチュは42万人に達している。 米国および民主主義諸国の市民として、沖縄は米軍基地や日本の一県としての地位よりも、はるかに豊かな遺産を継承していることを忘れてはならない。成熟した政治や芸術、精神伝統でアジア太平洋の貿易の要石として発展してきたわれわれの歴史の源は、かつて独立国として繁栄した琉球王国に横たわっている。われわれは地球市民として、辺野古・大浦湾の新基地建設工事が絶滅危惧種ジュゴンとサンゴ礁の生息地に与える環境破壊の危険性を世界に喚起しなければならない。 私たちは、玉城知事と沖縄の人々への惜しみない支持を表明する。そして私たちが直面している危機的状況が、沖縄の平和と繁栄を取り戻す可能性も秘めていることを認識している。 世界のウチナーンチュへ:沖縄を守り、私たちの未来と次世代の未来のため、玉城知事と歩みをともにしようではないか。 |